詩・『昏睡』

桐原まどか

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昏睡

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世界は今、揺れている。
ユラユラと。

赤子を眠らす、揺りかごのようだ。
照らすのは月明かり。
無謬(むびゅう)の輝き。

眼を焼かれた人々は彷徨う。焦がれるは光。
焦がれるは久遠の眩さ。

―この手は届かぬ。

咆哮に喉を裂き、遂には膝をつく。抗いもここまでか。

―ならば、この身を裂こう。
鈍色の鋒(きっさき)が滑る、舞い散るは紅蓮の花弁。

世界は今、揺れている。
微睡みに揺れている。

声もなく、斃(たお)れていく。

―やがて、朝が来る。
目覚めぬ世界にも、等しく
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