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アルシア編
腕試し その4 ゼンジロウの場合
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僕が殺したさっきの人の周囲の兵士が僕を睨みつけたり、不快な表情で僕を見ている。だから人殺しは嫌なんだよね……でも、しょうがないよね、こうしないと生きていけないんだから。
練兵場の広場がしんと静まり返った中で、将軍さんが口を開いた。
「遺体を片付けたまえ。さて、アルバ君は合格だ。次はゼンジロウ氏だが……やるかね?」
そういうと将軍さんはゼンジロウのほうを向いた。ゼンジロウは無表情だったけど、目つきは悪くない、本気になったってことなのかな?そういえばゼンジロウの戦い方ってどんなのだろう。なんだか興味あるな。
「やるさ、だがその前に二つ頼みがある。まず一つ目に、俺は素手でもいいか?」
え?素手?どういう意味だろう。もしかしてゼンジロウ、怖気づいて頭おかしくなっちゃったのかな……?将軍は不思議そうな顔をしたけど黙った頷いた。
「構わんよ。ただし相手の条件はアルバ君と変わらんがね。武装した兵士と戦ってもらう。少し興味があるんだが理由を聞いてもいいかね?」
「俺の剣はあんたらが持ってったろ?使い慣れないこの国の剣、しかも木剣なら無い方がましだ。で、二つ目だが、仮に相手を殺しても文句は言うなよ、正直手加減できる気がしない。それとアルバが相手を殺しちまったことについても不問にしてもらう」
ゼンジロウは真剣に答えたつもりだろうけど、周りの兵士たちはそうは受け取らなかったみたいだった。
「ふざけやがって……!!そのガキもろともぶっ殺してやる!!」
一人の兵士が大声でそう叫んだ瞬間、それにつづけて堰を切ったかのように罵詈雑言が飛んでくる。文句があるならさっさと僕たちを殺しにくればいいのに。どこにでもいるんだよね、大声出して文句ばっかり言って、自分ひとりじゃ何もしないし出来ない奴らが。
少なくとも僕が今までいた傭兵団だったら文句があるなら口を動かす前に剣を抜いて殺しにかかる人ばっかりだったから、なんだか気持ち悪いな……
「黙らんか!!」
突然、将軍の怒声があたりに広がり、空気がビリビリと波打つ気配がした。おじいちゃんなのにこんな声出せるんだ……普段は将軍じゃないって言ってたけど、もしかして嘘だったのかな?強い人は強さを隠すのが上手いからね。
その大声を聞いてさっきまで犬のように吠えていた周囲の兵士たちも借りてきた猫のように黙ってしまった。この人たちほんとにイスラーン王国?の兵士なのかな?前のガルガシア平原って所で一緒に戦った人たちはみんな結構強い人ばっかりだったけどな……
「失礼、ゼンジロウ氏とアルバ君。これが今のアルシアの現状なのだよ、最低限の兵士しか残されていないうえにこの程度、おまけに問題は山積みだ。少しは戦力を欲している理由もわかったかな?」
将軍さんは少しため息をつくとつづけた。
「話を先ほどのゼンジロウ氏の質問に戻そう。アルバ君が先ほどの試合で相手を殺めたことは、君の試合と関係なく当然不問だ。武装した兵士が傭兵とは言え木剣を持った少女に殺められたことを罪に問うなど、恥の上塗りだ」
「そしてゼンジロウ氏が相手を殺めた場合だが、これも不問としよう。ただし譲歩するのだから、条件を追加する。君には降参は認めない。勝負に負けたら死んでもらう」
将軍さんはそう言ってゼンジロウを見たけど、相変わらずゼンジロウは無表情のまま答える。
「いいぜ、どの道おまけの人生だからな。今日は死ぬにはいい日かもしれん」
そういってゼンジロウはふっと笑った。
「よろしい、では相手を連れてくるから少し待っていたまえ」
そうして将軍さんはまた数名の兵士を連れてどこかに行ってしまった。ゼンジロウ、本当に大丈夫かなぁ……?いくらなんでも素手って、僕には無理かも。素手で戦ったことはさすがないないからゼンジロウがどう戦うのか全然想像がつかないな。
将軍さんがいなくなった広場で、僕とゼンジロウを周囲の兵士が複雑な表情で見つめているけど、誰一人手出しはおろか文句ひとつでなかった。じっとりした視線が気持ち悪い。
「ねぇねぇ、ゼンジロウ。素手で勝てるの?」
僕がゼンジロウに近づいてそう聞くとゼンジロウは僕の方を見ずに遠くを見ながら答えた。
