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第1章 高校生活は暗闇で
9 ボロ雑巾の作り方
残念ながら俺の願いは届かなかったようだ。
誰も助けに来ないまま、特訓は始まってしまった。
「じゃあまず軽くランニングから」
ちっとも軽くなかった。
実業団のランナーを煽るような速度で、30分引っ張り回される。
次はフルコンタクトで、格闘戦の実戦練習。
開始直後は最初は委員長といえど女の子、見た目にも何だし、組んだり戦ったりしていいのかなという遠慮があった。
しかし始めて10秒以内に、俺は本能で悟った。
本気で行かないと俺が死ぬと。
結果、開始30分でもう俺、ボロ雑巾。
吸血鬼ハイブリッドにも、体力気力ともに限界はある。
打ち身だろうと骨折だろうと数秒で治る、この体が逆に恨めしい。
疲れと痛みが無い訳ではないのだから。
「じゃあ、ちょっと休憩しようか」
委員長のその言葉を聞いた途端、もう倒れそうになる。
何とか倒れず、その場にべたっと腰を下ろして休憩だ。
服は一応、運動用のスウェットに着替えている。
倒れたり何だりで、既にボロボロだけれども。
反対に委員長のグレーのカプリパンツとかピンクのパーカーは、全然汚れていない。
本人も軽く汗をかいた程度だ。
彼女はバッグからボトルを取り出して蓋を開ける。
「ん、飲んで。その方が少しは楽になるし」
お礼を言う気力は無いが、ありがたくいただく事にする。
飲んでみると、冷えたちょっと薄めのスポーツドリンク。
喉にすっと入って気持ちいい。
ちょっとだけ、気力が戻ってきた。
ちょっとだけだ、あくまで。
「ありがとう」
ボトルを委員長に返す。
「それにしても委員長、強いな」
まごう事なき俺の実感だ。
「ん、まあね。積み重ねた時間の差だよ」
彼女はそう言って、俺から受け取ったペットボトルをそのまま口へ。
おい、間接キッスだぞ、とは言わないけれど思ってしまう。
委員長は気にしていないようだけれども。
というか、こう見るとやっぱり委員長、可愛い事は可愛い。
今のパステルカラーの格好も似合っている。
運動能力や格闘能力は鬼だけれど。
腕も足も特に太いとか筋肉という印象は無い。
中肉中背、胸はちょっと大きめかな。
とにかくどう見ても普通の女の子にしか見えない。
見ただけなら。
「ん、でも佐貫君、思った以上に健闘しているよ。とりあえずこのメニューに、初日からついて来ているもの」
ついて行けてません、死にそうです。
それが俺の本音だけれど、勿論口には出さない。
「半年前に、うちのクラスの勝田君、虎男なんだけれど一緒に訓練したいと言うからね。同じように一緒に訓練をしたんだけれどね。体力に自信があるって言うから、大丈夫だと思ったんだけれども、最初のウォームアップのランニングでもうバテバテ。格闘練習を始めて5分で倒れて気絶しちゃった。それを思うと佐貫君は凄いと思うよ」
いや、その虎男勝田君がむしろ普通なのだ、間違いなく。
それにネコ科の動物は瞬発力系で、持久力は無いって言うし。
人外や妖怪に通用するかは不明だけれども。
「ん、休憩はあと3分。後はクールダウンのランニングだけだから」
えっ、あと3分?
それにランニングだけ、というのも怪しい。
何せウォームアップのランニング、いきなり全力疾走に近い状態だったし。
そう思いつつも、取り敢えず俺は全力で休憩に専念する。
◇◇◇
クールダウンのランニングは、本当に普通のランニングだった。
最初のウォームアップで慣れた、というのもあるのだろうけれど。
何というか、予想外だ。
「ん、ゆっくりな分、足や体の筋肉を色々意識してね」
「了解」
話しながら走る余裕がある。
なのでちょっと委員長に聞いてみる事にした。
「そう言えば委員長の能力って何なんだ。やっぱり格闘とか肉体強化の方なのか。言いたくなければ言わなくてもいいけれど」
「ん、別に隠すことも無いし大丈夫だよ」
そう言って委員長は説明を始める。
「私の場合は典型的な狸型かな。どちらかというと術主体の。具体的に言うと精神操作系統色々と、あと天眼通ね。
精神操作はまあ、そのままの能力。欺瞞とかから始まってある程度表層思考をコントロールしたりも出来るかな。まだ完全じゃ無いから言語化した思考で無いと読めないけれどね」
トレーニングした限りでは、完全な肉体言語系としか思えないのだけれど。
委員長の説明は更に続く。
「あと対象がそれを許せば、乗っ取って完全に私の操作で動かす事も可能だよ。まあこれは相手が受け入れてくれる場合しか使えないから、使いどころがない能力だけれども。天眼通はお兄の慧眼通の一歩手前の能力。物事の性質がわかったり隠された事象に気づいたりする能力。慧眼通みたいに能力の強制解放とか、事象を操作する能力は無いけれどね。特殊な能力と言えばそんなところかな。お兄に比べるとまだまだってところね」
柿岡先輩の事を尊敬しているのは変わらないようだ。
さっき喧嘩したばかりなのに、
あと、今の説明で気になった事を確認しておきたい。
「肉体強化は特にしていないんだ」
今まで鍛えていなかったとは言え、仮にも吸血鬼ハイブリッドである俺が、死ぬかと思うような訓練だったのだ。
だから何らかの身体強化をしている可能性は、充分にあると思うのだけれど。
「ん、身体強化はやろうと思えば出来るけれどね。でも、今の私は使っていないよ。強化に頼ると格闘技術とかがおろそかになるからね。格闘技術はあくまで技術メイン」
