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アンデッドの国
新たな旅立ちと幕切れ
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家に帰る間、誰もが口を開かなかった。
「それで、今後の事なんですが」
ヒスイは俺に戻って来て欲しいと思っている。
マナは未だに現実を受け入れる事はしないで俺を戻るのを嫌っている。
俺はどうするべきかと考える。
普通なら夢なんてさっさと覚まさせて戻るべきなのだろう。
しかし、俺がここで生活していた時間は、そんなにあっさり切れる程に短くは無い。
それはヒスイと過ごした時間よりももっと長いのだ。
確かに、本来の世界とは違う俺に都合の良い世界なのだから仕方ないけど。
そんな結論の見えない口論を揺るがしたのはなんと、鬼龍院さんだった。
「自分は、虚くんは戻るべきだと思います」
少しだけ迷いの含んだ瞳を皆に見せながらそうやって宣言する。
その宣言はこの場にいる全ての人を驚愕させるだけの力は秘めていた。
実際にそうだ。
この世界で生まれてこの世界で育ったのに、戻るべきだと言ったのだから。
それは自らの存在を無かった事にするのと何ら変わりのない事だ。
だと言うのに、戻るべきだと鬼龍院さんは伝えた。
自分の命よりも俺が戻る方が重要だと言う様に。
「良いの? 本当にそれで? 拓海がいなくなっちゃうんだよ! マナ達も消えるし⋯⋯」
「だって、このまま虚くんが死ぬとか、それの方が嫌なんですよ! 自分達は生きているけど生きている訳じゃない。だったらずっと虚くんの思い出の中で居たって良いじゃないですか」
ある種の幸せ。
幸せのまま終わり、それが俺の中に残っていたら良い。
⋯⋯でも、それも少しだけ違うのだ。
実際の現実は存在する。
望まぬ結婚を行い、その式に俺は出席してマナが思い詰めている事に気づかなかった。
今だから思うのだが、当時の彼女はこの俺に、俺だけに助けて欲しかったのだろう。
でも、感情の欠落していた俺にはそれが出来なかった。
考える事すらしなかった。
鬼龍院さんは失恋を経験し、その理由すら知らないまま数日過ごす。
そしてマナとの関係を勘違いして絶望し、自暴自棄へと入る。
何もかもがダメになり、人生が狂ってしまう。
俺はこの世界で彼女達の『現実』を『理想』へと変えたのだ。
それで彼女達はよろこんでいふが、多分その中で一番幸福感を覚えていたのはこの俺だ。
ただの自己満足でやってしまった行い。
カオスの実験で俺には感情が無理矢理与えられた。
しかし、それは不安定であり、ヒスイとの生活で俺は自らの感情を確立した。
だけど、それすらも上手くコントロール出来ていないのが現状。
俺は、どうしたら良いんだろうか。
「それに、虚くんがヒスイさんに向ける目は自分達とは別だって、マナも分かっているでしょう? 異世界云々の話もきっと本当だし、虚くんに少しばかりの感情を芽生えさせたのも自分でもマナでもなくヒスイさんなのよ! 時間なんて関係ない。ヒスイさんにはそれだけの力があったのよ」
一瞬の自虐を込めてその言葉を放った。
それはマナにも突き刺さったようで、言葉を詰まらせていた。
彼女達は色々と知った。だから、俺もきちんと現実と向き合う必要がある。
まずは⋯⋯伝える事からだ。
「そんな⋯⋯」
「うそ、でしょ。拓海?」
「嘘じゃないよ。本来の現実は今とは真逆の結果となっている」
次に俺に起こった事を俺の口からきちんと説明した。
記憶をきちんと取り戻した事もだ。
それを言ってから考える事にしよう。
全てを話し終えた。
「つまり、拓海は神の遊びの為に死んだって事?」
「そうかもね」
「そしてその人と関わり合いがある人もランダムで⋯⋯」
俺には神の考えなんて分からない。
もしかしたらこの場も見ているかもしれない。
俺が自分の夢に情が沸いて悩んでいる姿に笑っているのかもしれない。
「あ、そう言えば。リーシアちゃんを助けた時に頭に言葉が少しだけ流れたんですよ。あんまり覚えてないんですけど、ただ、ネームドノンプレイヤーキャラクターって言葉は覚えている」
⋯⋯そっか、神はヒスイ達にも干渉している可能性はあるのか。
あの世界は言わばゲームの舞台。俺達はプレイヤーとしてゲームを攻略して神々はそれを見て楽しむ。
その世界の住民は現地人であり、神々にとってはNPC。
何が楽しいのか。人間をおもちゃのように扱いやがって。
「⋯⋯それなら、寧ろ自分は戻るべきだと思う」
「え」
先程とは違い迷いのない目を俺とマナに向ける。
「自分達は遅かれ早かれどうせ消えてしまう。だったら、虚くんに少しだけ長く記憶に残って欲しい。一緒に死ぬなんて嫌。好きだから、ちゃんと生きて欲しい。⋯⋯それに、もしかしたら異世界に自分達がいるかもしれないでしょ」
「⋯⋯ッ! そ、そのマナ達は」
「うん。当然人生に絶望していると思う。だから、虚くんに助けて貰いたい」
でも、その確証なんてないし、どうやって探せば良いのか分からない。
それに俺にそれが出来るだろうか?
