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3週目 [泡沫]
第27話
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甘くて、決定的に僕と拓海の関係性が変わった週末を経て、今日は月曜日。恋人という関係になった拓海と、初めて学校という場で会う日だった。
だから、僕は浮かれていたのだ。
もしかしたら、一緒に登校だってできるかもしれない。そう思って、拓海の家のインターホンを鳴らす。しかし、拓海はその音に反応をしなかった。
朝は弱いが、登校は早めにしている拓海のことだ。
これは寝ているというより、もう先に家を出ている可能性の方が高かった。
「なんだよ……せっかく早めに家出たのに」
と言っても、5分くらいの誤差ではあるが。
どちらかと言えば浮かれているのは拓海の方に見えたのに、登校すらも一緒にしてくれない恋人の行動にむっとなった。約束をしていなかった自分のことは棚に上げつつ、ぶつくさと文句を言ってみる。
ただ、今の浮かれた自分にはそんな些細な出来事は感情を乱すに至らず、学校に着くころにはもうすっかり機嫌は直っていた。
……のだが、なんとここでも拓海の態度は恋人として失格と言えるものだった。
まるでこれまでと変わらず、女の子たちに囲まれている拓海。僕が教室に入ったタイミングでこちらを見るくらいのことはしてくれるのかと思ったが、丸っきりの無視。
「え……?」
思わず声が出てしまうほどに、その光景は自分には衝撃的であった。
いや、たしかにこれまで距離を置いていた自分と急に仲良くなるのは、周りから見たらびっくりされるのかもしれない。
僕の前での拓海のキャラは全然違うものだから、教室の中で見せてしまうのには抵抗もあるのだろう。
そうは思うが。そう頭では理解できるが。
だからって、恋人に対してとっていい態度ではないんじゃないだろうか。
文句の1つでも言いにいってやりたい衝動に駆られるが、僕の方から拓海に声をかけるのはハードルが高い。声をかけるとして、なんて言ったらいいかも分からない。
本当は「なんで先に学校行っちゃうんだよ」「なんで挨拶もしてくれないんだよ」と言いたいところだが、拓海の周りには僕たちの会話を聞いている女の子たちがたくさん居る。
仕方なく、大人しく自分の席に座ることにした。
拗ねた気持ちで教科書などを机にしまっていると、今週気まずい別れ方をした彼女の声が頭上から降ってくる。
「おはよ、千秋くん」
「お、はよ」
明るくハキハキとした挨拶とは対照的に、動揺が消えないままの挨拶を返す。そうすれば、美穂ちゃんはケラケラと笑った。
「そんな気まずいって顔しないでよ。私はもう吹っ切れてるからさ」
彼女の明るさには、何度救われればいいんだろう。何も返せない自分を不甲斐なく思ったけれど、その優しさに甘えることにして視線を向けた。
「それより、距離あるのが気になっちゃって。あの後誤解は解けたんでしょ?」
どうやら彼女は、心配してくれていたみたいだ。
「あぁ……、僕にもいまいち分かんなくて。誤解は解けたと思うんだけど……学校だとやっぱり隠したいのかな。男同士だし」
「拓海くんがそんなこと気にするタイプには見えないけど……意外と繊細なのかな」
「いや、拓海は繊細だよ」
「えー。それは千秋くんの前で猫被ってるだけだと思う」
愚痴交じりの表層的な会話。誰かに対して言葉に発散できたというのは大きくて、どう拓海に自分の気持ちを伝えてやろうかと恨めしく思っていた気持ちが和らいでいく。
「振られはしたけど、私は千秋くんの味方だから。相談もなかなかしづらいだろうし、何かあったら話は聞くからね」
「ごめん……。心配してくれてありがとう、美穂ちゃん」
本当に自分にはもったいないくらいの良い子だったなと思う。それを言えば、拓海も自分にはもったいないくらいに何でもできる人だけど。