誰も助けに来ないまま、特訓は始まってしまった。
「じゃあまず軽くランニングから」
ちっとも軽くなかった。
実業団のランナーを煽るような速度で、30分引っ張り回される。
次はフルコンタクトで、格闘戦の実戦練習。
開始直後は最初は委員長といえど女の子、見た目にも何だし、組んだり戦ったりしていいのかなという遠慮があった。
しかし始めて10秒以内に、俺は本能で悟った。
本気で行かないと俺が死ぬと。
結果、開始30分でもう俺、ボロ雑巾。
吸血鬼ハイブリッドにも、体力気力ともに限界はある。
打ち身だろうと骨折だろうと数秒で治る、この体が逆に恨めしい。
疲れと痛みが無い訳ではないのだから。
「じゃあ、ちょっと休憩しようか」
委員長のその言葉を聞いた途端、もう倒れそうになる。
何とか倒れず、その場にべたっと腰を下ろして休憩だ。
服は一応、運動用のスウェットに着替えている。
倒れたり何だりで、既にボロボロだけれども。
反対に委員長のグレーのカプリパンツとかピンクのパーカーは、全然汚れていない。
本人も軽く汗をかいた程度だ。
彼女はバッグからボトルを取り出して蓋を開ける。
「ん、飲んで。その方が少しは楽になるし」
お礼を言う気力は無いが、ありがたくいただく事にする。
飲んでみると、冷えたちょっと薄めのスポーツドリンク。
喉にすっと入って気持ちいい。
ちょっとだけ、気力が戻ってきた。
ちょっとだけだ、あくまで。
「ありがとう」
ボトルを委員長に返す。
「それにしても委員長、強いな」
まごう事なき俺の実感だ。
「ん、まあね。積み重ねた時間の差だよ」
彼女はそう言って、俺から受け取ったペットボトルをそのまま口へ。
おい、間接キッスだぞ、とは言わないけれど思ってしまう。
委員長は気にしていないようだけれども。
というか、こう見るとやっぱり委員長、可愛い事は可愛い。
今のパステルカラーの格好も似合っている。
運動能力や格闘能力は鬼だけれど。
腕も足も特に太いとか筋肉という印象は無い。
中肉中背、胸はちょっと大きめかな。
とにかくどう見ても普通の女の子にしか見えない。
見ただけなら。
「ん、でも佐貫君、思った以上に健闘しているよ。とりあえずこのメニューに、初日からついて来ているもの」
ついて行けてません、死にそうです。
それが俺の本音だけれど、勿論口には出さない。
「半年前に、うちのクラスの勝田君、虎男なんだけれど一緒に訓練したいと言うからね。同じように一緒に訓練をしたんだけれどね。体力に自信があるって言うから、大丈夫だと思ったんだけれども、最初のウォームアップのランニングでもうバテバテ。格闘練習を始めて5分で倒れて気絶しちゃった。それを思うと佐貫君は凄いと思うよ」
いや、その虎男勝田君がむしろ普通なのだ、間違いなく。
それにネコ科の動物は瞬発力系で、持久力は無いって言うし。
人外や妖怪に通用するかは不明だけれども。
「ん、休憩はあと3分。後はクールダウンのランニングだけだから」
えっ、あと3分?
それにランニングだけ、というのも怪しい。
何せウォームアップのランニング、いきなり全力疾走に近い状態だったし。
そう思いつつも、取り敢えず俺は全力で休憩に専念する。
◇◇◇
クールダウンのランニングは、本当に普通のランニングだった。
最初のウォームアップで慣れた、というのもあるのだろうけれど。
何というか、予想外だ。
「ん、ゆっくりな分、足や体の筋肉を色々意識してね」
「了解」
話しながら走る余裕がある。
なのでちょっと委員長に聞いてみる事にした。
「そう言えば委員長の能力って何なんだ。やっぱり格闘とか肉体強化の方なのか。言いたくなければ言わなくてもいいけれど」
「ん、別に隠すことも無いし大丈夫だよ」
そう言って委員長は説明を始める。
「私の場合は典型的な狸型かな。どちらかというと術主体の。具体的に言うと精神操作系統色々と、あと天眼通ね。
精神操作はまあ、そのままの能力。欺瞞とかから始まってある程度表層思考をコントロールしたりも出来るかな。まだ完全じゃ無いから言語化した思考で無いと読めないけれどね」
トレーニングした限りでは、完全な肉体言語系としか思えないのだけれど。
委員長の説明は更に続く。
「あと対象がそれを許せば、乗っ取って完全に私の操作で動かす事も可能だよ。まあこれは相手が受け入れてくれる場合しか使えないから、使いどころがない能力だけれども。天眼通はお兄の慧眼通の一歩手前の能力。物事の性質がわかったり隠された事象に気づいたりする能力。慧眼通みたいに能力の強制解放とか、事象を操作する能力は無いけれどね。特殊な能力と言えばそんなところかな。お兄に比べるとまだまだってところね」
柿岡先輩の事を尊敬しているのは変わらないようだ。
さっき喧嘩したばかりなのに、
あと、今の説明で気になった事を確認しておきたい。
「肉体強化は特にしていないんだ」
今まで鍛えていなかったとは言え、仮にも吸血鬼ハイブリッドである俺が、死ぬかと思うような訓練だったのだ。
だから何らかの身体強化をしている可能性は、充分にあると思うのだけれど。
「ん、身体強化はやろうと思えば出来るけれどね。でも、今の私は使っていないよ。強化に頼ると格闘技術とかがおろそかになるからね。格闘技術はあくまで技術メイン」
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