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皇女、少年に出会う。②
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薄らと目が開き、意識が完全に戻ったのか、突然飛び起きた。
「お前、誰だ?」
殺意のこもった目線を無視して、私は少年のおでこを触った。
「気安く触るな!」
36度。熱は下がったみたい。
「あーのーね!あなたは森の中でぶっ倒れてたのよ!私は助けただけ!」
つい声を荒げてしまうと、少年は怯えたように布団の中に隠れた。
「あ、ごめん。とにかく、安静にしてて。あと、私の名前は、メルー」
皇女の名前を言いそうになり、私は口を塞いだ。
ここで言ったら、全てが無意味になってしまう!
「サ、サナ!私の名前はサナよ!」
慌てて偽名を口から出すと、少年は布団から顔を少しだけ出した。
「さな?」
首を横に傾ける姿は、死ぬほど可愛かった。
「そう!あなたの名前は?」
聞いてみると、彼は恥ずかしそうに何かをモゴモゴと言った。
「ん?」
「ゆ、ユシル!」
力を振り絞って叫ぶ姿も、もちろん可愛い。
「そっか!ユシルね!ユシル、よろしくね。」
顔を赤くしながらコクッと頷くユシルと共に、私の真・新生活が始まった。
「ユシル、美味しい?」
「うん。」
目覚めてから四日が経ち、ユシルのほっぺたはだんだんふっくらとしていった。
顔色もだいぶ良くなったし、弟みたいで可愛いし。
「最高。」
米粒を口の周りにつけながら、ユシルは首を傾げた。
首を傾げるのが癖みたい。
「ねえ、外に出てみない?この森の中は安全だから。まだ歩けないと思うから、これも作っておいたよ。」
私はインベントリから、昨日頑張って作ったものを取り出した。
「わぁー!」
車椅子。
この世界には無いもの。
いつのまにか食べ終わったユシルを持ち上げて車椅子の上に座らせると、ユシルは目を輝かせた。
「すごい…!」
「気に入ってくれてよかった。」
車椅子ごと持ち上げてお庭に出ると、ユシルは後輪を回しながら動き始めた。
ブレーキを押す方法も教えたし、大丈夫、よね?
ま、万が一のためにつけておくか。
【スポン コア】
掌から光の魂のようなものが生まれた。
これは、私の一部を具現化した、精霊、コア。
この子がいるところなら、どこにでもテレポートできる。
【コア、ユシルについて行って。】
コアに伝えると、魂は車椅子まで追いつき、後ろにピッタリとくっついた。
マグネットのようなものだな。
箒に乗って後ろからついていくと、すぐにユシルを見つけた。
「これが、自然。」
じっと草木を見つめる姿も、可愛い。
空にぷかぷかと一人浮いていると、ユシルの叫び声が聞こえた。
「うわぁぁ!」
え、なになに!?
【コア、テレポート!】
車椅子の後ろにテレポートし、私は急いでユシルのことを持ち上げた。
「さ、さな?どうしたの?」
顔色は、大丈夫そうね。
熱もない。
「ユシルこそ、何が起きたの?あなたの叫び声が聞こえたの!」
ユシルに伝えると、彼はクスッと笑った。
「笑った!ユシルが初めて笑った!」
私は喜びのあまり、満面の笑みを浮かべてしまった。
何が起こったのか聞きたいのに、ユシルが笑ったのが嬉しすぎて聞けない。
「さな、笑わせてくれてありがとう。」
にぱぁっと笑った幼い少年は、幸せそうな顔をしていた。
笑わせてくれたことを褒められるなんて、思ってもなかった。
私はユシルを抱きしめ、頭を撫でた。
「私が絶対に守るからね。」
「…うん!ありがとう。」
やっぱり、子供は笑ってるのが一番ね!
「お前、誰だ?」
殺意のこもった目線を無視して、私は少年のおでこを触った。
「気安く触るな!」
36度。熱は下がったみたい。
「あーのーね!あなたは森の中でぶっ倒れてたのよ!私は助けただけ!」
つい声を荒げてしまうと、少年は怯えたように布団の中に隠れた。
「あ、ごめん。とにかく、安静にしてて。あと、私の名前は、メルー」
皇女の名前を言いそうになり、私は口を塞いだ。
ここで言ったら、全てが無意味になってしまう!
「サ、サナ!私の名前はサナよ!」
慌てて偽名を口から出すと、少年は布団から顔を少しだけ出した。
「さな?」
首を横に傾ける姿は、死ぬほど可愛かった。
「そう!あなたの名前は?」
聞いてみると、彼は恥ずかしそうに何かをモゴモゴと言った。
「ん?」
「ゆ、ユシル!」
力を振り絞って叫ぶ姿も、もちろん可愛い。
「そっか!ユシルね!ユシル、よろしくね。」
顔を赤くしながらコクッと頷くユシルと共に、私の真・新生活が始まった。
「ユシル、美味しい?」
「うん。」
目覚めてから四日が経ち、ユシルのほっぺたはだんだんふっくらとしていった。
顔色もだいぶ良くなったし、弟みたいで可愛いし。
「最高。」
米粒を口の周りにつけながら、ユシルは首を傾げた。
首を傾げるのが癖みたい。
「ねえ、外に出てみない?この森の中は安全だから。まだ歩けないと思うから、これも作っておいたよ。」
私はインベントリから、昨日頑張って作ったものを取り出した。
「わぁー!」
車椅子。
この世界には無いもの。
いつのまにか食べ終わったユシルを持ち上げて車椅子の上に座らせると、ユシルは目を輝かせた。
「すごい…!」
「気に入ってくれてよかった。」
車椅子ごと持ち上げてお庭に出ると、ユシルは後輪を回しながら動き始めた。
ブレーキを押す方法も教えたし、大丈夫、よね?
ま、万が一のためにつけておくか。
【スポン コア】
掌から光の魂のようなものが生まれた。
これは、私の一部を具現化した、精霊、コア。
この子がいるところなら、どこにでもテレポートできる。
【コア、ユシルについて行って。】
コアに伝えると、魂は車椅子まで追いつき、後ろにピッタリとくっついた。
マグネットのようなものだな。
箒に乗って後ろからついていくと、すぐにユシルを見つけた。
「これが、自然。」
じっと草木を見つめる姿も、可愛い。
空にぷかぷかと一人浮いていると、ユシルの叫び声が聞こえた。
「うわぁぁ!」
え、なになに!?
【コア、テレポート!】
車椅子の後ろにテレポートし、私は急いでユシルのことを持ち上げた。
「さ、さな?どうしたの?」
顔色は、大丈夫そうね。
熱もない。
「ユシルこそ、何が起きたの?あなたの叫び声が聞こえたの!」
ユシルに伝えると、彼はクスッと笑った。
「笑った!ユシルが初めて笑った!」
私は喜びのあまり、満面の笑みを浮かべてしまった。
何が起こったのか聞きたいのに、ユシルが笑ったのが嬉しすぎて聞けない。
「さな、笑わせてくれてありがとう。」
にぱぁっと笑った幼い少年は、幸せそうな顔をしていた。
笑わせてくれたことを褒められるなんて、思ってもなかった。
私はユシルを抱きしめ、頭を撫でた。
「私が絶対に守るからね。」
「…うん!ありがとう。」
やっぱり、子供は笑ってるのが一番ね!
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