こんな神に弄ばれて怒りに呑まれて暴れていただけのこの俺が。
「虚くん。自分は、貴方を信頼してますよ?」
「え?」
俯ていたら、鬼龍院さんが近づいて、無理矢理目を合わせて来る。
「守ると決めたなら最後まで守る、貴方の意志を信用してます。なので、本物の自分を助けてください」
「⋯⋯でも、そしたら⋯⋯」
「確かに消えるのは怖いです⋯⋯でも、偽りのまま終わるのはもっと怖い」
偽り、それはこれまでの人生全ての事を意味する。
「虚くん。いいえゼラさん。自分を、異世界にいるだろう自分を守ってください」
「でも、その確証は⋯⋯」
「話を聞いて思ったんです。多分、全てを失った自分は自殺を選ぶって。だって、これといった趣味もないのに、居場所すら自ら無くしたんですから。マナは?」
それは勉強の事を意味した。
そして異世界の俺、本当の俺、ゼラと約束を願う。
鬼龍院さんは未だに苦しそうなマナを見る。
「ああ! もう分かった! 絶対にマナも居るだろうからさ、今度はちゃんと救ってね。まだ納得出来ないし怖いけどさ、このままゼラが死ぬってのがもっと怖いし苦しい。一緒に消えたら幸せなんて、そうは思えないしさ。だから約束?」
小指を差し出して来る。
俺は⋯⋯守りたい。救いたい。
この生活を送ったから思ってしまう不純な感情だけど。
それでも構わない。カオスが言った。
俺は守りたい対象を作り出しているんだって。ああ、そうだよ。その通りだよ。
ヒスイ、リーシア、リオさん、そして鬼龍院さんとマナ。
俺は守りたい存在を増やしに増やしたよ。
でもさ、きっとそれが俺なんだよ。
俺でありながら俺では無いゼラと言う存在の俺の役目なんだよ。
ドッペルゲンガーとしての存在理由なんだよ。
「まずはこの世界での事を教えないとな」
その言葉に三人は笑みを浮かべた。
鬼龍院さんとマナは涙を目を開けながら流す。
手が震えている。怖いのだろう。
当然だ。死ぬと分かって怖くないと思う人なんていない。
でも、この子らは死ぬ訳じゃない。本来の道に戻るだけだ。
だから、この結果のように二人が笑えるような世界に、してみせる。
「絶対に見つけ出して、救って、守るから。約束だ。ゼラニウムの名に賭けて。そして、これが俺からゼラへの影武者依頼だ。この世界の俺の代わりに、頼むぞ」
この世界の俺とゼラと言う俺は本当なら一緒だ。
だけど、一緒には出来ない。
だって、そしたら今ここにいるマナ達とは違う存在だって認める事になるから。
せめて、最後は一緒の世界の住人としていよう。
「ヒスイ、行こう。本来の世界へ」
「はい」
謎の光に俺とヒスイが包まれ、浮遊感を感じる。
そんな中、マナと鬼龍院さんが同時に目の前から体を寄せて来た。
次の瞬間には口元に柔らかく暖かい感触が二つ感じた。それぞれ少しだけ違いがある。
「なっ!」
ヒスイの短い悲鳴が聞こえる。
「絶対、助けてね。マナの初めてを与えたんだから」
「自分もですよ? 約束守らなかったら、魂から這い出てでも呪ってやりますから」
「ああ、肝に命じるよ」
意識が暗転する。
『なかなか面白い結果になったね』
カオス、か。
ははは。今後はもっと面白い事になるぞ。
『え?』
見てろよ神々、俺がお前らを───。
『あははははははは! 面白いね。確かに面白い。期待してるよ。さぁ、おはようの時間だ』
《デッドロードから略奪した魂と悪魔達から献上された魂を消費して進化を開始します》
《ドッペルゲンガーから虚混者に進化します》
《【憤怒の主】を【憤怒の王】へと進化します》
《配合系スキルは【森羅万象】へと統合進化します》
《変身系スキルは【虚混】へと統合進化します》
そして俺は目を覚ました。
国は滅茶苦茶で残骸が少しだけ残っている感じだ。
分かる。俺には今、デッドロードから奪ったゾンビが魂の繋がった配下としている。
当然悪魔もだ。
「これはゼラ様」
「悪魔⋯⋯お前は今後も俺の配下で居るか?」
「もちろんでございます」
