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私の中の鬼が顔を出すまでは。
しおりを挟むきっと私は私。
鏡に写るのは、双子によく似た私の姿。
双子に促され部屋の鏡を覗き込む。
ほらね、やっぱり私は私だわ。
黒い髪の毛と白い肌をした理沙という人間の姿。
私を驚かそうと双子が考えた悪戯ね。
紅茶を入れるわ。
安堵した私はキッチンへと向かう。
いつの間に帰ってきたのか、リビングのソファで昌彦がうたた寝している。
その姿を双子が覗き込む。
ジッと、まるで獲物を狙う獣のように。
嫌だわ、私は何を考えているのかしら。
双子と昌彦から目を逸らしキッチンに立つ。
私は人間よ。
何故かこの言葉を何回も何回も心の中で呟いている。
ああ、これはまだ夢の続き。
でも、何故だろう。
喉の渇きが増していく。
(赤い赤い水が飲みたいの。)
お姉ちゃん。
僕たちはずっと待っていたんだよ。
何を待っているの?と双子を振り返りながら問うてみた。
そこには知っている綺麗な双子の姿はなかった。
そこにいるのは鬼。
ごつごつとした人ではない貌、鋭い眼が私を見ていた。
でも、恐ろしいとは思わなかった。
これが双子の本来の姿。
私は?
パパとママは?
お姉ちゃんは、気付かないふりをしてきたのよ。
鬼の貌をして妹が言った。
毎日、毎日、美味しいご馳走をパパが獲ってきてくれたでしょう?
ああ、食卓を囲むのは鬼。
あのご馳走は‥‥。
信じないわ。
信じたくない。
(でも、この渇きが止まらない。)
ソファにいるのは獲物。
喉を潤す為のご馳走。
部屋の中を飛び上がった私はリビングへと移動した。
もう何も考えられない。
ただ、喰らいたい。
その欲求だけが残っていた。
眠っている昌彦の喉元に牙を立てる。
気付いたのね、昌彦の口から呻きとも悲鳴とも取れぬ声が漏れたわ。
でもそんなことはお構いなしに
私は欲望のまま、今度は昌彦の腹に爪を立てた。
腹の肉を突き破り、内臓を取り出す。
赤い赤い塊を手に取った。
ああ、これを待っていた。
嬉々として。
嬉々として。
私は全てを喰らい尽くすだろう。
その骨までも。
夢ならいいのに。
赤い赤い塊に
喉を鳴らし
赤い赤い水で
喉を潤す。
もう誰にも止められない。
愛しい。
喰らいたい。
悲しい。
胸が苦しい。
気付かなければ。
人でいられたのに。
私の中の鬼が顔を出すまでは。
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