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1.ぷろろーぐ????
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この世界は、クソだ。
能力のあるエスパーばかりが有名になり、そして高収入。
そんなエスパーだが、ガイドが居ないといずれ暴走して死んでしまうというのに、ガイドの給料というのはとんでもなく安い。
エスパーの手当と比べると、スズメの涙もいいところだ。
エスパーの専属になれば、それなりに生活は保障されるけれど、誰もがなれるわけじゃない。
事務所や国家機関、医療機関などに所属するガイドはそこそこいい給料をもらえたりするらしい。
けど、その業務内容はとんでもなくハードだとも聞く。エスパーの数に比べて、ガイドが少ないからだ。
おまけに専属ガイドが居る時点で、ガイドの数などますます少なくなる。
政府所属の国家機関【タワー】だと、危険すらもあるらしい。
そんな噂を聞いて、それでもなおガイドの仕事がしたいかと言われればそれはノーだ。
俺は、幼い頃の能力測定検査でガイドだと診断された。
診断で等級はどうであれエスパーまたはガイドと診断されれば、その専用の養成機関へと編入することになる。
養成機関に居た頃は、立派なガイドになってエスパーを救うんだと思っていた。
けれどそこで、恋人と出会ったんだ。まぁ、元恋人だけれど。
お互いガイドで、接触ガイディング以上はしないで居ようって約束したのに。
自分より等級の高いエスパーに流されたらしい。そして、俺が別れを切り出された。つまりは、エスパーに寝取られたって事だ。
信じられなかった。自分の前に、エスパーに腰を抱かれながら照れたように現れた姿も、嬉しそうな顔をしてそれを報告してくる恋人も。
だから、思った。
恋人にするなら、恋をするならエスパーでもガイドでもなく、ミュートにするべきだったって。
ミュートなら、そんな風に俺を裏切ることも姿を現すことも、きっとない。
浮気をする事も、隠そうとするだろう。あんな、大っぴらには、きっとしない。
ほんと、思い出すだけで腹が立つ。だから、エスパーもガイドも嫌いだ。
それでも、ガイドとして生まれたのだから、ガイドとして仕事をしようと思っていた。
けれど、ガイドの現実を見れば、その考えすらなくなる。
実際に、元恋人を奪っていったエスパーはA級で専属ガイドになった恋人は一般的なガイドよりも好待遇だ。
そのエスパーはタワーの所属で、タワーは就職先から消えた。
給料面と待遇を考えると、医療機関もどこかの事務所もお断り。エスパー事務所所属の求人票は見たけれど、所属エスパーに対して、所属しているガイドの少ないこと。
そんな彼らのガイドをするのに、給料は良くない。
すべてを見比べた結果、やってられないと思った。
だから、給料が良く待遇もいい、一般企業に就職したんだ。
毎年、何人かはそういうガイドがいるらしくて、少し変な目で見られただけで済んだ。
エスパーはガイドが居ないと生きていけないけど、ガイドはそうじゃない。
だから、ガイドに生まれて良かったとその時は思った。なにせ、クソみたいなシステムに強制参加させられなくて済むんだから。
まぁ、野良のエスパーも居ないことは無いし、そういった彼らは医療機関を利用してるから、ゾーンアウトすることは無い。
ない、はずなんだけどな。
「……チッ」
会社から、自宅までの帰り道の途中、びりびりとするようなエスパーの気配を感じた。
どうやら、ゾーンに入ってしまっているようだ。無視して、帰ろうかと思ったけれど、耳を澄ませていても救急車の音はしない。
周りの住人が、これだけの気配があれば通報しているだろうに。
そういえば、この間大きなダンジョンが現れたとニュースで言っていた。そのせいかもしれない。
ただ、それはここから結構な距離が離れた場所にあったはず。
何故、こんな所でゾーンに入っているエスパーが居るのか。
疑問は尽きないけど。
はぁ~~っ! と長いため息を吐きながら、頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
本当は関わり合いになんてなりたくない。
けど、このまま放置してゾーンアウトしてしまうのも目覚めが悪い。
どちらがマシか天秤にかけたら、足はおのずとその気配の強い方へと向いていた。
しばらく歩くと、簡素な住宅街の細道に出る。
「こんな所まで気配が漂ってるって、S級か?」
内心、面倒なことになったと思いながら、ようやく見えてきた人影で眉間にしわを寄せた。
どこかで見たことがあるような? と首を傾げながら、それでもS級なら何かしらのテレビや広告で見たことがあるのだろうと勝手に納得する。
じゃないと、考え込んでしまいそうだからだ。
ただ、S級なら野良のエスパーではないだろう。S級エスパーは好待遇を条件に国に縛り付けられている。
事務所であれ、タワーであれ。この国を裏切らない限りは。
「なぁ、アンタ。大丈夫か?」
突然現れただろう俺に、鋭い視線が刺さる。嫌になるほど顔がいい。
不細工なエスパーなんて見たことはないけど、エスパー自体平凡の顔立ちを見たことがないな。
まぁ、そんな事はどうでもいい。
「……」
「大丈夫じゃなさそうだな……」
はぁ、と小さく息を吐いて彼に一歩近づく。すると、彼は何を思ったのか、一歩下がる。
どうやら、警戒されているらしい。まぁ、当然か。
「分かってると思うが、俺はガイドだ。お前のその状態だと、いつゾーンアウトしてもおかしくないだろ? 多少マシにしてやるから手を貸せ」
「……いい」
「よかねーだろ、いいから手!」
よこせっ、と無理やり握ると恐ろしい、そう思わせる感覚に襲われる。
昔、養成機関でガイドした時には感じたことのない恐怖。
けど、強引にガイドしてやると言ったのは自分なのだ。途中で投げ出すわけにはいかない。
彼の普段は制御下にあるだろう、五感をまずは鎮めていく。
一つ一つ、シャボン玉のような膜で包む。年のせいか、それともこのエスパーのせいか、接触ガイディングで昔はらくらくできていたのに、とんでもなく苦労する。
やっとの事、五感を鎮め、それから能力の方へと手を付けた。
あらぶっている能力の本質に触れ、そこから怒りや焦りなんていうとげとげしい感情を柔らかく丸くしていく。
全部は無理でも、多少はマシになっただろう。
「……っ、はぁ、はっ、はぁ……これで、だいぶマシだろ。後は、専属でも組織に居るガイドでもなんでも良いからガイドしてもらう事だな」
パッと手を離すと、驚いたようにエスパーは握っていた手を見つめていた。
そんなに驚くようなことをしただろうか?
