1 / 1
コンビニ怪談
しおりを挟む「いらっしゃいませー」平坦な、いかにもマニュアルです、というような挨拶が響く。男は特に気にも止めず、まっすぐドリンク売り場へ向かった。
扉を開け、目当てのコーヒーが…無い、のぞき込むと、視線が合った。一瞬ドキリとなる。補充作業中の店員だった。店員は淡々と作業している。諦めて、別のペットボトルコーヒーを手に取った。
レジに向かう。
「いらっしゃいませ」笑顔の女性店員は、「ポイントカードはお持ちですか?」と問うてくる。面倒くさいので、首を横に振る。と、突然、有線の音楽が途切れた。続いて、キキーっ!ガッシャン!!という音が響き渡った。
男はぎょっとなったが、目の前の店員は淡々と「149円です」と告げてくる。その平静さに、自分が幻聴を聞いたのかと思った。音楽は普通に戻っている。他のお客達も…涼しい顔をしている、ように、男には見えた。
「お客様?どうかなさいましたか?」店員が不思議そうな顔で聞いてくる。
さっさと会計し、店を出た。が、後ろ髪を引かれるような気がして、振り返った。どこにでもある、ごくごく普通のコンビニ…だった。男は頭を振り、車へ戻った。―会社に帰ろう。
※※※※
「今日のお客は、まぁ、見事にフリーズしてたわぁ」と、あの時、男を接客した女性店員は煙草の煙を吐きながら言った。
「常連さん達は微動だにしないのにね」くっくっく、と笑う。「見たかったなー、俺、冷蔵庫にいたからなぁ」と、あの時、ドリンクを補充していた男性店員が言った「面白いよな、初見っていうか、初聞きの反応は」
バックヤードでの会話である。このコンビニでは、毎日きっかり、午後1時17分になると、有線の音楽が途切れ、車の激しいクラッシュ音が響く。最初はひどく驚く。怖がる。が、音が聞こえる以外は、特に害は起きない。という事は…。
「慣れって怖いわよね」と、煙草を灰皿で揉み消しながら、女性店員が言う。彼女はここに勤めて5年になる。「毎日、聞いてたら、あぁまたか、位よね」
男性店員がうなづく。「本当っすね」彼は3年目だ。「最初はまじ怖かったですけど、なぁんにも起きないっすからね」カラカラと笑う。
「おーい、そろそろ戻ってくれー」店長が呼んでいる。「やばっ」と呟き、二人の店員はバタバタと店内に戻った。
※※※※
このコンビニで起こる、怪現象をしかし、誰も追及しない。あるいは人間とはそういう生き物なのかもしれない。
1
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった
海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····?
友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))
義務ですもの。
あんど もあ
ファンタジー
貴族令嬢の義務として親の決めた相手に嫁いだが、夫には愛する人がいた。夫にないがしろにされても、妻として母として嫁としての義務を果たして誠実に生きたヒロインの掴んだ、ちょっと歪んだ幸せとは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
バイトが楽しいかも。