「なら、お前に芍薬の名前を与える。今後はシャクとでも呼ぶよ」
「ありがたき幸せです!」
魔物は名前を与えとネームドに進化する。
リーシアから流れる記憶。なんでか分からないけど、それらがはっきりと分かる。
大幅な魔力を奪われたが、いずれ回復するし、いざとなったら【憤怒の王】を使えば良い。
「ゼラさん」
「ゼラお姉さん」
「おう。俺は復活だ。シャク、俺はこの世界を変える。だから魔界から俺の配下に加わる奴を増やしてくれ。戦力が足りないなら、俺の魔力を使って俺を主として悪魔達に名前を与えろ」
「畏まりました」
そして軽くなった足を前に出す。
見た目は大人のリーシア。中にはデッドロードの骨があるのだろう。
「さて、エドに戻ろう。ヒスイ、手伝ってくれるか?」
「もちろんですよ。私も聞いてました。あの場の約束は私の約束でもあります。⋯⋯私にはゼラさんからして欲しい、です」
「え、何? 私は分からないんだけど」
リーシアの頭に手をおく。
「他の子供達も移動出来る様にしておいて。移動する」
「無視っ!」
まずはエドに戻って報告を済ます。
その後は仲間を増やして神への対抗策を増やしながらプレイヤーを探す。
マナも鬼龍院さんは絶対に見つけ出す。
「俺はこの世界の理が気に食わない。神のおもちゃに甘んじるか。牙を立ててやる。遊び道具じゃなくて、生命体としてな」
俺は人生の目標を決めた。
何年かかるか分からない。だけど必ず成し遂げる。
約束したから。救うと。守ると。
その為の障害は全て──滅する!
「それで、今後の事なんですが」
ヒスイは俺に戻って来て欲しいと思っている。
マナは未だに現実を受け入れる事はしないで俺を戻るのを嫌っている。
俺はどうするべきかと考える。
普通なら夢なんてさっさと覚まさせて戻るべきなのだろう。
しかし、俺がここで生活していた時間は、そんなにあっさり切れる程に短くは無い。
それはヒスイと過ごした時間よりももっと長いのだ。
確かに、本来の世界とは違う俺に都合の良い世界なのだから仕方ないけど。
そんな結論の見えない口論を揺るがしたのはなんと、鬼龍院さんだった。
「自分は、虚くんは戻るべきだと思います」
少しだけ迷いの含んだ瞳を皆に見せながらそうやって宣言する。
その宣言はこの場にいる全ての人を驚愕させるだけの力は秘めていた。
実際にそうだ。
この世界で生まれてこの世界で育ったのに、戻るべきだと言ったのだから。
それは自らの存在を無かった事にするのと何ら変わりのない事だ。
だと言うのに、戻るべきだと鬼龍院さんは伝えた。
自分の命よりも俺が戻る方が重要だと言う様に。
「良いの? 本当にそれで? 拓海がいなくなっちゃうんだよ! マナ達も消えるし⋯⋯」
「だって、このまま虚くんが死ぬとか、それの方が嫌なんですよ! 自分達は生きているけど生きている訳じゃない。だったらずっと虚くんの思い出の中で居たって良いじゃないですか」
ある種の幸せ。
幸せのまま終わり、それが俺の中に残っていたら良い。
⋯⋯でも、それも少しだけ違うのだ。
実際の現実は存在する。
望まぬ結婚を行い、その式に俺は出席してマナが思い詰めている事に気づかなかった。
今だから思うのだが、当時の彼女はこの俺に、俺だけに助けて欲しかったのだろう。
でも、感情の欠落していた俺にはそれが出来なかった。
考える事すらしなかった。
鬼龍院さんは失恋を経験し、その理由すら知らないまま数日過ごす。
そしてマナとの関係を勘違いして絶望し、自暴自棄へと入る。
何もかもがダメになり、人生が狂ってしまう。
俺はこの世界で彼女達の『現実』を『理想』へと変えたのだ。
それで彼女達はよろこんでいふが、多分その中で一番幸福感を覚えていたのはこの俺だ。
ただの自己満足でやってしまった行い。
カオスの実験で俺には感情が無理矢理与えられた。
しかし、それは不安定であり、ヒスイとの生活で俺は自らの感情を確立した。
だけど、それすらも上手くコントロール出来ていないのが現状。