ただ、五感を鎮めて感情の棘を少し削り取っただけだ。完璧なガイディングじゃないが、動くには問題ないだろう。
「じゃあな」
「まて」
去ろうとした俺の手が引かれて、驚く。
なんだ、と言おうとした唇は相手のモノに塞がれていた。
「んーっ!?」
キスから、粘膜接触で自分の意思じゃなくてガイドの力を吸い取られている気がする。
離れようとしても腰を抱かれていて離れることも出来ない。
だんだんと腹が立ってきて、握っていた鞄でこのエスパーの頭を殴り飛ばした。
さすがに、離れてくれて、はぁ! と息を吐いた。
「……んっの、ふっざけんなよお前!! お前なんて助けるんじゃなかったクソ野郎が!!」
そう言うと俺は振り返りもせずに自宅へと駆けだした。
ガイドの同意も得ずに粘膜接触してくるなんて、信じられない。
本当に、エスパーは自己本位で大嫌いだ。
あぁ、良い事したと思ったのに。エスパーなんてやっぱり助けるんじゃなかった。
能力のあるエスパーばかりが有名になり、そして高収入。
そんなエスパーだが、ガイドが居ないといずれ暴走して死んでしまうというのに、ガイドの給料というのはとんでもなく安い。
エスパーの手当と比べると、スズメの涙もいいところだ。
エスパーの専属になれば、それなりに生活は保障されるけれど、誰もがなれるわけじゃない。
事務所や国家機関、医療機関などに所属するガイドはそこそこいい給料をもらえたりするらしい。
けど、その業務内容はとんでもなくハードだとも聞く。エスパーの数に比べて、ガイドが少ないからだ。
おまけに専属ガイドが居る時点で、ガイドの数などますます少なくなる。
政府所属の国家機関【タワー】だと、危険すらもあるらしい。
そんな噂を聞いて、それでもなおガイドの仕事がしたいかと言われればそれはノーだ。
俺は、幼い頃の能力測定検査でガイドだと診断された。
診断で等級はどうであれエスパーまたはガイドと診断されれば、その専用の養成機関へと編入することになる。
養成機関に居た頃は、立派なガイドになってエスパーを救うんだと思っていた。
けれどそこで、恋人と出会ったんだ。まぁ、元恋人だけれど。
お互いガイドで、接触ガイディング以上はしないで居ようって約束したのに。
自分より等級の高いエスパーに流されたらしい。そして、俺が別れを切り出された。つまりは、エスパーに寝取られたって事だ。
信じられなかった。自分の前に、エスパーに腰を抱かれながら照れたように現れた姿も、嬉しそうな顔をしてそれを報告してくる恋人も。
だから、思った。
恋人にするなら、恋をするならエスパーでもガイドでもなく、ミュートにするべきだったって。
ミュートなら、そんな風に俺を裏切ることも姿を現すことも、きっとない。
浮気をする事も、隠そうとするだろう。あんな、大っぴらには、きっとしない。
ほんと、思い出すだけで腹が立つ。だから、エスパーもガイドも嫌いだ。
それでも、ガイドとして生まれたのだから、ガイドとして仕事をしようと思っていた。
けれど、ガイドの現実を見れば、その考えすらなくなる。
実際に、元恋人を奪っていったエスパーはA級で専属ガイドになった恋人は一般的なガイドよりも好待遇だ。
そのエスパーはタワーの所属で、タワーは就職先から消えた。
給料面と待遇を考えると、医療機関もどこかの事務所もお断り。エスパー事務所所属の求人票は見たけれど、所属エスパーに対して、所属しているガイドの少ないこと。
そんな彼らのガイドをするのに、給料は良くない。
すべてを見比べた結果、やってられないと思った。
だから、給料が良く待遇もいい、一般企業に就職したんだ。
毎年、何人かはそういうガイドがいるらしくて、少し変な目で見られただけで済んだ。
エスパーはガイドが居ないと生きていけないけど、ガイドはそうじゃない。
だから、ガイドに生まれて良かったとその時は思った。なにせ、クソみたいなシステムに強制参加させられなくて済むんだから。
まぁ、野良のエスパーも居ないことは無いし、そういった彼らは医療機関を利用してるから、ゾーンアウトすることは無い。
ない、はずなんだけどな。
「……チッ」
会社から、自宅までの帰り道の途中、びりびりとするようなエスパーの気配を感じた。
