毒殺されそうになりました

夜桜

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第2話 諦めない心

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 意識が朦朧もうろうとする。
 少しかじっただけとはいえ、猛毒。
 もうダメ…………。

 倒れて……わたしはきっと死んだ。
 冷たくて、辛くて……絶望しかない。


 これが『死』なの?


『ルーナ……そこまでわたしを恨んでいたの……』


 殺したいほど憎んでいただなんて……。
 暗闇の中でルーナ声が聞こえた気がした。


『ざまぁみなさい、お姉様……! あんたなんか大っ嫌い! ……これでアレクは私のモノよ。あははは……!』


 声が遠ざかっていく。
 これで……わたしは終わりなのね。



『………………』



 優しい声が響いた気がした。

 わたしの名を呼ぶ声。


『イリス……。イリス、君は強い女性だね。諦めない心をもっている』


 ――あぁ、そうだ。

 これは少し前の記憶。
 お父様の反対を押し切って、城伯であるアレクに会いに行くといって……わたしは実家を飛び出したんだ。

 はじめて会ったのにアレクは歓迎してくれて、手を優しく握ってくれた。


『どうしても、お礼が言いたくて』
『お礼?』
『はい。あなたがわたしの母の墓前に花を手向けていたのを見ました』

『……生前、よくしてもらっていたんだ。でも、レオンハルト伯の逆鱗に触れてしまったようでね。君と会うことも叶わなくなった』


 お父様は、アレクを毛嫌いしているようで、よく思っていなかった。彼は高名な貴族であり、医者なのに……会わせてくれなかった。
 それでも、わたしは彼にお礼が言いたかった。


『お父様が許さなくても、わたしが許します。ありがとう』
『君にそう言ってもらえて良かった。心が救われたよ』


 それから、わたしとアレクは婚約を――。


【お姉様がいけないのよ。婚約破棄しないから……!】


 突如、その声が幸せを引き裂く。

 ルーナ……!


 猛毒が全身をむしばんでいくような死を感じた。……もう、アレクには二度と会えないのね。


『でも……でも、諦めたくない』

『そうだ、イリス。諦めてはだめだ』

「……! この声は……」


 土の香り。
 乾燥した土の感触。
 ぱらぱらと落ちていく砂と埃。
 暖かい風が頬を撫でた。

 ……わたしは、どこにいるの……?


「よかった。間に合った」
「…………え」
「君は土の中に埋められていたんだ。誰の仕業か分からないけどね、助かって……よかった」

 アレクの涙がわたしの頬を伝っていく。
 そっか……わたし、まだ生きているんだ。

 彼にまた会えてよかった。
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