俺は、どうしたら良いんだろうか。
「それに、虚くんがヒスイさんに向ける目は自分達とは別だって、マナも分かっているでしょう? 異世界云々の話もきっと本当だし、虚くんに少しばかりの感情を芽生えさせたのも自分でもマナでもなくヒスイさんなのよ! 時間なんて関係ない。ヒスイさんにはそれだけの力があったのよ」
一瞬の自虐を込めてその言葉を放った。
それはマナにも突き刺さったようで、言葉を詰まらせていた。
彼女達は色々と知った。だから、俺もきちんと現実と向き合う必要がある。
まずは⋯⋯伝える事からだ。
「そんな⋯⋯」
「うそ、でしょ。拓海?」
「嘘じゃないよ。本来の現実は今とは真逆の結果となっている」
次に俺に起こった事を俺の口からきちんと説明した。
記憶をきちんと取り戻した事もだ。
それを言ってから考える事にしよう。
全てを話し終えた。
「つまり、拓海は神の遊びの為に死んだって事?」
「そうかもね」
「そしてその人と関わり合いがある人もランダムで⋯⋯」
俺には神の考えなんて分からない。
もしかしたらこの場も見ているかもしれない。
俺が自分の夢に情が沸いて悩んでいる姿に笑っているのかもしれない。
「あ、そう言えば。リーシアちゃんを助けた時に頭に言葉が少しだけ流れたんですよ。あんまり覚えてないんですけど、ただ、ネームドノンプレイヤーキャラクターって言葉は覚えている」
⋯⋯そっか、神はヒスイ達にも干渉している可能性はあるのか。
あの世界は言わばゲームの舞台。俺達はプレイヤーとしてゲームを攻略して神々はそれを見て楽しむ。
その世界の住民は現地人であり、神々にとってはNPC。
何が楽しいのか。人間をおもちゃのように扱いやがって。
「⋯⋯それなら、寧ろ自分は戻るべきだと思う」
「え」
先程とは違い迷いのない目を俺とマナに向ける。
「自分達は遅かれ早かれどうせ消えてしまう。だったら、虚くんに少しだけ長く記憶に残って欲しい。一緒に死ぬなんて嫌。好きだから、ちゃんと生きて欲しい。⋯⋯それに、もしかしたら異世界に自分達がいるかもしれないでしょ」
「⋯⋯ッ! そ、そのマナ達は」
「うん。当然人生に絶望していると思う。だから、虚くんに助けて貰いたい」
でも、その確証なんてないし、どうやって探せば良いのか分からない。
それに俺にそれが出来るだろうか?
こんな神に弄ばれて怒りに呑まれて暴れていただけのこの俺が。
「虚くん。自分は、貴方を信頼してますよ?」
「え?」
俯ていたら、鬼龍院さんが近づいて、無理矢理目を合わせて来る。
「守ると決めたなら最後まで守る、貴方の意志を信用してます。なので、本物の自分を助けてください」
「⋯⋯でも、そしたら⋯⋯」
「確かに消えるのは怖いです⋯⋯でも、偽りのまま終わるのはもっと怖い」
偽り、それはこれまでの人生全ての事を意味する。
「虚くん。いいえゼラさん。自分を、異世界にいるだろう自分を守ってください」
「でも、その確証は⋯⋯」
「話を聞いて思ったんです。多分、全てを失った自分は自殺を選ぶって。だって、これといった趣味もないのに、居場所すら自ら無くしたんですから。マナは?」
それは勉強の事を意味した。
そして異世界の俺、本当の俺、ゼラと約束を願う。
鬼龍院さんは未だに苦しそうなマナを見る。
「ああ! もう分かった! 絶対にマナも居るだろうからさ、今度はちゃんと救ってね。まだ納得出来ないし怖いけどさ、このままゼラが死ぬってのがもっと怖いし苦しい。一緒に消えたら幸せなんて、そうは思えないしさ。だから約束?」
小指を差し出して来る。
俺は⋯⋯守りたい。救いたい。
この生活を送ったから思ってしまう不純な感情だけど。
それでも構わない。カオスが言った。
俺は守りたい対象を作り出しているんだって。ああ、そうだよ。その通りだよ。
ヒスイ、リーシア、リオさん、そして鬼龍院さんとマナ。
俺は守りたい存在を増やしに増やしたよ。
でもさ、きっとそれが俺なんだよ。
