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隠居生活はじめます。

3.聖女服は譲れない

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『よぉし!肉体はもう用意してあるから…次は服!』

   パンっ!とナルちゃんが手を叩くと地面には様々なデザインが描かれたデザイン画が現れた。もちろん、目の前にはナルちゃんのイチオシであろう前前世の私の聖女服のデザインが置かれている。

『セイラ、どれがいい?わたし的にはこれかな~?』

   私の感は当たっていたようだ。ナルちゃんは、前前世に来ていた聖女服をおすすめしてきた。だけどもう、私は聖女になるつもりは無い。目指せ隠居!なのだ。

(んーー、私、聖女に復帰する訳でもなく、なりたい訳でもないからなぁ…、、別の服がいいかも?)

『うーー、わかった。なら、これ!』

   次にナルちゃんがオススメしたのは、私が修行時代に着ていたシスター服。もちろん、私はシスターに復帰する訳でもなく、なりたい訳でもない。丁寧に断った。

『ん~~~!!なら、これ!!』

(これはちょっと…一人で着るのには大変そうだし…動きずらそう?)

『えぇ!!ドレスだよ!?本当にいいの?セイラに似合うドレスなのに!??』

(うん、普通の…町娘が着そうな服とか…冒険者が着そうな動きやすい服でいいよ?)

『可愛いのに……』

(ナルちゃん?)

『う~~、わかった』

   ナルちゃんは、聖女服、シスター服、ドレスにまだ未練があるようでチラチラ見ながらも町娘が着る服に納得してくれた。もちろん、下着は後で創造魔法というナルちゃんが特別にくれた固有スキルで地球産の物を作るつもりだ。

(これくらいかな?)

『んーん、あとはどこにセイラを送るか決めないと…』

(あ、そっか!ナルちゃんはどこがオススメ?)

『ん~~、一番は聖女時代のセイラちゃんが暮らしてたネテル神聖国だけど……』

(肉体が聖女の体なら、騒がれるわね…んーー、人がいなくて誰も寄り付かないところはない?)

『あ!それなら、エカルデ大森林共和国とアフドゥル帝国の間に位置する広大なユフェールの森はどう?』

(あの森ね……確かに滅多に人は来ないわね…それに国がある森の反対の端は海に面してる…うん、そこがいいわ!)

『わかった!!家は……?』

(それは、ナルちゃんから貰った創造魔法で作れないかしら?)

『んーん!作れるよ!あのスキルは、魔法、物、食を想像すれば作れるから!』

(そうなのね!教えてくれてありがとう)

『んーん!でも、異界の…地球産の物は少し魔力が多く取られちゃうかも…あ、でもセイラなら大丈夫だね!』

(ええ!)

『ステータス、肉体、服、場所…あとはこれ以上決めることは無いかな?んーーー』

   ナルちゃんは両腕を組んでんーんー唸るが可愛いとしか思えない。そうだ!向こうに着いたら家とナルちゃんの人形を作ろう!ピンクのサラサラ髪の毛、クリクリおめめのレモンイエローの瞳、くっきり二重、ふっくらほっぺ……絶対可愛い!

『あっ!!!』

(ど、どうしたの??)

『そうだそうだ!!今のセピナルについてセイラにちゃんと教えないと……でも、そろそろ時間が。。』

(そうだね、今のセピナルについては知らないと後々大変なことになりそうだから知りたいわ…。)

『うぅ、仕方ない!«情報さん»!このスキルあげるから詳しいことはこの子に聞いて!!』

(えっ、えぇ。ナルちゃんどうしたの?)

『ごめんね、セイラ。そろそろセイラを下界に送らないといけないの!』

(まだ…ナルちゃんと話したいなぁ、、、)

『う~~~!!それは私もだもん!でも、これ以上神界にセイラの魂を留めたらセイラの魂の容量がオーバーして消滅しちゃうの!』
   
(そうなの?)

『うん!空き容量にスキル沢山詰め込んじゃったから……でも、あとから詰め込むと絶対スキル詰め込めないと思ったし…んーーーー神界にいるには魂の空き容量が問題なんて……誰が決めたのよっ!!!』

(そっか…。ナルちゃん、ありがとう)

『んーんー!私こそごめんね…ありがとう!それじゃあ、セイラ!送るよ!準備はいい?』

(ええ!)

   セピナルに送られるのを待っているとナルちゃんがギューっと抱きしめてきた。私もナルちゃんをギューっと抱きしめ返す。
   
『……たまにでいいから…祈りのスキルで…連絡ちょうだい?』

(もちろん!)

『死なないでね?』

(えぇ、ナルちゃんが色んなスキルをくれたから死なないわ)

『うん……セイラ、行ってらっしゃい…ぐすっ』

(うふふ、もう、泣かないで…)

   涙ぐむナルちゃんをよしよし撫でながら今度は私からギューっと抱きしめる。

(ナルちゃん、私、今世は自由にのんびり生きるわ!見守っていてくれる?)

『うん!もちろん!』

(行ってくるね!ナルちゃん)

『行ってらっしゃい!!セイラ!!!』
   
   淡い光が私を包み始め、私の意識も薄れていく。それでも私は最後まで最愛の親友であり、この世界の神であるセピナルをこの目に焼き付けようと見ていた。次にナルちゃんに会えるのは、きっと私が死んだ時だから。

   行ってきます。ナルちゃん……

    この日私は、前前世 大聖女として生きたセピナルに転生した。
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