そのまま朝の時間は美穂ちゃんと小テストの勉強をしていると、急に割って入る影が現れた。
だから、僕は浮かれていたのだ。
もしかしたら、一緒に登校だってできるかもしれない。そう思って、拓海の家のインターホンを鳴らす。しかし、拓海はその音に反応をしなかった。
朝は弱いが、登校は早めにしている拓海のことだ。
これは寝ているというより、もう先に家を出ている可能性の方が高かった。
「なんだよ……せっかく早めに家出たのに」
と言っても、5分くらいの誤差ではあるが。
どちらかと言えば浮かれているのは拓海の方に見えたのに、登校すらも一緒にしてくれない恋人の行動にむっとなった。約束をしていなかった自分のことは棚に上げつつ、ぶつくさと文句を言ってみる。
ただ、今の浮かれた自分にはそんな些細な出来事は感情を乱すに至らず、学校に着くころにはもうすっかり機嫌は直っていた。
……のだが、なんとここでも拓海の態度は恋人として失格と言えるものだった。
まるでこれまでと変わらず、女の子たちに囲まれている拓海。僕が教室に入ったタイミングでこちらを見るくらいのことはしてくれるのかと思ったが、丸っきりの無視。
「え……?」
思わず声が出てしまうほどに、その光景は自分には衝撃的であった。
いや、たしかにこれまで距離を置いていた自分と急に仲良くなるのは、周りから見たらびっくりされるのかもしれない。
僕の前での拓海のキャラは全然違うものだから、教室の中で見せてしまうのには抵抗もあるのだろう。
そうは思うが。そう頭では理解できるが。
だからって、恋人に対してとっていい態度ではないんじゃないだろうか。
文句の1つでも言いにいってやりたい衝動に駆られるが、僕の方から拓海に声をかけるのはハードルが高い。声をかけるとして、なんて言ったらいいかも分からない。
本当は「なんで先に学校行っちゃうんだよ」「なんで挨拶もしてくれないんだよ」と言いたいところだが、拓海の周りには僕たちの会話を聞いている女の子たちがたくさん居る。
仕方なく、大人しく自分の席に座ることにした。
拗ねた気持ちで教科書などを机にしまっていると、今週気まずい別れ方をした彼女の声が頭上から降ってくる。
「おはよ、千秋くん」
「お、はよ」
明るくハキハキとした挨拶とは対照的に、動揺が消えないままの挨拶を返す。そうすれば、美穂ちゃんはケラケラと笑った。
「そんな気まずいって顔しないでよ。私はもう吹っ切れてるからさ」
彼女の明るさには、何度救われればいいんだろう。何も返せない自分を不甲斐なく思ったけれど、その優しさに甘えることにして視線を向けた。
「それより、距離あるのが気になっちゃって。あの後誤解は解けたんでしょ?」
どうやら彼女は、心配してくれていたみたいだ。
「あぁ……、僕にもいまいち分かんなくて。誤解は解けたと思うんだけど……学校だとやっぱり隠したいのかな。男同士だし」
「拓海くんがそんなこと気にするタイプには見えないけど……意外と繊細なのかな」
「いや、拓海は繊細だよ」
「えー。それは千秋くんの前で猫被ってるだけだと思う」
愚痴交じりの表層的な会話。誰かに対して言葉に発散できたというのは大きくて、どう拓海に自分の気持ちを伝えてやろうかと恨めしく思っていた気持ちが和らいでいく。
「振られはしたけど、私は千秋くんの味方だから。相談もなかなかしづらいだろうし、何かあったら話は聞くからね」
「ごめん……。心配してくれてありがとう、美穂ちゃん」
本当に自分にはもったいないくらいの良い子だったなと思う。それを言えば、拓海も自分にはもったいないくらいに何でもできる人だけど。
そのまま朝の時間は美穂ちゃんと小テストの勉強をしていると、急に割って入る影が現れた。
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