俺でありながら俺では無いゼラと言う存在の俺の役目なんだよ。
ドッペルゲンガーとしての存在理由なんだよ。
「まずはこの世界での事を教えないとな」
その言葉に三人は笑みを浮かべた。
鬼龍院さんとマナは涙を目を開けながら流す。
手が震えている。怖いのだろう。
当然だ。死ぬと分かって怖くないと思う人なんていない。
でも、この子らは死ぬ訳じゃない。本来の道に戻るだけだ。
だから、この結果のように二人が笑えるような世界に、してみせる。
「絶対に見つけ出して、救って、守るから。約束だ。ゼラニウムの名に賭けて。そして、これが俺からゼラへの影武者依頼だ。この世界の俺の代わりに、頼むぞ」
この世界の俺とゼラと言う俺は本当なら一緒だ。
だけど、一緒には出来ない。
だって、そしたら今ここにいるマナ達とは違う存在だって認める事になるから。
せめて、最後は一緒の世界の住人としていよう。
「ヒスイ、行こう。本来の世界へ」
「はい」
謎の光に俺とヒスイが包まれ、浮遊感を感じる。
そんな中、マナと鬼龍院さんが同時に目の前から体を寄せて来た。
次の瞬間には口元に柔らかく暖かい感触が二つ感じた。それぞれ少しだけ違いがある。
「なっ!」
ヒスイの短い悲鳴が聞こえる。
「絶対、助けてね。マナの初めてを与えたんだから」
「自分もですよ? 約束守らなかったら、魂から這い出てでも呪ってやりますから」
「ああ、肝に命じるよ」
意識が暗転する。
『なかなか面白い結果になったね』
カオス、か。
ははは。今後はもっと面白い事になるぞ。
『え?』
見てろよ神々、俺がお前らを───。
『あははははははは! 面白いね。確かに面白い。期待してるよ。さぁ、おはようの時間だ』
《デッドロードから略奪した魂と悪魔達から献上された魂を消費して進化を開始します》
《ドッペルゲンガーから虚混者に進化します》
《【憤怒の主】を【憤怒の王】へと進化します》
《配合系スキルは【森羅万象】へと統合進化します》
《変身系スキルは【虚混】へと統合進化します》
そして俺は目を覚ました。
国は滅茶苦茶で残骸が少しだけ残っている感じだ。
分かる。俺には今、デッドロードから奪ったゾンビが魂の繋がった配下としている。
当然悪魔もだ。
「これはゼラ様」
「悪魔⋯⋯お前は今後も俺の配下で居るか?」
「もちろんでございます」
「なら、お前に芍薬の名前を与える。今後はシャクとでも呼ぶよ」
「ありがたき幸せです!」
魔物は名前を与えとネームドに進化する。
リーシアから流れる記憶。なんでか分からないけど、それらがはっきりと分かる。
大幅な魔力を奪われたが、いずれ回復するし、いざとなったら【憤怒の王】を使えば良い。
「ゼラさん」
「ゼラお姉さん」
「おう。俺は復活だ。シャク、俺はこの世界を変える。だから魔界から俺の配下に加わる奴を増やしてくれ。戦力が足りないなら、俺の魔力を使って俺を主として悪魔達に名前を与えろ」
「畏まりました」
そして軽くなった足を前に出す。
見た目は大人のリーシア。中にはデッドロードの骨があるのだろう。
「さて、エドに戻ろう。ヒスイ、手伝ってくれるか?」
「もちろんですよ。私も聞いてました。あの場の約束は私の約束でもあります。⋯⋯私にはゼラさんからして欲しい、です」
「え、何? 私は分からないんだけど」
リーシアの頭に手をおく。
「他の子供達も移動出来る様にしておいて。移動する」
「無視っ!」
まずはエドに戻って報告を済ます。
その後は仲間を増やして神への対抗策を増やしながらプレイヤーを探す。
マナも鬼龍院さんは絶対に見つけ出す。
「俺はこの世界の理が気に食わない。神のおもちゃに甘んじるか。牙を立ててやる。遊び道具じゃなくて、生命体としてな」
俺は人生の目標を決めた。
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改めて感謝します!
貴方のお陰でモチベが回復しました!今後ともよろしくお願いします!