伯爵様へ処刑台のプレゼント

夜桜

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婚約破棄

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「婚約破棄だ、ユリン!!」
「……本当に良いのですね?」
「もういい、お前の顔など見たくないッ!! お前より私はマーガレットを愛しているんだ」

 やっぱりそうだったのね。
 ここ半年間、態度がおかしいと思っていた。

 だから、わたしは伯爵様が許せなくて……ずっと計画を練っていた。

 裏切られたら処刑台送りにすると。

「もう一度聞きます。本当に婚約破棄するのですね?」
「しつこいぞ、ユリン!! また暴力を振るわれたいか!!」

 伯爵様は、最近わたしを殴る蹴るの暴行を繰り返していた。でも、それでも伯爵様を見捨てずに耐え抜いていた。

 けど、もう愛は……なかった。

「もういいです。伯爵様、死んでいただきます」
「なにを言っている、ユリン! お前にそんな権限は――」


「……フフフ、伯爵様、まだ気づかないのですか」

「なに……!?」


「あなたもう処刑台に固定されているんです。あとはギロチンがあなたの首を落とす」

「な……そんな馬鹿な!! ひっ、私はなぜ処刑台に!?」

「気づくのが遅すぎです。やはり、意識を混濁させる薬の効き目は抜群でしたね」
「ユリン、お前!!」
「では、さようなら……伯爵様」

「ユリン、ユリン!! ウソだろ!! た、助けてくれ!!」
「もう助けられません。わたしの人生をむちゃくちゃにしたのですからね!!」


 伯爵様は処刑された。
 彼はそれほどの罪を犯したのだ。


「……終わったのかい、ユリン」
「はい、公爵様」
「では、僕と幸せになろう」
「いいのですか。わたしは人殺しですよ?」

「いや問題はないよ。この国は暴力を許さない。それに加えて婚約破棄とは重罪だ」


 公爵様はそう理解してくださった。
 そうね、この処刑台も彼がセットしてくれた。もう頼れるのは公爵様だけ。


「ありがとうございます、公爵様」
「では行こう、ユリン」


 こうして、わたしは新たな人生を歩み始めた。
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