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アンデッドの国
ネームドNPC
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私は全力のリーシアちゃんと向き合っていた。
あの骨と同じように漆黒の骨を使った武器。
当然鋭いし丈夫だろう。
「怒りに呑まれた⋯⋯いや、私と違う意味でゼラさんを受け入れた感じがするね」
ゼラさんに対しても私に対しても怒っている訳ではない。
誰に対して怒っているか分からないが、それを力に変えている事だけは分かる。
リーシアちゃんが軽く踏み込む⋯⋯軽いと言っても凄い衝撃波を感じるけど。
魔力も上昇しているようだった。
「だけどね、私も負けてないよ!」
私から銀色の魔力が迸る。
それは黒かった魔力武器を銀色へと変える。
骨の武器と二刀流の短剣が衝突して周囲を吹き飛ばす。
重い重力を感じながらも必死に抑え、相手を弾き返す。
溢れる魔力を自身の身体能力へと変えている。動体視力や思考速度も上昇している。
全力のリーシアちゃん相手でも戦えている!
ゼラさんに名前を与えて、最初の方は私よりも信用されていた。
昔はそれでもなんともなかった⋯⋯だけど、旅を続けていくうちにそれは嫉妬心へと変わっていた。
ゼラさんがずっと思っているリーシアとはどんな人なんだろうか、ずっと思ってずっと嫉妬していた。
でも、今ではそれはない。
なぜなら、既にゼラさんから得られる信頼はリーシアちゃんを超えているから。
それを自覚している。
関わる人との時間で人は変わるように、ゼラさんも変わるのだ。
私とゼラさんの間に出来た絆は本物だと思っていた。⋯⋯確かに、本当ならもっと先に進みたいけど。
「仲間の大切は、仲間であり主である私が救う。ゼラさん、力を貸して」
「うっ!」
リーシアちゃんの攻撃をギリギリで塞ぎながら魔力を練り合わせる。
詠唱なんてしている暇はない。だけどイメージでのこの魔法はとても難しい。
でも、やるしかないんだ。今リーシアちゃんを止められるのはこの私だ。
だからやれ。
本来出来る形の魔法を想像して分解する。
その一つ一つがどのような仕組みなのかを把握する。
一気にやらなくて良い。一つ一つ丁寧に行え。
魔力を練って、イメージする魔法へと繋がえろ。
魔法はそのイメージの力、思いの力でいくらでも強くなる!
ゼラさんへの憧れと感じている私の思い、そしてゼラさんがリーシアちゃんに感じている思い、私がリーシアちゃんに感じている思い。
その全てを魔法に乗せろ。
「うっ!」
「今更気づいても、遅いよ!」
私の体が魔力で複数体作られる。
下半身から風が立ち上り上へと全て上昇させる。
リーシアちゃんの近接攻撃は周囲を激しく動く風が塞ぎ、魔法攻撃も分散させる。
魔力武器を消去して、その手には魔力で作り出した弓を持つ。
「リーシアちゃんの呪縛を取り除く。そして、私が主の上書きをする」
リーシアちゃんの主に私がなれば、使い魔の罪は私の罪。
どんな事を言われようとも、今回ばかりは一緒に背負わせて貰う。
失敗は許されない。簡単な事じゃない事は分かる。
でも、やらなくてはダメなんだ。
出来る、出来ないじゃない。やるんだ。
やって成功させる。
失敗を考えるな。失敗を恐れるな。
そんな事したって先には進めない、ゼラさんには近づけない。
ゼラさんに、私と言う存在を正確に認識して貰いたい。
守られるだけの存在じゃないって。一緒に肩を並べて戦える存在だって。
認めさせたい。だからここで証明させる。
確かに、まだ私一人の力じゃないけど、それでも戦えるって強くなったて、伝えたい。
守られる『ヒスイ』じゃなくて、一緒に戦える頼もしい『ヒスイ』だって。
「認めさせるんだ!」
激しい魔力の奔流が短剣へと集中させる。
必要な魔法を短剣へと付与し、矢の代わりへとする。
だいたい、エルフは短剣や剣などの近接的な戦いじゃなくて、魔法をメインに弓矢などの遠距離的な戦いだ。
得意分野を忘れるな。
私はエルフ、森に住んで理解し森と一体化する存在。
精霊の力を借りて精霊魔法と弓矢を使った狩りを得意とする。
私は確かに精霊魔法が得意じゃないよ。
だって私だけ精霊が見えないんだもん。声もなかなか聞こえない。
必死に詠唱を覚えて、同い年のエルフに笑われながらも鍛えたんだ。
