僻見

桐原まどか

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僻見

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とあるコンサート会場。
男はこのような場に不慣れとみえ、どこか挙動不審だった。
―とりあえず、まわりに合わせときゃ、大丈夫だろう。
上司の娘が出るピアノコンクールの、チケットが醜い争いの末、男に押し付けられた。
男は正直、迷惑だったが、渋々来たのだった。
会場に入り、席に座る。
やがて、司会者が出てきて恭しく、挨拶をした「本日はお忙しいなか、お運び下さり、まことにありがとうございます。出場者達の素晴らしい演奏を、どうぞご堪能下さい」
司会者が袖に消え、出場者が現れる。
演奏が始まる。
正直、ヘタだな、と思った。が。演奏終わり、周囲からは割れんばかりの拍手が響いた。内心、おべっかか?と思いつつ、男も手を叩いた。―まわりに合わせときゃ、いい。
※※※※
やっとこさ、上司の娘の番がきた。
―今までのはひどかった。
既に閉口気味だったが、やけっぱちで聞く、と…。
―なんだ?上手いじゃないか?
今までの出場者達とは違う。
演奏が終了した。
男はいの一番に大きく拍手をした。まわりも…。
―誰も、拍手をしない。
男の拍手のみがホールに響き渡った。
上司の娘は、はっきりわかる位、青ざめている。
そう、男は気付いていなかった。よくよく舞台を見ていれば、防げた悲劇だったのだが…。
男は無知だった。『拍手』は<ブーイング>の意味だったのだ。
上司がやってきた。
「…○○君…君の事はよーくわかったよ」
男はおろおろと言い訳しようとしたが駄目だった。
※※※※
物事の意味は、時に移ろい、変わる。皆さんは大丈夫ですか?
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