脆すぎる我慢

沙羅

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「もう何度目かって話だよな、ほんと笑える」
自分でも笑えていないのが分かりながら、それでも強がってそう言う。
「だから別れたら?って言ってんじゃん。やっぱあいつは顔だけなんだって」
こいつは、彼が浮気をする度に落ち込む僕を慰めてくれる親友。
最初の方は本気で相談にも乗ってくれたのだが、あまりにも回数が多くなりすぎてテキトーにあしらわれるようになってきた。

「でもあんなに綺麗な顔と付き合えるなら我慢しようって思うじゃん……」
「え、お前も顔だけで付き合ってんの?」
「実は」
なんて軽口を言って2人で笑いあう。本当は他にも好きなところはあるけれど、ダントツは顔だった。なんせ彼は、学年1モテると言われている男なのだ。
好きになる人が同性、ということに悩んでいた僕は、みんなが「好き」だと言っている彼を目で追っているうち、同じように好きになってしまった。
幸いにも同じ専攻だったので何度もアプローチをしているうちに、好きな本が同じだとか、好きな音楽が同じだとか共通点が見つかっていって。「好き」の気持ちがもう後戻りできなくなった時に、告白をした。これで関係も終わらせよう、きっぱりと諦めてしまおうと思っていたのに、返事はまさかのYesだったのだ。
同性愛を明かしても引かれなかったこと、同じ気持ちだった嬉しさ、こんなにかっこいい人の彼氏になれること。全てがうれしくて、僕は舞い上がった。でもその舞い上がりは、恥ずかしいものへと変わる。
付き合って半年を過ぎた頃から、彼の浮気癖が始まったのだ。

「でもあいつ彼女作らないって有名だったのにね」
そう。分からないのはそこだけ。彼は「セフレはいるが彼女はつくらない」というそれは酷い経歴の持ち主だったのだ。彼女、でないところが例外だったのかもしれないが、僕は恋人という立場に立つことは未だに許されている。
「なんなんだろうね。別れたいって言われるわけでもないし」
「向こうは別れてるつもり、ってのは」
「それ言う?そうだったらほんとに凹むんだけど」
なんて、傷をなめてもらっているのか抉ってもらっているのか分からない会話をすること数十分。ふと親友が、こんなことを言い出した。

「押してダメなら引いてみろってあるしさ。1回離れてみない?お前もそろそろ辛いだろ。宿くらいなら俺が提供してやるし」

それは魅力的な誘いだった。
彼からのメッセージを見れば彼が浮気をしている日かどうかを見極められるようになったものの、帰る場所はあそこしかなく、嫌な現実を間近で見てしまう日々が苦痛だった。最近はさらに頻度も上がっていて、こんなに軽く話してはいるがその実メンタルはボロボロだった。そんな日にこいつの家に行ければ、少しはダメージも軽くなるかもしれない。

「それ、ほんと?」
「おうよ。ちょっと狭いかもしんないけど。なんなら今日来る?」
「いや、今日はやめとくわ。まだなんの準備もしてないし。今度、「予感」を感じた時にお願いする」
今まで1人で立ち向かうしかなかった絶望に、支えてくれる仲間が増えたことで、少しだけ強くなれた気がした。
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