65 / 75
アンデッドの国
拮抗戦
しおりを挟む
同等のパンチは空間を揺らし、同等のキックは大地を破壊する。
既に国があったとは思えない程にボロボロな人間の国。
その中心で戦うのは目を真っ赤にしたロングヘアーの黒髪女性であり憤怒の怪物であるゼラと黒い骨と死を司る王であるデッドロード。
身体能力は同等であり、技術で勝っていたのはゼラの筈だった。
しかし、怒りに溺れて本能のままに戦うゼラと比べるとデッドロードの方が技術が高かった。
吹き飛ばして飛ばされての攻防は城を粉砕する程に激化していた。
勝機は物理攻撃ではなく魔法攻撃になる。
しかし、ただの魔法ではなんの意味もない事を理解しているデッドロード。
そして魔力量が現在継続系で増加しているゼラ相手だとデッドロードの方が不利。
完全に有利性が逆転した。
「あああああああ!」
「お前の攻撃はもう見切った!」
ゼラの突き出しはそれだけで前方を破壊する。
それだけの衝撃波を一撃一撃に秘めている。
同程度の力を持つデッドロードもそれは同じ事。そして魔法の技術はデッドロードの方が上。
「死ねや! 死龍魔砲撃!」
拳に魔法で形成された黒い龍が宿る。
それはただの衝撃波とは比べ物にならない程の破壊力を秘めているだけではなく、即死効果もある。
デッドロードのスキルを手に入れているゼラでこそ問題ないが、ヒスイが即死攻撃を受けたらそのまま死ぬ。
そんなチート級の魔法やスキルをさらりと使うのがデッドロード。
しかし、今のゼラは普段のゼラとは一味も二味も違う。
「あああああああ!」
同じ魔法で真反対の性質を持つパンチを繰り出して激突させた。
それは互いに吹き飛ぶ程の衝撃を波紋上に広げ、魔力の激流を生み出す。
近くの瓦礫は即死属性に当てられて塵となって消えている。
これ以上の戦闘は本当にこの国そのものが無くなる程だろう。
この戦いが終わる事即ちどちらかの死、あるのみ。
互いに殺す為に戦っているのだからそれはなかなか終わらない。
互いにダメージが与えられていない状態での戦闘継続はこのまま行くと一ヶ月続いてデッドロードが負けるだろう。
(あの魔力がどんどん増えんのどうにかせんとな)
デッドロードが空を飛ぶとゼラは翼を広げてデッドロードに向かって飛ぶ。
魔法で飛行するデッドロードと翼を広げて飛ぶゼラとでは大きな違いが存在していた。
既にゼラの事を人間だと認識していないため、驚きはなかった。
しかし、だからそこゼラの種族が分からずに少しばかりの混乱はある。
「吹っ飛べや! ビックバン!」
複雑な魔法陣を複数個展開してそれを合成させる。
そして一つの魔法として形成し、それをゼラに向かって放つ。
宇宙空間のようなレーザーはゼラの動きを停止させ、ブレスの体勢にはいる。
「がああああああああ!」
相手と同じ魔法を組み合わせながら放ったブレスは同等の威力があり、深々とクレーターを作り出す。
そして弱った魔法の中を無理矢理バリアを周りに展開しながら飛んだゼラがデッドロードに肉薄した。
神聖魔法を宿した拳がデッドロードに襲い掛かる。
「うおおおお!」
それを結界魔法を使って直接攻撃は防ぐが、付近で地面を抉りながら滑る。
ゼラは咆哮をあげてデッドロードに接近する。
飛ぶだげで自然災害。動くだけで天災。正に神話の怪物の様な力。
デッドロードが立ち上がりながら右側を見た⋯⋯そのには驚愕したヒスイとリーシアがある。
デッドロードは笑った。
「お前、あいつを殺せ」
「いや⋯⋯」
今回は支配者としての力を使っての『強制命令』である。
リーシアが演技でヒスイを襲ったのは知っていた様子。
リーシアはガックリと力が抜けた様子をしてから骨の剣を作り出す。
そして向かって来るゼラに向かって強く踏み込んだ。
「リーシアちゃん!」
ヒスイは追い掛けようとするが悪魔がそれを止める。
「今のあなたでは意味ないですよ」
「それでも、助けるんだよ! 今のゼラさんにはその余裕がない! だけら私がやるんだ!」
悪魔の手を振り解きリーシアに向かって走り出した。
悪魔はデッドロードに目を向けて、ヒスイを追いかけた。
(まずは回復や。動きは見えたけど一撃が大きい。確実に弱点をついてきやがる)
デッドロードは体内の魔力を瘴気に変えて傷を癒しながら離れていた。
ゼラに向かって踏み込んだリーシアは骨の剣を深々と刺していた。
怒りに狂って尚、ゼラはリーシアを攻撃しようとしなかった。
抵抗もしないでただデッドロードを殺しに足を動かす。
それを止めるかのように何度も何度も剣を刺して貫通させた。
「あああああああ!」
リーシアの片目から血流が流れる。
それはまるで涙の様に、リーシアの感情を完結に表していた。
しかし、本人の意志とは関係なくただ無感情に攻撃を続ける。
誰か助けたと心の中で叫んでも、それは誰にも届かない。
「あああああああああああ!」
ボロボロとなっても、刺された箇所に炎が灯って体が再生して行く。
それでもリーシアはゼラを突き刺す。
ザクっと肉を貫く音がして、骨と骨の隙間を通って貫通する。
どっちにしても辛いその光景を止めるのは⋯⋯黒い肌に長い耳、そして角を生やした女性だった。
「デヴィルストーム!」
黒き風がリーシアを包み込んで吹き飛ばした。
既にその場所には障害物が無く、地面を転がるだけだった。
命令の従い再びゼラに襲い掛かる⋯⋯しかし、それは出来なかった。
リーシアの周囲に魔法陣が浮かび上がりそこから鎖が伸びて動きを拘束した。
「ゼラさん⋯⋯」
「あああああああ!」
開放されたゼラはデッドロードの魔力を感じる方に向かって走った。
飛ばないのは純粋に再生させながら動きているからだ。
リーシアが鎖を無理矢理破壊して動ことする。
その光景を深紅色の瞳をしているヒスイが悲しげに見る。
「再戦だね」
右手を空に掲げて大きな魔法陣を展開し、リーシアを含めて自分を囲む結界を作り出す。
「にしてもダークエルフみたいな見た目だなぁ」
『くふふ。ワタクシと一体化しているのです。そのような種族に例えられるのは流石に不愉快なんですけど』
「こっちも貴方が魂に宿っていると考えると不愉快よ。まぁ無難にデヴィルエルフって事で」
『ワタクシはデーモンなのでデーモンエルフですね』
「デヴィルエルフの方が言いやすい」
そんな会話をしていると、鎖を破壊したリーシアがゼラを追いかける。
だが、結界に阻まれてそれは出来なかった。
「リーシアちゃん。この結界は私を殺さないと解除されないよ」
その言葉を出すと同時に、リーシアはヒスイに攻撃を仕掛ける。
短剣を引き抜いてそれを塞ぐ。
本来のヒスイなら吹き飛ばされていただろうが、今は悪魔と融合しており、塞げた。
「ッ!」
「へへ。これなら堂々と戦えるよ!」
実際は憤怒の悪魔よりも少しだけ能力は下がっている。
これは悪魔なりの優しさでもあったりする。
ヒスイ本人が戦うべきと判断したから、あくまで手を貸しただけ。
「絶対に救うよ。私がね」
魔力で形成された短刀を左手に持ち、突き出すとリーシアは回避した。
「⋯⋯私は強く成りたい。ゼラさんに頼ってばかりは嫌だから。だからまずは、ゼラさんの恩人であり、さっき友達になった貴女を、私が助かる!」
「うぎゃあああああああああああああ!」
既に国があったとは思えない程にボロボロな人間の国。
