19 / 60
神様と猫①
しおりを挟む
「というわけで、鳥居家では猫を飼うことになりましたー!」
鳥居家に来て3ヶ月ほど。下界生活にも、居酒屋のバイトにも慣れてきた。下界の食事は美味しいし人間も優しい。居酒屋のバイトも、一部の迷惑な酔っぱらいや香水の匂いのどぎつい女性などを除けば、悪いものではないし働きがいもあった。
しかし、相も変わらず天界の情報は集まらなかった。居酒屋のバイトは色んな人の色んな話を盗み聞き出来るので情報収集には適していると考えていたが、実際は仕事や上司、家庭などの愚痴ばっかりで、そんなものは盗み聞きしても何の得にもならない。
そして3ヶ月ほど経ってやっと気付いたこともある。下界の人間が天界の話などするわけがないと。死んだ人間でなければ死後の世界など語ることが出来ないように、行ったことも聞いたこともない天界の話など出来るわけがないのだ。気付くのが遅すぎるぞ俺……。
そんな中、凪沙ちゃんのさっきの一言である。なにやら鳥居家では、前々から猫を飼うことを計画していたらしい。
「前から動物は飼ってみたいと家族で話してはいたのですが、お父さんもお母さんも居酒屋の切り盛りで大変だし、私と晴人の面倒も見ないといけないからとてもじゃないけど飼えなくて。でも、私も晴人もあまり手が掛からなくなって、しかも神山さんが来てくれたことで少しは余裕が出来るようになったそうなんです。だからこのタイミングで、鳥居家に猫を迎え入れようということになりました!」
「たしかに、猫だったら自由気ままに過ごしそうだから、新しい生活に慣れたら手が掛からなそうだね。今度の休日にペットショップへ行くのかい?」
「いえ、この街には生体を販売するペットショップはありません。この街では、殺処分ゼロを目指して数年前から生体販売を禁止しているんです」
「へぇ、それは素敵だね!じゃあどこで猫を譲り受けるんだい?」
「動物を保護している施設があるんです。そこでは、元捨て犬や捨て猫などの野生動物を保護していて、里親を募集しています。街全体で行っている取り組みなので助成も手厚いらしいですよ!」
だからこの街では野良猫一匹すら見かけなかったのか。
「街全体で行う殺処分ゼロへの取り組み。悪質なブリーダーや生体に値段を付けて販売するペットショップのせいで、捨て犬や捨て猫の殺処分が無くなりません。この街がロールモデルとなって、いつしか国全体での取り組みになるといいなって思います!」
凪沙ちゃん、やっぱり良い子だなぁ。こんな子に飼われる保護猫は、さぞ嬉しかろう。
「だから今度の休日、保護施設に行って保護猫を譲り受けようと思います。神山さんも来てくださいね!」
え?俺必要……?
「どの猫を譲り受けるか決めてるの?」
「いえ、その施設に行くのは初めてなので、行ってから実際に見て、それから決めようと思っています。と言っても、実際にはあの子にしようと決めているんですけどね!」
「初めて施設に行くのに、目を付けている猫がいるのかい?」
「そうなんです!その子というのが……」
「姉ちゃんと神山さん、そこにいたら邪魔。立ち話ならあっちでしてくれよ」
「あ、晴人おかえり。次の休日、保護猫を譲り受けるために保護施設に行くことになったから、晴人も来なさいね!」
「なんで俺も行かなきゃいけないんだよ。どうせ神山さんも来るんだろ?俺はいいよ」
あの一件以来、一応「神山さん」とは読んでくれるようにはなったが、相変わらず舐めた坊主だなこの子は。同じ親御さんから同じような教育を受けているはずなのに、凪沙ちゃんとのこの差は何なのだろう。
「あら?晴人が一番この話に乗り気だったじゃない。昔、犬より猫派だとか、ぷにぷにな肉球が好きだとか言ってたのは誰だったかしらぁ?来ないと、美鈴ちゃんにこの事言っちゃおうかなぁ?」
「言うなよそんな事!まぁ、別に次の休日は何も予定入ってないし暇だから来てやってもいいけどよ……」
……晴人くん、可愛いとこあるじゃないか。
「お、俺は学校の課題が残ってるから」
晴人くんは2階の住居部分へ、半ば逃げるように駆けて行った。可愛いぞ晴人くん。
「そんな意地悪したら晴人くん、ちょっと可哀想じゃない?大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ!晴人は素直じゃないから少し強引に誘わないと。あの子、猫と肉球好きだし。あと、既に美鈴ちゃんにはさっきの話はお話済みです。内緒ですよぉ?」
