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しおりを挟む授業が始まってしまえば、そんな特殊な制度を持つ学園とて別段不思議なことは起こらない。比較的真面目な生徒の多いこの学園では、退屈すぎるほどに穏やかな時間が流れていく。
僕はそんな静けささえも愛しく感じていた。何より、ここにいる間は彼の視線から解放されるからだ。
しかし、そんな僕の気持ちなどお構い無しに、誰にでも等しく放課後は訪れる。
それを告げる鐘が鳴り響けば、クラスの大半の人たちが急いで教室を出ていった。
普段ならパタパタと足音が響くのだが、今日は少し様子が違う。
「優様!?どうしてここに……?」
「えっ、ほんとだ!こんな近くで見たの初めてー!」
何やら廊下が騒がしいなと思っていれば、クラスメイトから大きな声で名前を呼ばれた。
「おーい、棚橋ー!」
声の聞こえた方向を見れば、何人かが扉付近で手招きをしている。僕に用事なんて珍しいこともあるものだと思いながら近付いて、彼の横に立つ人物に驚いた。
どうして彼がここに……?
なんで来たんだと言いかけて、口を噤む。
周りの人は僕らの関係を知らない。僕なんかが学園の象徴とも言える彼に、生意気な口を利けるはずがなかった。
学校で彼が僕に接触してくる理由が分からない。
彼自身も僕の体質を隠すために『パートナー』契約はおろか、学校では関わりを絶っていたというのに。
「棚橋良さん、ですよね?少し一緒に来ていただけませんか?」
あくまでも他人行儀で接してきた彼に、安心して小さく息を吐く。
しかし、僕が答えるより先に僕の手首をガッチリと捕まえる彼は、僕の知るユウそのものだった。
そのままズンズンと歩いて行く彼。何か怒っているようにも見えて逃げ出したい衝動に駆られるが、掴まれた手首は振りほどけそうにない。
仕方なく、転ばない程度に離れながら彼の後についていった。
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