その中心で戦うのは目を真っ赤にしたロングヘアーの黒髪女性であり憤怒の怪物であるゼラと黒い骨と死を司る王であるデッドロード。
身体能力は同等であり、技術で勝っていたのはゼラの筈だった。
しかし、怒りに溺れて本能のままに戦うゼラと比べるとデッドロードの方が技術が高かった。
吹き飛ばして飛ばされての攻防は城を粉砕する程に激化していた。
勝機は物理攻撃ではなく魔法攻撃になる。
しかし、ただの魔法ではなんの意味もない事を理解しているデッドロード。
そして魔力量が現在継続系で増加しているゼラ相手だとデッドロードの方が不利。
完全に有利性が逆転した。
「あああああああ!」
「お前の攻撃はもう見切った!」
ゼラの突き出しはそれだけで前方を破壊する。
それだけの衝撃波を一撃一撃に秘めている。
同程度の力を持つデッドロードもそれは同じ事。そして魔法の技術はデッドロードの方が上。
「死ねや! 死龍魔砲撃!」
拳に魔法で形成された黒い龍が宿る。
それはただの衝撃波とは比べ物にならない程の破壊力を秘めているだけではなく、即死効果もある。
デッドロードのスキルを手に入れているゼラでこそ問題ないが、ヒスイが即死攻撃を受けたらそのまま死ぬ。
そんなチート級の魔法やスキルをさらりと使うのがデッドロード。
しかし、今のゼラは普段のゼラとは一味も二味も違う。
「あああああああ!」
同じ魔法で真反対の性質を持つパンチを繰り出して激突させた。
それは互いに吹き飛ぶ程の衝撃を波紋上に広げ、魔力の激流を生み出す。
近くの瓦礫は即死属性に当てられて塵となって消えている。
これ以上の戦闘は本当にこの国そのものが無くなる程だろう。
この戦いが終わる事即ちどちらかの死、あるのみ。
互いに殺す為に戦っているのだからそれはなかなか終わらない。
互いにダメージが与えられていない状態での戦闘継続はこのまま行くと一ヶ月続いてデッドロードが負けるだろう。
(あの魔力がどんどん増えんのどうにかせんとな)
デッドロードが空を飛ぶとゼラは翼を広げてデッドロードに向かって飛ぶ。
魔法で飛行するデッドロードと翼を広げて飛ぶゼラとでは大きな違いが存在していた。
既にゼラの事を人間だと認識していないため、驚きはなかった。
しかし、だからそこゼラの種族が分からずに少しばかりの混乱はある。
「吹っ飛べや! ビックバン!」
複雑な魔法陣を複数個展開してそれを合成させる。
そして一つの魔法として形成し、それをゼラに向かって放つ。
宇宙空間のようなレーザーはゼラの動きを停止させ、ブレスの体勢にはいる。
「がああああああああ!」
相手と同じ魔法を組み合わせながら放ったブレスは同等の威力があり、深々とクレーターを作り出す。
そして弱った魔法の中を無理矢理バリアを周りに展開しながら飛んだゼラがデッドロードに肉薄した。
神聖魔法を宿した拳がデッドロードに襲い掛かる。
「うおおおお!」
それを結界魔法を使って直接攻撃は防ぐが、付近で地面を抉りながら滑る。
ゼラは咆哮をあげてデッドロードに接近する。
飛ぶだげで自然災害。動くだけで天災。正に神話の怪物の様な力。
デッドロードが立ち上がりながら右側を見た⋯⋯そのには驚愕したヒスイとリーシアがある。
デッドロードは笑った。
「お前、あいつを殺せ」
「いや⋯⋯」
今回は支配者としての力を使っての『強制命令』である。
リーシアが演技でヒスイを襲ったのは知っていた様子。
リーシアはガックリと力が抜けた様子をしてから骨の剣を作り出す。
そして向かって来るゼラに向かって強く踏み込んだ。
「リーシアちゃん!」
ヒスイは追い掛けようとするが悪魔がそれを止める。