凪沙ちゃんもなかなかの悪だった。
鳥居家に来て3ヶ月ほど。下界生活にも、居酒屋のバイトにも慣れてきた。下界の食事は美味しいし人間も優しい。居酒屋のバイトも、一部の迷惑な酔っぱらいや香水の匂いのどぎつい女性などを除けば、悪いものではないし働きがいもあった。
しかし、相も変わらず天界の情報は集まらなかった。居酒屋のバイトは色んな人の色んな話を盗み聞き出来るので情報収集には適していると考えていたが、実際は仕事や上司、家庭などの愚痴ばっかりで、そんなものは盗み聞きしても何の得にもならない。
そして3ヶ月ほど経ってやっと気付いたこともある。下界の人間が天界の話などするわけがないと。死んだ人間でなければ死後の世界など語ることが出来ないように、行ったことも聞いたこともない天界の話など出来るわけがないのだ。気付くのが遅すぎるぞ俺……。
そんな中、凪沙ちゃんのさっきの一言である。なにやら鳥居家では、前々から猫を飼うことを計画していたらしい。
「前から動物は飼ってみたいと家族で話してはいたのですが、お父さんもお母さんも居酒屋の切り盛りで大変だし、私と晴人の面倒も見ないといけないからとてもじゃないけど飼えなくて。でも、私も晴人もあまり手が掛からなくなって、しかも神山さんが来てくれたことで少しは余裕が出来るようになったそうなんです。だからこのタイミングで、鳥居家に猫を迎え入れようということになりました!」
「たしかに、猫だったら自由気ままに過ごしそうだから、新しい生活に慣れたら手が掛からなそうだね。今度の休日にペットショップへ行くのかい?」
「いえ、この街には生体を販売するペットショップはありません。この街では、殺処分ゼロを目指して数年前から生体販売を禁止しているんです」
「へぇ、それは素敵だね!じゃあどこで猫を譲り受けるんだい?」
「動物を保護している施設があるんです。そこでは、元捨て犬や捨て猫などの野生動物を保護していて、里親を募集しています。街全体で行っている取り組みなので助成も手厚いらしいですよ!」
だからこの街では野良猫一匹すら見かけなかったのか。
「街全体で行う殺処分ゼロへの取り組み。悪質なブリーダーや生体に値段を付けて販売するペットショップのせいで、捨て犬や捨て猫の殺処分が無くなりません。この街がロールモデルとなって、いつしか国全体での取り組みになるといいなって思います!」
凪沙ちゃん、やっぱり良い子だなぁ。こんな子に飼われる保護猫は、さぞ嬉しかろう。
「だから今度の休日、保護施設に行って保護猫を譲り受けようと思います。神山さんも来てくださいね!」
え?俺必要……?
「どの猫を譲り受けるか決めてるの?」
「いえ、その施設に行くのは初めてなので、行ってから実際に見て、それから決めようと思っています。と言っても、実際にはあの子にしようと決めているんですけどね!」
「初めて施設に行くのに、目を付けている猫がいるのかい?」
「そうなんです!その子というのが……」
「姉ちゃんと神山さん、そこにいたら邪魔。立ち話ならあっちでしてくれよ」
「あ、晴人おかえり。次の休日、保護猫を譲り受けるために保護施設に行くことになったから、晴人も来なさいね!」
「なんで俺も行かなきゃいけないんだよ。どうせ神山さんも来るんだろ?俺はいいよ」
あの一件以来、一応「神山さん」とは読んでくれるようにはなったが、相変わらず舐めた坊主だなこの子は。同じ親御さんから同じような教育を受けているはずなのに、凪沙ちゃんとのこの差は何なのだろう。
「あら?晴人が一番この話に乗り気だったじゃない。昔、犬より猫派だとか、ぷにぷにな肉球が好きだとか言ってたのは誰だったかしらぁ?来ないと、美鈴ちゃんにこの事言っちゃおうかなぁ?」
「言うなよそんな事!まぁ、別に次の休日は何も予定入ってないし暇だから来てやってもいいけどよ……」
……晴人くん、可愛いとこあるじゃないか。
「お、俺は学校の課題が残ってるから」
晴人くんは2階の住居部分へ、半ば逃げるように駆けて行った。可愛いぞ晴人くん。
「そんな意地悪したら晴人くん、ちょっと可哀想じゃない?大丈夫かな?」
「大丈夫ですよ!晴人は素直じゃないから少し強引に誘わないと。あの子、猫と肉球好きだし。あと、既に美鈴ちゃんにはさっきの話はお話済みです。内緒ですよぉ?」
凪沙ちゃんもなかなかの悪だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる