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0.始まり
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私はたぶん生まれてこないほうがよかったのでしょう。私が生まれたことで、父と母の運命は変わりました。幸福なものから、悲しい最期に。幸せは、永遠ではないのだと。
父と母は大恋愛の末に結婚したそうです。2人の出会いは、桜舞う季節の日本。観光に来ていた外国人の父と、両親を失い呆然と桜を見上げていた母。偶然の出会いでした。父は、母の凛とした立ち姿が印象的だったと母に言ったそうです。母は、いきなり目の前に現れた父を見て、王子様かと思ったそうです。なぜなら、父の金髪が、光りに照らされて幻想的な雰囲気を出し、自分は夢を見ているんだと思ったからです。一目惚れをした父は、何とか母を口説き落として、日本の滞在中はずっと一緒にいたそうです。父の帰国の時には、半ば強引に母も飛行機に乗せたのだとか。父の母への溺愛ぶりは、すごかったそうです。照れながら、母は私に教えてくれました。
それでも周囲の理解が得られるまでは、大変だったようです。父は祖国に資産を持っていたので、母はそちらに移り住み、何不自由なく日々を過ごしていました。たぶんその時が父にとっては、最高に幸せな時だったのでしょう。
けれど、幸せというものは、長くは続かないものです。
私が2人の幸せを奪ってしまいました。
私が母のお腹にいると分かると同時に、母の中に悪性の腫瘍もあると分かりました。父は、治療をするように母に言いましたが、母は子どもへの影響も考えて治療を拒否していました。父にしてみれば、まだ見ぬ子供の命よりも母が大事なのは当然のことでした。むしろ、子供を堕胎することも考えて欲しいとまで母に言ったそうです。母が無事ならまた子供は作れる。そう説得しましたが、母は譲れなかったと言っていました。母は日に日に大きくなる私を感じてどうしても健康に生まれてほしいと願っていたのです。この時から父の中で、私を憎む気持ちが生まれていったのかもしれません。
母は、私を守り抜きました。私は、腫瘍とともに大きくなったのです。母の命を縮めながら。
それでも母は、私を愛してくれました。父も表面上は愛してくれたのだと思います。母が命懸けで産んでくれた自分の血がつながるものだから。そう思い込もうとしたようですが、複雑な気持ちになるのはどうしようもありませんでした。時折、父から憎しみのこもった視線が送られましたが、それは仕方ないことなのです。私が母の命を縮めたのですから。私も、大人になって考えてしまうのです。私ならどうしただろうと。2人の幸せを壊したくはなかった。
私の容姿は、髪と右目は母譲りの黒でしたが、左目は、ブルーでした。左右で瞳の色が違ったのです。そして肌の色は透き通るような白でした。私は、周囲の人との容姿の違いに最初は困惑していましたが、母が私の髪をなでながら、いつも穏やかな笑みを浮かべ、”かわいい””だいすき”と言ってくれたので、他人からの視線は気になりませんでした。それに、ある程度すると自分でカラーのコンタクトレンズを使いできる限り目立たないようにしていました。母が髪を撫でてくれる時間が私はとても好きでした。けれど、母との穏やかな時間が過ぎるのは、あっという間でした。
父と母は大恋愛の末に結婚したそうです。2人の出会いは、桜舞う季節の日本。観光に来ていた外国人の父と、両親を失い呆然と桜を見上げていた母。偶然の出会いでした。父は、母の凛とした立ち姿が印象的だったと母に言ったそうです。母は、いきなり目の前に現れた父を見て、王子様かと思ったそうです。なぜなら、父の金髪が、光りに照らされて幻想的な雰囲気を出し、自分は夢を見ているんだと思ったからです。一目惚れをした父は、何とか母を口説き落として、日本の滞在中はずっと一緒にいたそうです。父の帰国の時には、半ば強引に母も飛行機に乗せたのだとか。父の母への溺愛ぶりは、すごかったそうです。照れながら、母は私に教えてくれました。
それでも周囲の理解が得られるまでは、大変だったようです。父は祖国に資産を持っていたので、母はそちらに移り住み、何不自由なく日々を過ごしていました。たぶんその時が父にとっては、最高に幸せな時だったのでしょう。
けれど、幸せというものは、長くは続かないものです。
私が2人の幸せを奪ってしまいました。
私が母のお腹にいると分かると同時に、母の中に悪性の腫瘍もあると分かりました。父は、治療をするように母に言いましたが、母は子どもへの影響も考えて治療を拒否していました。父にしてみれば、まだ見ぬ子供の命よりも母が大事なのは当然のことでした。むしろ、子供を堕胎することも考えて欲しいとまで母に言ったそうです。母が無事ならまた子供は作れる。そう説得しましたが、母は譲れなかったと言っていました。母は日に日に大きくなる私を感じてどうしても健康に生まれてほしいと願っていたのです。この時から父の中で、私を憎む気持ちが生まれていったのかもしれません。
母は、私を守り抜きました。私は、腫瘍とともに大きくなったのです。母の命を縮めながら。
それでも母は、私を愛してくれました。父も表面上は愛してくれたのだと思います。母が命懸けで産んでくれた自分の血がつながるものだから。そう思い込もうとしたようですが、複雑な気持ちになるのはどうしようもありませんでした。時折、父から憎しみのこもった視線が送られましたが、それは仕方ないことなのです。私が母の命を縮めたのですから。私も、大人になって考えてしまうのです。私ならどうしただろうと。2人の幸せを壊したくはなかった。
私の容姿は、髪と右目は母譲りの黒でしたが、左目は、ブルーでした。左右で瞳の色が違ったのです。そして肌の色は透き通るような白でした。私は、周囲の人との容姿の違いに最初は困惑していましたが、母が私の髪をなでながら、いつも穏やかな笑みを浮かべ、”かわいい””だいすき”と言ってくれたので、他人からの視線は気になりませんでした。それに、ある程度すると自分でカラーのコンタクトレンズを使いできる限り目立たないようにしていました。母が髪を撫でてくれる時間が私はとても好きでした。けれど、母との穏やかな時間が過ぎるのは、あっという間でした。
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