僕の家の永遠の家政夫

沙羅

文字の大きさ
3 / 3

03

しおりを挟む

 湊さんとこういう関係……恋人関係になったのは、少し前のことだった。自分も今年はもう20歳で、世間からすれば「大人」というレッテルを貼られる年齢だ。もう1人暮らしを始める人だっている年齢だということも知っている。だから、これ以上お世話になるのも申し訳ないと思い、家を出た方がいいのではないかという話を持ち出した。
 湊さんはそんな僕の提案を嫌がった。湊さんはみんなに愛されている癖に少し寂しがりなところがあって、2人での暮らしを知ってしまったからには、1人でする生活なんて考えられないと言った。そして、僕のことを「好きになってしまった」とも言った。
 僕は中学校までしか学校に行っていなくて、それまでにそういった経験もなかったから、「好き」という気持ちがどういうものなのか分からなかった。ドラマや小説ではよく描かれているし、たくさんインターネットも調べたけれど、あまりピンとこなかった。そうしてこう提案されたのだ。
「『家族兼恋人』って関係で生活をしてみよう。僕がたまに恋人にしかしないことをするから、それに対して『嫌だ』と奏斗が少しでも思ったら家族に戻る。そうじゃなかったら、そのまま受け入れて」
 あまりにも真剣な目をしていたものだから、その言葉にうなずいた。うなずいてしまってからは、今みたいな行為やその先の行為を湊さんとするようになった。今まで家族みたいに接してきたはずなのに、顔が綺麗すぎるせいか不思議と嫌悪感はなく、拒否をしないままにズルズルとこの関係性を続けてしまっている。

「ベッド行こう、奏斗」
 まだ髪も乾ききっていないのに、「もう耐えられない」というような欲情を目に浮かべながら湊さんが誘う。みんなに愛されている湊さんが、自分だけに見せるこの表情に、少しだけ優越感を感じる。

「やっ、あぁっ!!」
 湊さんは普段は優しいのに、こういう時だけはガツガツしている。前戯は時間をかけてくれるからありがたいのだけど、一度いれてしまうとタガが外れるらしかった。自分よりも大きいのに、一生懸命に自分を求める姿が可愛くて、頭をよしよしと撫でてやる。
 顔をあげた幸せそうな瞳が目に入って、ぎゅっと心臓がはねた。

 湊さんといると、「自分だけ」が嬉しい独占欲が湧くし、相手の全てを可愛いと思ってしまうバグが発生する。そして何より、相手の幸せそうな表情で、自分もあったかい気持ちになれる。

 ――あぁ、たぶんこれが「好き」なんだろうな。
 今日もそう思いながら、気絶するように眠った。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

何故よりにもよって恋愛ゲームの親友ルートに突入するのか

BL
平凡な学生だったはずの俺が転生したのは、恋愛ゲーム世界の“王子”という役割。 ……けれど、攻略対象の女の子たちは次々に幸せを見つけて旅立ち、 気づけば残されたのは――幼馴染みであり、忠誠を誓った騎士アレスだけだった。 「僕は、あなたを守ると決めたのです」 いつも優しく、忠実で、完璧すぎるその親友。 けれど次第に、その視線が“友人”のそれではないことに気づき始め――? 身分差? 常識? そんなものは、もうどうでもいい。 “王子”である俺は、彼に恋をした。 だからこそ、全部受け止める。たとえ、世界がどう言おうとも。 これは転生者としての使命を終え、“ただの一人の少年”として生きると決めた王子と、 彼だけを見つめ続けた騎士の、 世界でいちばん優しくて、少しだけ不器用な、じれじれ純愛ファンタジー。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

処理中です...