どうやら、ゾーンに入ってしまっているようだ。無視して、帰ろうかと思ったけれど、耳を澄ませていても救急車の音はしない。
周りの住人が、これだけの気配があれば通報しているだろうに。
そういえば、この間大きなダンジョンが現れたとニュースで言っていた。そのせいかもしれない。
ただ、それはここから結構な距離が離れた場所にあったはず。
何故、こんな所でゾーンに入っているエスパーが居るのか。
疑問は尽きないけど。
はぁ~~っ! と長いため息を吐きながら、頭をぐしゃぐしゃとかき混ぜる。
本当は関わり合いになんてなりたくない。
けど、このまま放置してゾーンアウトしてしまうのも目覚めが悪い。
どちらがマシか天秤にかけたら、足はおのずとその気配の強い方へと向いていた。
しばらく歩くと、簡素な住宅街の細道に出る。
「こんな所まで気配が漂ってるって、S級か?」
内心、面倒なことになったと思いながら、ようやく見えてきた人影で眉間にしわを寄せた。
どこかで見たことがあるような? と首を傾げながら、それでもS級なら何かしらのテレビや広告で見たことがあるのだろうと勝手に納得する。
じゃないと、考え込んでしまいそうだからだ。
ただ、S級なら野良のエスパーではないだろう。S級エスパーは好待遇を条件に国に縛り付けられている。
事務所であれ、タワーであれ。この国を裏切らない限りは。
「なぁ、アンタ。大丈夫か?」
突然現れただろう俺に、鋭い視線が刺さる。嫌になるほど顔がいい。
不細工なエスパーなんて見たことはないけど、エスパー自体平凡の顔立ちを見たことがないな。
まぁ、そんな事はどうでもいい。
「……」
「大丈夫じゃなさそうだな……」
はぁ、と小さく息を吐いて彼に一歩近づく。すると、彼は何を思ったのか、一歩下がる。
どうやら、警戒されているらしい。まぁ、当然か。
「分かってると思うが、俺はガイドだ。お前のその状態だと、いつゾーンアウトしてもおかしくないだろ? 多少マシにしてやるから手を貸せ」
「……いい」
「よかねーだろ、いいから手!」
よこせっ、と無理やり握ると恐ろしい、そう思わせる感覚に襲われる。
昔、養成機関でガイドした時には感じたことのない恐怖。
けど、強引にガイドしてやると言ったのは自分なのだ。途中で投げ出すわけにはいかない。
彼の普段は制御下にあるだろう、五感をまずは鎮めていく。
一つ一つ、シャボン玉のような膜で包む。年のせいか、それともこのエスパーのせいか、接触ガイディングで昔はらくらくできていたのに、とんでもなく苦労する。
やっとの事、五感を鎮め、それから能力の方へと手を付けた。
あらぶっている能力の本質に触れ、そこから怒りや焦りなんていうとげとげしい感情を柔らかく丸くしていく。
全部は無理でも、多少はマシになっただろう。
「……っ、はぁ、はっ、はぁ……これで、だいぶマシだろ。後は、専属でも組織に居るガイドでもなんでも良いからガイドしてもらう事だな」
パッと手を離すと、驚いたようにエスパーは握っていた手を見つめていた。
そんなに驚くようなことをしただろうか?
ただ、五感を鎮めて感情の棘を少し削り取っただけだ。完璧なガイディングじゃないが、動くには問題ないだろう。
「じゃあな」
「まて」
去ろうとした俺の手が引かれて、驚く。
なんだ、と言おうとした唇は相手のモノに塞がれていた。
「んーっ!?」
キスから、粘膜接触で自分の意思じゃなくてガイドの力を吸い取られている気がする。
離れようとしても腰を抱かれていて離れることも出来ない。
だんだんと腹が立ってきて、握っていた鞄でこのエスパーの頭を殴り飛ばした。
さすがに、離れてくれて、はぁ! と息を吐いた。
「……んっの、ふっざけんなよお前!! お前なんて助けるんじゃなかったクソ野郎が!!」
そう言うと俺は振り返りもせずに自宅へと駆けだした。
ガイドの同意も得ずに粘膜接触してくるなんて、信じられない。
本当に、エスパーは自己本位で大嫌いだ。
あぁ、良い事したと思ったのに。エスパーなんてやっぱり助けるんじゃなかった。
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