転生氷魔法使いと願いの果て

桃井桜花

文字の大きさ
6 / 23
人生行路編

3話 アランという魔術師は……

しおりを挟む
 次の日。洞窟内で一泊過ごした私と、アランさん。寒くて寝れるか? と思っていたが、アランさんの炎属性の魔法のおかげで安心せいて寝れることが出来た。氷なのに炎属性の魔法を使っても溶けないのか心配だったけど、アランさん曰く、あの洞窟はヌシがいるらしく、そのヌシが消滅する以外は何をしても溶けないらしい。そのヌシと遭遇してしまえば一瞬で氷漬けにされるということで、私たちは洞窟から外の世界へと足を踏み入れることにした。
 外の世界は雲一つない晴天で、小鳥たちのさえずりが聞こえ、とても気持ちがいいものだ。アランさんも昨日よりご機嫌な様子だ。

「アランさん。これからどうするんですか?」

 そう、私はアランさんの呪いを解くために旅をすることにしていたんだけど、アランさんも一緒に旅をしながら、私に魔術と魔法を教えてくれることとなったまではいいけど、どこに向かうのか聞いていない。隠しているわけでもなさそうだし……。

「あぁ、そうだったね。今から僕のがいる国に行くよ。あいつの方が魔法を知り尽くしているからね」
「親友いたんですね」
「友達ゼロみたいな感じで言わないで? 友人の一人二人くらいいるよ。あいつのところに、君と同い年の魔法使い見習いがいるから、互いに何かと高め合えると思うよ」

 私と同い年か……。生前は友人や幼馴染なんていなかったからな~。意外と楽しみにしている自分がいる。性格悪かったら最悪だけど。

「大きな学園があるんだけど、僕とあいつはその学園の生徒だったんだ~」
「えっ、ということはアランさんおいくつなんですか?」

 呪いが解けなけれな〇ぬことが出来ないって言ってたから、何百年とか生き抜いた魔術師なのかと思ってたけど、親友も生きているんだったら……。

「ん? 僕の歳かい? これでも百歳だよ! あいつはエルフだからね~、僕と同じ歳なんだ!」

 アランさんはその場に立ち止まり、私にドヤ顔をかましてきた。だが、動揺せず、アランさんの横をスタスタと横切った。

「反応が欲しいな~」
「へー」
「聞いた本人だよね? ねっ? ねぇってば~」

 成人男性が成人前の少女に後ろからくっついてくるって、異常過ぎん? これ、私がいた世界だったら、セクハラで訴えられてるよ。

「しつこい。うるさい。エルフの特徴なんて知ってますから、相手がエルフだってわかったら動揺しないですよ。人間だったら動揺しますけど」
「えぇ~。つまんないな~」

 子供か! ついつい声に出しそうになるのをグッとこらえた。

「それで、その学園ってどういうとこ……ろって、この魔物なんですか?」

 森の中を歩いていると、巨大なぷよぷよした物が、私たちの前に立ちふさがった。なんだかとっても可愛い。青いぷよぷよ……。もしかしてこれって、かの有名な『スライム』というものじゃないか!?

「この魔物は『スライム』。通常のスライムはこんなに大きくないけど、これはスライムの親分だね。巣が近くにあるんだろう。いい機会だ! 君に『魔術』を見せよう!」

 アランさんはそう言うと、身長と同じ長さの杖を右手に掲げると、スライムの上に魔法陣が現れた。

神聖な雨セイクリッド・レイン

 アランさんがそう唱えると、魔法陣から謎の光が雨のようにスライムに向かって降り注いだ。するとスライムはそのまま消滅してしまった。

「あの巨大なスライムを……一瞬で!?」
「今使った魔術は『白魔術』と言って、相手を癒すのが『白魔術』なんだ。でも、今のは相手を癒すのではなく、するもの。たとえば、悪魔や穢れている者たちに使用する。魔物も対象さ」

 すごいものを見せてもらった気がする……。この人から色々教わるなんて、昨日の私に言い聞かせたいわ。ただの変態魔術師ではなくて、立派な魔術師なんだって。

「そろそろ目的地に着くさ。魔物が襲ってきても安心し給え!」
「分かりましたから、またくっつこうとしないでください! 変態魔術師!」

 さっきの言葉は撤回する! やっぱしこの人は変態魔術師だっ! そう心の中で叫びながら私は、また後ろからくっつこうとするアランさんから逃げながら、アランさんの親友がいる国を目指したのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

魔道具頼みの異世界でモブ転生したのだがチート魔法がハンパない!~できればスローライフを楽しみたいんだけど周りがほっといてくれません!~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
10才の誕生日に女神に与えられた本。 それは、最強の魔道具だった。 魔道具頼みの異世界で『魔法』を武器に成り上がっていく! すべては、憧れのスローライフのために! エブリスタにも掲載しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます

難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』" ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。 社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー…… ……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!? ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。 「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」 「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族! 「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」 かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、 竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。 「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」 人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、 やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。 ——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、 「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。 世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、 最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕! ※小説家になろう様にも掲載しています。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...