「まぁそういう技は故郷で身に着けてるよ。ただ……通用しなかったらここでお別れだな、アルバ」
ゼンジロウは僕の頭をなでると、僕の目は見ずに少し微笑んでいた。
練兵場の広場がしんと静まり返った中で、将軍さんが口を開いた。
「遺体を片付けたまえ。さて、アルバ君は合格だ。次はゼンジロウ氏だが……やるかね?」
そういうと将軍さんはゼンジロウのほうを向いた。ゼンジロウは無表情だったけど、目つきは悪くない、本気になったってことなのかな?そういえばゼンジロウの戦い方ってどんなのだろう。なんだか興味あるな。
「やるさ、だがその前に二つ頼みがある。まず一つ目に、俺は素手でもいいか?」
え?素手?どういう意味だろう。もしかしてゼンジロウ、怖気づいて頭おかしくなっちゃったのかな……?将軍は不思議そうな顔をしたけど黙った頷いた。
「構わんよ。ただし相手の条件はアルバ君と変わらんがね。武装した兵士と戦ってもらう。少し興味があるんだが理由を聞いてもいいかね?」
「俺の剣はあんたらが持ってったろ?使い慣れないこの国の剣、しかも木剣なら無い方がましだ。で、二つ目だが、仮に相手を殺しても文句は言うなよ、正直手加減できる気がしない。それとアルバが相手を殺しちまったことについても不問にしてもらう」
ゼンジロウは真剣に答えたつもりだろうけど、周りの兵士たちはそうは受け取らなかったみたいだった。
「ふざけやがって……!!そのガキもろともぶっ殺してやる!!」
一人の兵士が大声でそう叫んだ瞬間、それにつづけて堰を切ったかのように罵詈雑言が飛んでくる。文句があるならさっさと僕たちを殺しにくればいいのに。どこにでもいるんだよね、大声出して文句ばっかり言って、自分ひとりじゃ何もしないし出来ない奴らが。
少なくとも僕が今までいた傭兵団だったら文句があるなら口を動かす前に剣を抜いて殺しにかかる人ばっかりだったから、なんだか気持ち悪いな……
「黙らんか!!」
突然、将軍の怒声があたりに広がり、空気がビリビリと波打つ気配がした。おじいちゃんなのにこんな声出せるんだ……普段は将軍じゃないって言ってたけど、もしかして嘘だったのかな?強い人は強さを隠すのが上手いからね。
その大声を聞いてさっきまで犬のように吠えていた周囲の兵士たちも借りてきた猫のように黙ってしまった。この人たちほんとにイスラーン王国?の兵士なのかな?前のガルガシア平原って所で一緒に戦った人たちはみんな結構強い人ばっかりだったけどな……
「失礼、ゼンジロウ氏とアルバ君。これが今のアルシアの現状なのだよ、最低限の兵士しか残されていないうえにこの程度、おまけに問題は山積みだ。少しは戦力を欲している理由もわかったかな?」
将軍さんは少しため息をつくとつづけた。
「話を先ほどのゼンジロウ氏の質問に戻そう。アルバ君が先ほどの試合で相手を殺めたことは、君の試合と関係なく当然不問だ。武装した兵士が傭兵とは言え木剣を持った少女に殺められたことを罪に問うなど、恥の上塗りだ」
「そしてゼンジロウ氏が相手を殺めた場合だが、これも不問としよう。ただし譲歩するのだから、条件を追加する。君には降参は認めない。勝負に負けたら死んでもらう」
将軍さんはそう言ってゼンジロウを見たけど、相変わらずゼンジロウは無表情のまま答える。
「いいぜ、どの道おまけの人生だからな。今日は死ぬにはいい日かもしれん」
そういってゼンジロウはふっと笑った。
「よろしい、では相手を連れてくるから少し待っていたまえ」
そうして将軍さんはまた数名の兵士を連れてどこかに行ってしまった。ゼンジロウ、本当に大丈夫かなぁ……?いくらなんでも素手って、僕には無理かも。素手で戦ったことはさすがないないからゼンジロウがどう戦うのか全然想像がつかないな。
将軍さんがいなくなった広場で、僕とゼンジロウを周囲の兵士が複雑な表情で見つめているけど、誰一人手出しはおろか文句ひとつでなかった。じっとりした視線が気持ち悪い。
「ねぇねぇ、ゼンジロウ。素手で勝てるの?」
僕がゼンジロウに近づいてそう聞くとゼンジロウは僕の方を見ずに遠くを見ながら答えた。
「まぁそういう技は故郷で身に着けてるよ。ただ……通用しなかったらここでお別れだな、アルバ」
ゼンジロウは僕の頭をなでると、僕の目は見ずに少し微笑んでいた。
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