「今のあなたでは意味ないですよ」
「それでも、助けるんだよ! 今のゼラさんにはその余裕がない! だけら私がやるんだ!」
悪魔の手を振り解きリーシアに向かって走り出した。
悪魔はデッドロードに目を向けて、ヒスイを追いかけた。
(まずは回復や。動きは見えたけど一撃が大きい。確実に弱点をついてきやがる)
デッドロードは体内の魔力を瘴気に変えて傷を癒しながら離れていた。
ゼラに向かって踏み込んだリーシアは骨の剣を深々と刺していた。
怒りに狂って尚、ゼラはリーシアを攻撃しようとしなかった。
抵抗もしないでただデッドロードを殺しに足を動かす。
それを止めるかのように何度も何度も剣を刺して貫通させた。
「あああああああ!」
リーシアの片目から血流が流れる。
それはまるで涙の様に、リーシアの感情を完結に表していた。
しかし、本人の意志とは関係なくただ無感情に攻撃を続ける。
誰か助けたと心の中で叫んでも、それは誰にも届かない。
「あああああああああああ!」
ボロボロとなっても、刺された箇所に炎が灯って体が再生して行く。
それでもリーシアはゼラを突き刺す。
ザクっと肉を貫く音がして、骨と骨の隙間を通って貫通する。
どっちにしても辛いその光景を止めるのは⋯⋯黒い肌に長い耳、そして角を生やした女性だった。
「デヴィルストーム!」
黒き風がリーシアを包み込んで吹き飛ばした。
既にその場所には障害物が無く、地面を転がるだけだった。
命令の従い再びゼラに襲い掛かる⋯⋯しかし、それは出来なかった。
リーシアの周囲に魔法陣が浮かび上がりそこから鎖が伸びて動きを拘束した。
「ゼラさん⋯⋯」
「あああああああ!」
開放されたゼラはデッドロードの魔力を感じる方に向かって走った。
飛ばないのは純粋に再生させながら動きているからだ。
リーシアが鎖を無理矢理破壊して動ことする。
その光景を深紅色の瞳をしているヒスイが悲しげに見る。
「再戦だね」
右手を空に掲げて大きな魔法陣を展開し、リーシアを含めて自分を囲む結界を作り出す。
「にしてもダークエルフみたいな見た目だなぁ」
『くふふ。ワタクシと一体化しているのです。そのような種族に例えられるのは流石に不愉快なんですけど』
「こっちも貴方が魂に宿っていると考えると不愉快よ。まぁ無難にデヴィルエルフって事で」
『ワタクシはデーモンなのでデーモンエルフですね』
「デヴィルエルフの方が言いやすい」
そんな会話をしていると、鎖を破壊したリーシアがゼラを追いかける。
だが、結界に阻まれてそれは出来なかった。
「リーシアちゃん。この結界は私を殺さないと解除されないよ」
その言葉を出すと同時に、リーシアはヒスイに攻撃を仕掛ける。
短剣を引き抜いてそれを塞ぐ。
本来のヒスイなら吹き飛ばされていただろうが、今は悪魔と融合しており、塞げた。
「ッ!」
「へへ。これなら堂々と戦えるよ!」
実際は憤怒の悪魔よりも少しだけ能力は下がっている。
これは悪魔なりの優しさでもあったりする。
ヒスイ本人が戦うべきと判断したから、あくまで手を貸しただけ。
「絶対に救うよ。私がね」
魔力で形成された短刀を左手に持ち、突き出すとリーシアは回避した。
「⋯⋯私は強く成りたい。ゼラさんに頼ってばかりは嫌だから。だからまずは、ゼラさんの恩人であり、さっき友達になった貴女を、私が助かる!」
「うぎゃあああああああああああああ!」
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
73
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる