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アルシア編
鎖につながれて
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僕とゼンジロウは縄につながれたまま城塞の中に連れていかれた、町並みは立派だったけど、あわただしく道を行く兵士たち、街を歩く普通の人たちはどこか不安な様子を隠せない様子だった。そういえば、僕が今よりずっと小さい時……傭兵になる前もよく見た光景だな……
僕たちは町の中のそれなりに大きい石造りの建物に連れられると、地下の急ごしらえの牢屋のような部屋に連れていかれて両手を鎖でつながれてしまった。両手を鎖でつながれるのなんて、なんだか懐かしいな。
「ここで待て、怪しい動きをすると即刻処刑する」
そういうと偉そうな兵士は出て行って、部屋には僕とゼンジロウだけになった。
ドアは鉄でできていて小さな格子窓があり、兵士が監視として立っているのが見える。
「すまねぇな、アルバ。まさかここまでひどい扱いを受けるとは思ってなかった……」
ゼンジロウはすっかり元気をなくした様子で座り込んでいる。
「ううん、慣れてるから平気だよ」
「慣れてるって、お前……」
ゼンジロウは驚いたような顔をすると、頭をおとした
「僕、傭兵になる前は奴隷だったから、ママと一緒にね」
「いろいろあって、ママは死んじゃって、僕は傭兵になったんだ」
ゼンジロウは座り込んで頭を落としたまま何も言わなかった。
何か変なこと言っちゃったかな……僕が元は奴隷だって言わなかったほうがよかったのかな……
ゼンジロウはずっと黙ったままだった。なんだか気まずくなってくる。薄暗い部屋の中に響くのは汚い虫の羽音と、それがはい回る耳障りな音だけだった。
「俺の故郷はさ、俺の生まれる前から戦争だらけでよ、この国よりずっとずっと小さいのに同じ国の人間同士で殺し合いばっかりしててよ」
ゼンジロウは突然小さな声で話し出した。
「前にも言ったろ?俺は何もかもが嫌になって、主も家族も全部投げ出して、遠い国で平和に暮らそうって思って逃げ出したんだけどよ」
「世の中ってのはどこも変わらんな……」
またゼンジロウが生きる気力なくしかけてる……僕たちは生きてるのに。何をしても、何をされても生きていれば絶対いいことがあるのに、だってママもそう言ってたし、何より僕も絶対にそう思う。
あの鎖につながれて、何にもいいことがなくて、朝から晩までボロボロになるまで働いた、嫌な思い出はあるけど、それに耐えて生きていから強くなれたし、僕とママを散々虐めてたやつらも皆殺すことができたんだ。美味しいものだって食べられるし美味しいお酒も飲める、楽しいお芝居も見られるんだから。
「ゼンジロウ、僕たち生きてるんだよ。これから楽しいこと、きっといっぱいあるよ。邪魔する奴は皆殺せばいいんだよ、だから……大丈夫だよ、きっと。元気をだして……」
僕はやっぱり今まで会った人たちの中でゼンジロウのことはとても好きかもしれない。理由はわかんないけど。
今までだったら生きたくないって人は、それはもうしょうがないと思ってた。
ゼンジロウは顔を上げると悲しそうな顔をしながら小さく笑った
「ありがとよ、アルバ。お前は強いな……」
そういうとゼンジロウは僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「ゼンジロウよりはね」
ゼンジロウは僕の頭をコツンと叩くと少し声を出して笑っていた。
僕たちは町の中のそれなりに大きい石造りの建物に連れられると、地下の急ごしらえの牢屋のような部屋に連れていかれて両手を鎖でつながれてしまった。両手を鎖でつながれるのなんて、なんだか懐かしいな。
「ここで待て、怪しい動きをすると即刻処刑する」
そういうと偉そうな兵士は出て行って、部屋には僕とゼンジロウだけになった。
ドアは鉄でできていて小さな格子窓があり、兵士が監視として立っているのが見える。
「すまねぇな、アルバ。まさかここまでひどい扱いを受けるとは思ってなかった……」
ゼンジロウはすっかり元気をなくした様子で座り込んでいる。
「ううん、慣れてるから平気だよ」
「慣れてるって、お前……」
ゼンジロウは驚いたような顔をすると、頭をおとした
「僕、傭兵になる前は奴隷だったから、ママと一緒にね」
「いろいろあって、ママは死んじゃって、僕は傭兵になったんだ」
ゼンジロウは座り込んで頭を落としたまま何も言わなかった。
何か変なこと言っちゃったかな……僕が元は奴隷だって言わなかったほうがよかったのかな……
ゼンジロウはずっと黙ったままだった。なんだか気まずくなってくる。薄暗い部屋の中に響くのは汚い虫の羽音と、それがはい回る耳障りな音だけだった。
「俺の故郷はさ、俺の生まれる前から戦争だらけでよ、この国よりずっとずっと小さいのに同じ国の人間同士で殺し合いばっかりしててよ」
ゼンジロウは突然小さな声で話し出した。
「前にも言ったろ?俺は何もかもが嫌になって、主も家族も全部投げ出して、遠い国で平和に暮らそうって思って逃げ出したんだけどよ」
「世の中ってのはどこも変わらんな……」
またゼンジロウが生きる気力なくしかけてる……僕たちは生きてるのに。何をしても、何をされても生きていれば絶対いいことがあるのに、だってママもそう言ってたし、何より僕も絶対にそう思う。
あの鎖につながれて、何にもいいことがなくて、朝から晩までボロボロになるまで働いた、嫌な思い出はあるけど、それに耐えて生きていから強くなれたし、僕とママを散々虐めてたやつらも皆殺すことができたんだ。美味しいものだって食べられるし美味しいお酒も飲める、楽しいお芝居も見られるんだから。
「ゼンジロウ、僕たち生きてるんだよ。これから楽しいこと、きっといっぱいあるよ。邪魔する奴は皆殺せばいいんだよ、だから……大丈夫だよ、きっと。元気をだして……」
僕はやっぱり今まで会った人たちの中でゼンジロウのことはとても好きかもしれない。理由はわかんないけど。
今までだったら生きたくないって人は、それはもうしょうがないと思ってた。
ゼンジロウは顔を上げると悲しそうな顔をしながら小さく笑った
「ありがとよ、アルバ。お前は強いな……」
そういうとゼンジロウは僕の頭をくしゃくしゃと撫でた。
「ゼンジロウよりはね」
ゼンジロウは僕の頭をコツンと叩くと少し声を出して笑っていた。
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