脆すぎる我慢

沙羅

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「ここ、やだ」
祐介と知らない人の情事の後を残した寝室なんて入りたくない。そう思って抵抗しようとするのに、祐介の方が体格もよく力も強いため逃げられない。
背中をドンと押されて前のめりになってしまえば、ベッドに横たえられるまでにそう時間はかからなかった。
「さみしかったら俺に縋ってこればよかった。それを待ってずっと見せつけてたのに、他の男に縋ったの?ありえないでしょ、俺の方が、ずっと遥のこと好きなのに」
祐介の言っていることはよく分からない。見せつけてたって何。縋るって何。分からないけれど、1つだけ嘘だと感じる部分があった。
「好きなんて、嘘じゃん」
もう彼はとっくに自分のことなんて好きではないはずだ。だからこそ浮気なんて真似ができるのではないか。そう思うのと同じくらい、「好き」とまだ思っていてほしいと願っていたはずなのに、口から出たのは疑念に塗れた言葉だった。
彼はそれを肯定も否定もせず、ただ大きなため息をつく。

「ほんと人ってめんどくさいよね。自分の価値観が相手に伝わるとは限らなくてさ。まぁ、いいよ。理解してもらえないのは知ってるから」
――ただ、体に分からせてやればいい。

そんな漫画みたいな決めゼリフを言ったかと思えば、無理やりに服を脱がそうとしてきた。
「なにす、やめっ……!」
抵抗しようとすればするほど向こうの力も入り、ついにビリっと布の音が鳴る。一度亀裂が入ってしまえば後は簡単で、ズボンは見るも無残な姿になった。
「あーあ、遥が抵抗するから破れちゃった」
お前のせいだろ、と言ってやりたかったのに、彼の目を見た瞬間にその声は喉の奥に引いた。それは眼光がとても鋭い、怒りと欲の混ざった目だった。
見とれているうちに、ついにパンツまで脱がされてしまう。

「そうだね、もっと早くこうすれば良かったね。我慢なんて俺ができるわけなかったんだよ。遥の代わりなんて、どれだけ抱いても満たされないし」
敏感なところに彼の手が近づいてきて、ぎゅっと握られる。冷たい手が、心臓に突き立てられた刃物に似ていて、息がひゅっと鳴った。
「萎えちゃってる? でも大丈夫、いっぱい練習したからね」
もしかして、練習って今までの浮気のことを言っているのか。体を触られながら他の人との情事を匂わせる発言に不快感が増す。なのに、彼の言葉通りそのテクニックは高いもので、じわじわと怖いという気持ちが他の気持ちに変わっていくのが分かった。

「はな、せ」
上に下にスライドされたり、先端をぐりぐりといじられたり。自分でするよりも強い力加減のそれは、的確に快感を呼び起こした。
気持ちよくないはずなのに、気持ちがよかった。

「はなさないよ、気持ちよくなってね」
目の前から祐介の顔が消えたかと思えば、自分の股の間に彼の顔がうずめられている。
付き合ってからハグと、いってもディープキスまでだったはずなのに、あろうことか彼はそれを舐めるという行為を選んだ。
「ん、やめ……っ、やだ」
「ひもいーい?」
きっと気持ちいいかを尋ねられたのだと思うが、それに声は返せそうになかった。「気持ちよくない」と返したいのに、あったかい口の中が気持ちよすぎて、今しゃべったらあられもない声を出してしまいそうだったから。
どんどんと高まっていくのが分かる。もう無理だという意思表示で彼の頭を離れさせようとしているのに、一向に離れてくれる気配がない。
「や、も、ダメ……んんっ!!」
最悪だと思った。人の口の中に射精をしてしまうなんて。無理やりされているのだからこちらには非がないと分かっていても、申し訳ない気持ちが湧いてしまう。

「ごめん……」
「なんで謝るの? 俺は遥のが飲めて嬉しいのに」

* * *

フェラに始まって、それからも様々な方法で攻め抜かれた。
最後までされることはなかったものの、後ろは「確認」という名目でいじられた。
今まで身体的接触をしてこなかった分、暴力的な快楽に翻弄されっぱなしだった。

「他の人を代わりにするのはやめる。その代わり、これから全部、遥が俺の欲を受け止めるんだよ。ずぅっと、愛し合おうね」

それは願っていたことのはずなのに、呪いの言葉のようだった。
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