片思いしてた先輩が産業スパイだったので襲ってみた

雲丹はち

文字の大きさ
1 / 5

01 遭遇

しおりを挟む

もともと噂はあった。
我が社に産業スパイが潜入していること。
でなければここ一年間の業績悪化や他社にうちの新商品を先回りして売られるなんてこと、起きるはずもない。

(ただ『彼』でなければ良かったのに……)

こういう時ほど嫌な予感は当たる。
灯りの消えた社にそっと戻ると『彼』はいた。
経理マネージャーの添塚清臣そえづか きよおみ

三つ年上の会社の先輩。
何事にもきっちりと取り組む姿勢から、ついたあだ名は『歩く精密機械』。
細フレームに三つ揃いのスーツをかっちりと着こなした姿からも、それが窺える。
その『彼』が今、誰もいないオフィスで書類とにらみ合っていた。
足音を殺して近づき、背後から声をかけた。

「何してんですか。先輩」

はっと我に返った清臣が振り返る。
細フレームの眼鏡がのった顔は、相も変わらず美しい。
男にこんな表現を使うのもどうかと思うが、入社初日に俺の指導役になってくれてからずっとこの人はきれいだ。

「大上……? お前もやり残した仕事があったのか」

そっと先輩が見ていた書類をデスクにしまおうとするが、その手を掴んだ。

(やっぱり……!)

書類には今年発売予定の新商品の出荷スケジュールが記載されていた。
決して社外に持ち出してはならない極秘情報。
それをひとけのいないこの時間に見ている先輩。
さらにもう一つ。
最近の彼はマネージャーの年俸にしては明らかに高い瀟洒なスーツを着ている。

営業で身だしなみに気をつけているから分かる。
先輩の体格に添って作られたダークスーツは、明らかにオーダーメイドだ。

「あんたがスパイだったんですね……」

低い声で脅すように言えば、先輩が驚愕で目をみはる。
それすらも演技に見えた。

「違う! 私じゃない。これは私も調べようと思って――!?」

デスクに押し倒す。
その衝撃で先輩の眼鏡が外れて、床に落ちた。
めったに見ることがない先輩の素顔。

きれいな二重まぶたに、ぴんと立った鼻筋、きっちりと後ろになでつけられた黒髪が押し倒した時に崩れていた。
ほつれた前髪が彼の額にかかっている。

(うわ。色っぽい……)

掴んだ手を離そうと先輩の手が俺の手に添えられる。
男にしては細くてきれいな指先。爪はよく手入れされて、ピンク色に光っている。

必死に押し返そうと息を荒くする姿が『あれ』と直結する。

(そういや、今月まだ一回もヌいてねーや)

目の前には入社してからずっとオカズとして使っていた先輩が、興奮した面持ちでこちらを睨んでいる。

「っ! 手を離せ、大上!」

仕事中、いつもポーカーフェイスの先輩が、いま俺の前で激昂している。
その事実に情欲のたまった体が一気に切り替わる。
産業スパイとして問いつめるよりも、この人のこういう顔をもっと見たい。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

年下くんに堕とされて。

bara
BL
イケメン後輩に堕とされるお話。 3話で本編完結です

またのご利用をお待ちしています。

あらき奏多
BL
職場の同僚にすすめられた、とあるマッサージ店。 緊張しつつもゴッドハンドで全身とろとろに癒され、初めての感覚に下半身が誤作動してしまい……?! ・マッサージ師×客 ・年下敬語攻め ・男前土木作業員受け ・ノリ軽め ※年齢順イメージ 九重≒達也>坂田(店長)≫四ノ宮 【登場人物】 ▼坂田 祐介(さかた ゆうすけ) 攻 ・マッサージ店の店長 ・爽やかイケメン ・優しくて低めのセクシーボイス ・良識はある人 ▼杉村 達也(すぎむら たつや) 受 ・土木作業員 ・敏感体質 ・快楽に流されやすい。すぐ喘ぐ ・性格も見た目も男前 【登場人物(第二弾の人たち)】 ▼四ノ宮 葵(しのみや あおい) 攻 ・マッサージ店の施術者のひとり。 ・店では年齢は下から二番目。経歴は店長の次に長い。敏腕。 ・顔と名前だけ中性的。愛想は人並み。 ・自覚済隠れS。仕事とプライベートは区別してる。はずだった。 ▼九重 柚葉(ここのえ ゆずは) 受 ・愛称『ココ』『ココさん』『ココちゃん』 ・名前だけ可愛い。性格は可愛くない。見た目も別に可愛くない。 ・理性が強め。隠れコミュ障。 ・無自覚ドM。乱れるときは乱れる 作品はすべて個人サイト(http://lyze.jp/nyanko03/)からの転載です。 徐々に移動していきたいと思いますが、作品数は個人サイトが一番多いです。 よろしくお願いいたします。

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

娘さん、お父さんを僕にください。

槇村焔
BL
親父短編オムニバス。 色んな家族がいます 主に親父受け。 ※海月家※ 花蓮の父は、昔、後輩である男に襲われた 以来、人恐怖症になった父は会社を辞めて、小説家に転身する。 ようやく人恐怖症が治りかけたところで… 腹黒爽やか×気弱パパ

初体験

nano ひにゃ
BL
23才性体験ゼロの好一朗が、友人のすすめで年上で優しい男と付き合い始める。

エリート会社員の俺がヤンデレ後輩に手篭めにされた話

あんみつ~白玉をそえて~
BL
短編読み切りBLです。

仕事ができる子は騎乗位も上手い

冲令子
BL
うっかりマッチングしてしまった会社の先輩後輩が、付き合うまでの話です。 後輩×先輩。

壁乳

リリーブルー
BL
ご来店ありがとうございます。ここは、壁越しに、触れ合える店。 最初は乳首から。指名を繰り返すと、徐々に、エリアが拡大していきます。 俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 じれじれラブコメディー。 4年ぶりに続きを書きました!更新していくのでよろしくお願いします。 (挿絵byリリーブルー)

処理中です...