運命の輪

雪椿

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 子供がもう1匹に近づいて仲良く林檎を分け合って食べだしました。よほどお腹がすいていたのか、テーブルの上にあった林檎は、あっという間になくなってしまいました。全部なくなったのを確認すると、少し残念そうな顔をしていました。どうやらまだ食べ足りないようです。けれど、私のことは警戒しているようなので、話しかけてはきませんでした。その様子に苦笑しながら、子供に事情を聴くことにしました。とにかく、事情が分からなければ、こちらも対処のしようがありません。

 「どうして、あの雨の中森に入ったの?」

  私に話しかけられたことで、犬の方は、子供の後ろに隠れてしまいました。子供は、しばらく悩んでいましたがゆっくり話し始めました。

  2人は、やはり間の子あいのこでした。父親が魔族、母親は人ということでした。母親は、下の子を産んだ後、産後の肥立ちが悪く、そのまま死んでしまったのだそうです。父親も母親の死がショックだったようで、寝込むようになり、そのまま回復できずに死んでしまったとのことでした。最初は、家にある食料で細々生活していたのですが、食糧が底をついってしまったため、必要最小限買い物をしに、村に行ったときにたまたまかぶっていたフードが外れ、間の子だとばれてしまい、家を追い出されてしまったそうです。人から離れようと森の中に入り歩きまわっていると、下の子が疲労からか具合が悪くなり、そのうえ雨も降ってきたために仕方なく目に付いた家を訪れたのだそうです。それが、私の家でした。

 
 「大体の話は、分かったけど、これからどうするの?私は薬も作れるから、しばらくここに一緒に住む?」

 そう提案すると、子供は驚いたように怖くないのかと聞いてきたので、怖くないと伝えました。私だって、いきなりこの世界に来てしまい戸惑っていた時に見つけた家だったので、困っている子をこのまま放置するのは、嫌だったのです。それに、両親を亡くしてしまったばかりなら、余計に心細いと思ったのです。しかも親にきちんと愛されていたのですから、余計に悲しみは深いでしょう。今はまだ悲しみに浸る余裕はないかもしれませんが、落ち着いたらしっかり悲しませてあげたいのです。感情を心にため込むのは、良くありませんから。

「ところで、名前聞いてもいい?私は、サクラ。」
そう聞くと、しばらく考えるようにして子供が口を開きました。

 「俺は、シグ。弟は、テオ。俺は、魔力が安定しているから、よほどの事がなければ、狼にはならない。けれど、弟は、まだ魔力が安定していないから、人であり続けるのが難しい。それに、魔力安定の発作も起こしてないから、長く生きれるかもわからない。」
 そう説明されました。魔力安定の発作とは、間の子特有の病気の事です。人の血が流れているせいで、魔力を安定させることが難しくなり、ある一点を越えた時に、強制的に魔力を体外に放出してしまうのです。しかも、魔力は、人で言う血液と同じようなものなので、一定以上失うと死に至ります。通常であれば、魔族の親が子供の傍で、魔力コントロールを強制的に行い安定を図るということでした。しかし、この子の場合は、父親はもう他界しているために魔力コントロールをしてくれるものが誰もいません。間の子であるために、他の魔族からの協力も望めないだろうし・・・弟が危機的状況にあることをよく理解していますね。見た目は、兄が5歳。弟が3歳といった感じですが、実際の年齢はどうなんでしょうね。機会があれば聞いてみたいものです。それはいいとして、まずは弟の発作の対策を考えなければ。
 「私は、書籍の中から何かいい方法がないか探してみる。シグは、テオの傍にいてあげて。食糧は保管庫にあるものなら、何を食べてもいいけれど、薬草には触らないでほしい。用があれば、隣の部屋にいるから呼んで。」
それだけ伝えて、私は本棚の前へと移動しました。

 


  一方シグは、そんなサクラの反応に、戸惑ってしまいました。両親以外の人から親切にされたことはないし、ましてテオの発作のことまで話したのです。普通なら、魔力の放出に巻き込まれたくはないと考えて、早々に追い出すはずです。シグもその覚悟でこの話をしたのです。サクラは、助けてくれたから。巻き込んで怪我や、命を危険にさせたくないと感じたからです。なのに、発作をどうにかする方法を探すとまで言ってくれたのです。シグにとってテオはただ1人の肉親です。家族です。もう失いたくはありませんでした。だから、サクラが何とかしてくれるのなら、その希望にすがりたいと思ったのも事実です。けれど・・・信じすぎて裏切られるのは嫌です。だから、もしもの時は自分の手でテオを守るのだと心に決めなくては。

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