そして徐々に認められた。
「でも、今回ばかりは魔法だけじゃダメ」
精霊の力を借りないと、リーシアちゃんの呪縛を突破出来ない。
大丈夫。今ならきっと、出来るはずだ。
弓を引いて狙いを定める。
私の分身体に翻弄されながら攻撃をしているが、風が妨害する。
そして上から落ちる強い風がリーシアちゃんにのしかかり動きを阻害する。
「シルフ様、今だけでも構いません。一度でも構わないです。お願いします。そのお力をお貸しください!」
『そんなに畏まらなくて良いよ』
目の前にうっすらとした女性が見えたような気がした。
母のような温かみがある手で顔を包まれ、頬に口付けされる。
初めて明確に認識出来た。
きっと私が歩み寄らなかっただけで、シルフ様はずっと見てくださったのだろう。
そんな気がした。
「ッ!」
私の力では無い何かに寄って風の翼が背中から生えた。
魔力ではなく、精霊のエネルギー霊力な気がする。
それが堪らなく嬉しくなった。
「天地罰当、邪気を払い呪いを解呪せよ」
『おや? これはこれは面白いことをするんですね』
既存の魔法などではダメ。
相手の主との繋がりを断ち、ゾンビとしてのしがらみ、呪いを解く。
その次に私が主だと言う事を刻み込んで上書きする。
簡単な事じゃないけど、失敗する気は毛頭ない。
「新地万有、魂魄繋がり断ちて新たな繋がりを作らん」
新たな魔法の創造。
詠唱を続ける度に短剣に力が籠る。
「森羅万象、ここにて新たな力を授けん、さすれば願いはここにて叶う、新たな力をシルフ様の名の元にここに立てる! 新法契約の矢・森羅!」
『素晴らしいです。流石はゼラ様がお認めになったお方だ』
《新たな魔法が創られました。ワールドシステムに組み込みます。NPCアークエルフを重要人物として認定。監視対象及びネームドNPCへと格上げ》
《おめでとう。世界が貴女を認めました。ヒスイ・メイ・スカイに祝福を》
悪魔の声と何か分からない声が脳内に聞こえた。
だけど、それを気にする余裕は全く無く、短剣の矢はリーシアちゃんに向かって強く飛来した。
白銀の矢は銀色の風翼を広げてリーシアちゃんに命中する。
防ぐも意味がなく、武器を粉砕して心臓へと突き刺さる。
白銀のオーラはそのまま貫き通し魂へと干渉する。
魂にあるゾンビとしての呪いと契約の呪縛をその矢が貫き、消え去る魂を保護する。
次に私の魂とリーシアちゃんの魂を鎖で繋げて、経路を形成する。
目に見えなくても感じる繋がりは互いの認識を確かめるように体に流れ込む。
『なんで、殺さないの?』
「お友達でもあり、仲間だからです。きっと家族にも成れる。私は貴女を守る。貴女は私を守る。そして、感じる罪の重みがあるのなら、それを少しでも軽くするために、一緒に頑張ろ」
『うぅ。ヒスイ、お姉さん』
それを最後に、リーシアちゃんは眠りについた。
そして、力を使い過ぎた私も前のめりに倒れる。
「お疲れ様でした。中々に良かったですよ」
分離した悪魔に支えられて、ゆっくりとリーシアちゃんの傍に横になる。
「私、頑張ったよね?」
「ええ。きっとゼラ様もお喜びになるでしょう⋯⋯ゼラ様ならば」
「⋯⋯ゼラ、さん」
「くくく。ワタクシはどちらでも構いませんよ。アナタ様の魂が全てです。ぐふふ」
私は意識を闇に落とした。
流石に、限界だった。
悪魔と合体して、原初の精霊の力を借りて、オリジナルの魔法を土壇場で使って、もう意識を保つ事すら出来なかったのだ。
深い眠りに私は、ついた。
──そして、最悪が動き出す。
あの骨と同じように漆黒の骨を使った武器。
当然鋭いし丈夫だろう。
「怒りに呑まれた⋯⋯いや、私と違う意味でゼラさんを受け入れた感じがするね」
ゼラさんに対しても私に対しても怒っている訳ではない。
誰に対して怒っているか分からないが、それを力に変えている事だけは分かる。
リーシアちゃんが軽く踏み込む⋯⋯軽いと言っても凄い衝撃波を感じるけど。
魔力も上昇しているようだった。
「だけどね、私も負けてないよ!」
私から銀色の魔力が迸る。
それは黒かった魔力武器を銀色へと変える。
骨の武器と二刀流の短剣が衝突して周囲を吹き飛ばす。
重い重力を感じながらも必死に抑え、相手を弾き返す。
溢れる魔力を自身の身体能力へと変えている。動体視力や思考速度も上昇している。
全力のリーシアちゃん相手でも戦えている!
