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滅びの葬歌
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「……リリス、君は美しいだけではない……歌が最高だ。まさに天使の歌声だろう」
「ありがとうございます、伯爵様」
教会で披露していた所、偶然にも彼の耳に入ったらしくドット伯爵はわたくしの歌を聴いて感銘を受けたとか。その後、声を掛けられ、わたくしも彼が気になってしまった。
「それでどうだろうか、この僕と付き合ってくれないかい。もちろん、生活に不便はさせないし、最高の毎日を送らせてあげるよ」
「本当ですか……!」
その時は人生で最高の幸せを感じていた。今まで誰にも見向きもされなかった自分が伯爵様に気に入られた。それが嬉しくてやっと普通の人生を送れるのかなと思っていた。
――三週間後。
「……呼び出して済まないな、リリス」
「どうされたのですか?」
「うむ、悪いんだが……三日前に結んだ婚約は破棄してくれ」
「へ……」
突然の婚約破棄にわたくしは耳を疑った。そんな……あれからお屋敷に住むようになって、毎日が幸せだった。
三日前には婚約を結んだのに……なのに。
「驚くのも無理はないだろう。だがな、リリス……君に飽きてしまったんだ」
「あ、飽きた?」
「ああ、単に飽きたんだよ。よく考えれば少し歌が上手いからって、お前如き女と結婚などと人生の汚点にしかならんと思ってな」
「……ひ、酷いですよ。そんな言い方しなくてもいいじゃないですか!」
「事実は事実だ。さあ、もういいだろう……そのヘタクソな歌と共に消えてくれ」
……これが彼の本音なのね。
確かにここ最近は歌を聴いてくれなくなっていたし、表情もつまらなさそうだった。……そっか、わたくしの歌はもういいと言うのね。
「……分かりました。わたくしは出ていきます。でも、最後にあなたに別れの歌を贈ります」
実は別れの歌ではない。
これは教会から決して歌ってはならないと言われた『滅びの葬歌』だ。これを聴いた者は、不幸のどん底に叩き落とされるという、まさに滅びの歌。
「別れの歌だぁ?」
「~~♪ ~~~♪ ~~♪ ~~~~~♪」
「……なんだか不気味な歌だな。まあいい、それくらいは餞別として受け取ってやろう。じゃあな、リリス。精々、元気でやるがいいさ! あと、その耳障りな歌だけどな……ヘタクソだったぞ、ギャハハハハハハ……!!!」
さようなら、伯爵。
◆
――三日後。
ドット伯爵は膨大な借金を背負っていた。お屋敷は差し押さえられ、雇っていたメイドは逃げ出し、ペットさえも逃げ出した。
さらに突然の爵位はく奪。路頭に迷い、わたくしを頼ろうと家へ来たようだけど、その道中で不良に絡まられボコボコにされたらしい。金目の物も全て奪われたみたい。
不運は更に続く。
無一文の彼はボロ雑巾のようにズタボロになりつつも、わたくしの玄関先まで来た。でも、番犬が彼の足を噛み――結局、会う事は叶わず。不審者として逮捕された。
結果、ドット伯爵は不法侵入で牢屋へ放り込まれた。
しかも、いくつもの容疑が掛けられてしまい三つの罪で起訴された。重い罪を背負っているようだ――。
「……わたくしの歌を貶し、捨てた罰です」
今日も、ドット伯爵に『滅びの葬歌』を贈り続ける。
「ありがとうございます、伯爵様」
教会で披露していた所、偶然にも彼の耳に入ったらしくドット伯爵はわたくしの歌を聴いて感銘を受けたとか。その後、声を掛けられ、わたくしも彼が気になってしまった。
「それでどうだろうか、この僕と付き合ってくれないかい。もちろん、生活に不便はさせないし、最高の毎日を送らせてあげるよ」
「本当ですか……!」
その時は人生で最高の幸せを感じていた。今まで誰にも見向きもされなかった自分が伯爵様に気に入られた。それが嬉しくてやっと普通の人生を送れるのかなと思っていた。
――三週間後。
「……呼び出して済まないな、リリス」
「どうされたのですか?」
「うむ、悪いんだが……三日前に結んだ婚約は破棄してくれ」
「へ……」
突然の婚約破棄にわたくしは耳を疑った。そんな……あれからお屋敷に住むようになって、毎日が幸せだった。
三日前には婚約を結んだのに……なのに。
「驚くのも無理はないだろう。だがな、リリス……君に飽きてしまったんだ」
「あ、飽きた?」
「ああ、単に飽きたんだよ。よく考えれば少し歌が上手いからって、お前如き女と結婚などと人生の汚点にしかならんと思ってな」
「……ひ、酷いですよ。そんな言い方しなくてもいいじゃないですか!」
「事実は事実だ。さあ、もういいだろう……そのヘタクソな歌と共に消えてくれ」
……これが彼の本音なのね。
確かにここ最近は歌を聴いてくれなくなっていたし、表情もつまらなさそうだった。……そっか、わたくしの歌はもういいと言うのね。
「……分かりました。わたくしは出ていきます。でも、最後にあなたに別れの歌を贈ります」
実は別れの歌ではない。
これは教会から決して歌ってはならないと言われた『滅びの葬歌』だ。これを聴いた者は、不幸のどん底に叩き落とされるという、まさに滅びの歌。
「別れの歌だぁ?」
「~~♪ ~~~♪ ~~♪ ~~~~~♪」
「……なんだか不気味な歌だな。まあいい、それくらいは餞別として受け取ってやろう。じゃあな、リリス。精々、元気でやるがいいさ! あと、その耳障りな歌だけどな……ヘタクソだったぞ、ギャハハハハハハ……!!!」
さようなら、伯爵。
◆
――三日後。
ドット伯爵は膨大な借金を背負っていた。お屋敷は差し押さえられ、雇っていたメイドは逃げ出し、ペットさえも逃げ出した。
さらに突然の爵位はく奪。路頭に迷い、わたくしを頼ろうと家へ来たようだけど、その道中で不良に絡まられボコボコにされたらしい。金目の物も全て奪われたみたい。
不運は更に続く。
無一文の彼はボロ雑巾のようにズタボロになりつつも、わたくしの玄関先まで来た。でも、番犬が彼の足を噛み――結局、会う事は叶わず。不審者として逮捕された。
結果、ドット伯爵は不法侵入で牢屋へ放り込まれた。
しかも、いくつもの容疑が掛けられてしまい三つの罪で起訴された。重い罪を背負っているようだ――。
「……わたくしの歌を貶し、捨てた罰です」
今日も、ドット伯爵に『滅びの葬歌』を贈り続ける。
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