ゼラさんに名前を与えて、最初の方は私よりも信用されていた。
昔はそれでもなんともなかった⋯⋯だけど、旅を続けていくうちにそれは嫉妬心へと変わっていた。
ゼラさんがずっと思っているリーシアとはどんな人なんだろうか、ずっと思ってずっと嫉妬していた。
でも、今ではそれはない。
なぜなら、既にゼラさんから得られる信頼はリーシアちゃんを超えているから。
それを自覚している。
関わる人との時間で人は変わるように、ゼラさんも変わるのだ。
私とゼラさんの間に出来た絆は本物だと思っていた。⋯⋯確かに、本当ならもっと先に進みたいけど。
「仲間の大切は、仲間であり主である私が救う。ゼラさん、力を貸して」
「うっ!」
リーシアちゃんの攻撃をギリギリで塞ぎながら魔力を練り合わせる。
詠唱なんてしている暇はない。だけどイメージでのこの魔法はとても難しい。
でも、やるしかないんだ。今リーシアちゃんを止められるのはこの私だ。
だからやれ。
本来出来る形の魔法を想像して分解する。
その一つ一つがどのような仕組みなのかを把握する。
一気にやらなくて良い。一つ一つ丁寧に行え。
魔力を練って、イメージする魔法へと繋がえろ。
魔法はそのイメージの力、思いの力でいくらでも強くなる!
ゼラさんへの憧れと感じている私の思い、そしてゼラさんがリーシアちゃんに感じている思い、私がリーシアちゃんに感じている思い。
その全てを魔法に乗せろ。
「うっ!」
「今更気づいても、遅いよ!」
私の体が魔力で複数体作られる。
下半身から風が立ち上り上へと全て上昇させる。
リーシアちゃんの近接攻撃は周囲を激しく動く風が塞ぎ、魔法攻撃も分散させる。
魔力武器を消去して、その手には魔力で作り出した弓を持つ。
「リーシアちゃんの呪縛を取り除く。そして、私が主の上書きをする」
リーシアちゃんの主に私がなれば、使い魔の罪は私の罪。
どんな事を言われようとも、今回ばかりは一緒に背負わせて貰う。
失敗は許されない。簡単な事じゃない事は分かる。
でも、やらなくてはダメなんだ。
出来る、出来ないじゃない。やるんだ。
やって成功させる。
失敗を考えるな。失敗を恐れるな。
そんな事したって先には進めない、ゼラさんには近づけない。
ゼラさんに、私と言う存在を正確に認識して貰いたい。
守られるだけの存在じゃないって。一緒に肩を並べて戦える存在だって。
認めさせたい。だからここで証明させる。
確かに、まだ私一人の力じゃないけど、それでも戦えるって強くなったて、伝えたい。
守られる『ヒスイ』じゃなくて、一緒に戦える頼もしい『ヒスイ』だって。
「認めさせるんだ!」
激しい魔力の奔流が短剣へと集中させる。
必要な魔法を短剣へと付与し、矢の代わりへとする。
だいたい、エルフは短剣や剣などの近接的な戦いじゃなくて、魔法をメインに弓矢などの遠距離的な戦いだ。
得意分野を忘れるな。
私はエルフ、森に住んで理解し森と一体化する存在。
精霊の力を借りて精霊魔法と弓矢を使った狩りを得意とする。
私は確かに精霊魔法が得意じゃないよ。
だって私だけ精霊が見えないんだもん。声もなかなか聞こえない。
必死に詠唱を覚えて、同い年のエルフに笑われながらも鍛えたんだ。
そして徐々に認められた。
「でも、今回ばかりは魔法だけじゃダメ」
精霊の力を借りないと、リーシアちゃんの呪縛を突破出来ない。
大丈夫。今ならきっと、出来るはずだ。
弓を引いて狙いを定める。
私の分身体に翻弄されながら攻撃をしているが、風が妨害する。
そして上から落ちる強い風がリーシアちゃんにのしかかり動きを阻害する。
「シルフ様、今だけでも構いません。一度でも構わないです。お願いします。そのお力をお貸しください!」
『そんなに畏まらなくて良いよ』
目の前にうっすらとした女性が見えたような気がした。
母のような温かみがある手で顔を包まれ、頬に口付けされる。
初めて明確に認識出来た。
きっと私が歩み寄らなかっただけで、シルフ様はずっと見てくださったのだろう。
そんな気がした。
「ッ!」
私の力では無い何かに寄って風の翼が背中から生えた。
魔力ではなく、精霊のエネルギー霊力な気がする。
それが堪らなく嬉しくなった。
「天地罰当、邪気を払い呪いを解呪せよ」
『おや? これはこれは面白いことをするんですね』
既存の魔法などではダメ。
相手の主との繋がりを断ち、ゾンビとしてのしがらみ、呪いを解く。
その次に私が主だと言う事を刻み込んで上書きする。
簡単な事じゃないけど、失敗する気は毛頭ない。
「新地万有、魂魄繋がり断ちて新たな繋がりを作らん」
新たな魔法の創造。
詠唱を続ける度に短剣に力が籠る。
「森羅万象、ここにて新たな力を授けん、さすれば願いはここにて叶う、新たな力をシルフ様の名の元にここに立てる! 新法契約の矢・森羅!」
『素晴らしいです。流石はゼラ様がお認めになったお方だ』
《新たな魔法が創られました。ワールドシステムに組み込みます。NPCアークエルフを重要人物として認定。監視対象及びネームドNPCへと格上げ》
《おめでとう。世界が貴女を認めました。ヒスイ・メイ・スカイに祝福を》
悪魔の声と何か分からない声が脳内に聞こえた。
だけど、それを気にする余裕は全く無く、短剣の矢はリーシアちゃんに向かって強く飛来した。
白銀の矢は銀色の風翼を広げてリーシアちゃんに命中する。
防ぐも意味がなく、武器を粉砕して心臓へと突き刺さる。
白銀のオーラはそのまま貫き通し魂へと干渉する。
魂にあるゾンビとしての呪いと契約の呪縛をその矢が貫き、消え去る魂を保護する。
次に私の魂とリーシアちゃんの魂を鎖で繋げて、経路を形成する。
目に見えなくても感じる繋がりは互いの認識を確かめるように体に流れ込む。
『なんで、殺さないの?』
「お友達でもあり、仲間だからです。きっと家族にも成れる。私は貴女を守る。貴女は私を守る。そして、感じる罪の重みがあるのなら、それを少しでも軽くするために、一緒に頑張ろ」
『うぅ。ヒスイ、お姉さん』
それを最後に、リーシアちゃんは眠りについた。
そして、力を使い過ぎた私も前のめりに倒れる。
「お疲れ様でした。中々に良かったですよ」
分離した悪魔に支えられて、ゆっくりとリーシアちゃんの傍に横になる。
「私、頑張ったよね?」
「ええ。きっとゼラ様もお喜びになるでしょう⋯⋯ゼラ様ならば」
「⋯⋯ゼラ、さん」
「くくく。ワタクシはどちらでも構いませんよ。アナタ様の魂が全てです。ぐふふ」
私は意識を闇に落とした。
流石に、限界だった。
悪魔と合体して、原初の精霊の力を借りて、オリジナルの魔法を土壇場で使って、もう意識を保つ事すら出来なかったのだ。
深い眠りに私は、ついた。
──そして、最悪が動き出す。
応援ありがとうございます!
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