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第3章 次の犠牲者?
第36話 召喚して相談しよう
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前回作ったカンディルーのフライは、大食漢の猫により全滅した。
いくらこっそり料理を作ろうと、それが魚介類である限り、ミーニャさんからは逃れ得ない。
以上、これまでの経験則だ。
しかし今回は相談したい事がある。
だから出てきてくれた方がありがたい。
だから堂々と作らせてもらう。
魔魚カンディルーのフライと甘露煮、すまし汁を。
盛り付けそのものは2人分作っておく。
ただし1人分は魔法収納に入れて、何時でも出せるように。
ちょうど盛り付けが終わったところでノッカーの音がした。
予想通りだ。
「どうぞ」
そう言って、門扉の鍵を魔法で開ける。
そうすれば別に迎えに行かなくても勝手に入ってくるだろう。
今までの襲撃からそう把握済みだ。
「今日もいい臭いがするニャ」
案の上ミーニャさん、あっさりと入ってきた。
玄関から堂々と、ここリビングまで。
「食べていきますか」
「ありがとニャ。あと申し訳程度ニャけれど、お土産ニャ」
ミーニャさんが持ってきたのは、布製のそこそこ大きな巾着袋。
何だろう。魔法収納に収納していたもう1人分を並べながら透視魔法で確認。
香辛料セットだった。
袋の中に瓶に入った香辛料が十数種類入っている。
種類はタイム、フェンネル、オールスパイス、セージ、タラゴン、バジル、ローズマリー、ブラックペッパー、マスタード、チリパウダー……
「これって買うと、結構高いんじゃないですか?」
ペッパー類とかオールスパイスとか、この辺で取れない香辛料はかなりお高い値段だった筈だ。
市場で確認したから知っている。
バジルとかローズマリーなどこの辺でも収穫出来るハーブはともかくとして。
「商業ギルドにいると、配送事故その他でお買い得品が出てくるのニャ。香辛料は重さの割に単価が高いから、長距離輸送が多くて、その結果配送事故もよく出てくるのニャ」
なるほど、そんなこともある訳か。
正直ありがたい。
こういった香辛料、あるのと無いのでは料理に差が出てしまうのだ。
「ありがとうございます。それではいただきます」
「こちらこそ、いつもお世話になっているのニャ。おかげで最近絶好調なのニャ。ついでに言うと今日で商業ギルド研修も終了で、明日からは冒険者ギルドに戻れるのニャ」
それはそれは。
「おめでとうございます」
俺としても知っている人が冒険者ギルドにいてくれると、何かと安心だ。
知っている人でもクリスタさんは微妙だけれども。
むしろ不安を招く、なんて事もあるから。
さて、それでは本題に入るとしよう。
「それで今日、一緒に村から出てきた友人と2人で、クリスタさんに依頼の斡旋を受けたのですけれど……」
◇◇◇
ミーニャさんはひととおり聞いた後、うんうんと頷いた。
「依頼の内容そのものは、わからニャいのニャ。でもその依頼に参加する戦士と補助魔法使いはわかるのニャ。
そして3人の依頼の方はともかくとして、4人で行く方の依頼は、おそらくはかなり過酷なものと予想出来るのニャ」
えっ。でもまあ、そんな気がしていなかったかというと嘘になるけれど。
「どうしてわかるんですか?」
一応根拠を聞いておく。
「まず戦士というのは十中八九、私ニャ。今は初心者講習でポールのパーティが使えないから、稼働できるC級の戦士が他にいないのニャ。中部や北部から冒険者を派遣して貰えば別ニャけれど、その日程なら多分他からの呼び寄せはないニャ。事前相談は受けていないけれど、ギルド職員なので無理なもの以外は受けざるを得ないニャ」
ミーニャさんがそう言うのなら、きっとそうなのだろう。
ただミーニャさんが一緒なら、ある意味安心出来る。
戦闘能力はまだよく知らないけれど、少なくとも人間関係で問題になる事はないだろうから。
「そして補助魔法使いで、氷系統と風系統の攻撃魔法まで使える、なんてとんでもないのは、国内探してもほとんどいないニャ。ましてや西部のこんな田舎に来るような人なんて、1人しかいないのニャ。間違いなくあれなのニャ」
あれとはつまり……
「クリスタさんですか」
「その名は禁句なのニャ」
確かに言われてみれば、その通りかもしれない。
少なくともそんな魔法使い、数が少ないのは確かだろう。
「そしてアレが自分から出てくる場合のほとんどは、自分がいないと危ないと判断した時なのニャ。つまりアレがいないと間違いなくヤバい、とんでも依頼なのは間違いないニャ。ああ、折角冒険者ギルドに帰ったと思ったら、またこんなお仕事なのニャ……」
確かに戦士=ミーニャさん、補助魔法使い=クリスタさんと言われると頷ける面がある。
クリスタさんによると戦士は『性格的にも初心者には親切で親しみやすいです。欠点は若干大食い』。
確かにミーニャさんならその通りだろう。
そして『補助魔法使いの移動については考えなくても問題ありません』と言っていた。
クリスタさんなら高速移動魔法を使えるから移動で問題になる事はない。
『あまり手間はかけたくないので、二泊三日と最小限の日程になります』というのもクリスタさんらしい気がする。
ただそれでも疑問が残る。
「しかしそんな、クリスタさん自身が出るような依頼に、何故ジョンを参加させようと思ったのでしょうか」
「おそらくそのジョン君は、現時点で既にD級クラス以上の実力があるのニャ。もしそう見えなかったのなら、出来ない振りをしているのニャ」
えっ、あのジョンが……
しかし、そう言われてみれば、思い当たる事がない訳でもない。
文字が読めない筈なのに、最初の依頼をどうやって受けたかとか。
現時点で既に、文字の読み書きが出来ているとか。
「確かにそうなのかもしれません」
「あれの目は確かなのニャ。まず間違える事はないのニャ」
ミーニャさん、クリスタさんの判断力や魔法その他の実力はしっかり評価しているようだ。
でもクリスタさん側も、ミーニャさんの事を相当高く評価している感じだったなと思い出す。
『戦力としては並のB級以上と思っていただいて結構です。剣も槍も人並み以上に使いますが、本来は籠手を使用した近接格闘術を得意としています』
なんて事を言っていたし。
「それで、とりあえず3人で行く方の依頼について、教えてもらっていいかニャ」
そうだ、ミーニャさんが参加するのなら、今のうちにある程度伝えられる事は伝えておこう。
その方が顔合わせの時に面倒がなくてすむし。
「そちらの依頼は魔魚カンディルーの討伐です。魔魚カンディルーとは、今食べているこの魚で……」
いくらこっそり料理を作ろうと、それが魚介類である限り、ミーニャさんからは逃れ得ない。
以上、これまでの経験則だ。
しかし今回は相談したい事がある。
だから出てきてくれた方がありがたい。
だから堂々と作らせてもらう。
魔魚カンディルーのフライと甘露煮、すまし汁を。
盛り付けそのものは2人分作っておく。
ただし1人分は魔法収納に入れて、何時でも出せるように。
ちょうど盛り付けが終わったところでノッカーの音がした。
予想通りだ。
「どうぞ」
そう言って、門扉の鍵を魔法で開ける。
そうすれば別に迎えに行かなくても勝手に入ってくるだろう。
今までの襲撃からそう把握済みだ。
「今日もいい臭いがするニャ」
案の上ミーニャさん、あっさりと入ってきた。
玄関から堂々と、ここリビングまで。
「食べていきますか」
「ありがとニャ。あと申し訳程度ニャけれど、お土産ニャ」
ミーニャさんが持ってきたのは、布製のそこそこ大きな巾着袋。
何だろう。魔法収納に収納していたもう1人分を並べながら透視魔法で確認。
香辛料セットだった。
袋の中に瓶に入った香辛料が十数種類入っている。
種類はタイム、フェンネル、オールスパイス、セージ、タラゴン、バジル、ローズマリー、ブラックペッパー、マスタード、チリパウダー……
「これって買うと、結構高いんじゃないですか?」
ペッパー類とかオールスパイスとか、この辺で取れない香辛料はかなりお高い値段だった筈だ。
市場で確認したから知っている。
バジルとかローズマリーなどこの辺でも収穫出来るハーブはともかくとして。
「商業ギルドにいると、配送事故その他でお買い得品が出てくるのニャ。香辛料は重さの割に単価が高いから、長距離輸送が多くて、その結果配送事故もよく出てくるのニャ」
なるほど、そんなこともある訳か。
正直ありがたい。
こういった香辛料、あるのと無いのでは料理に差が出てしまうのだ。
「ありがとうございます。それではいただきます」
「こちらこそ、いつもお世話になっているのニャ。おかげで最近絶好調なのニャ。ついでに言うと今日で商業ギルド研修も終了で、明日からは冒険者ギルドに戻れるのニャ」
それはそれは。
「おめでとうございます」
俺としても知っている人が冒険者ギルドにいてくれると、何かと安心だ。
知っている人でもクリスタさんは微妙だけれども。
むしろ不安を招く、なんて事もあるから。
さて、それでは本題に入るとしよう。
「それで今日、一緒に村から出てきた友人と2人で、クリスタさんに依頼の斡旋を受けたのですけれど……」
◇◇◇
ミーニャさんはひととおり聞いた後、うんうんと頷いた。
「依頼の内容そのものは、わからニャいのニャ。でもその依頼に参加する戦士と補助魔法使いはわかるのニャ。
そして3人の依頼の方はともかくとして、4人で行く方の依頼は、おそらくはかなり過酷なものと予想出来るのニャ」
えっ。でもまあ、そんな気がしていなかったかというと嘘になるけれど。
「どうしてわかるんですか?」
一応根拠を聞いておく。
「まず戦士というのは十中八九、私ニャ。今は初心者講習でポールのパーティが使えないから、稼働できるC級の戦士が他にいないのニャ。中部や北部から冒険者を派遣して貰えば別ニャけれど、その日程なら多分他からの呼び寄せはないニャ。事前相談は受けていないけれど、ギルド職員なので無理なもの以外は受けざるを得ないニャ」
ミーニャさんがそう言うのなら、きっとそうなのだろう。
ただミーニャさんが一緒なら、ある意味安心出来る。
戦闘能力はまだよく知らないけれど、少なくとも人間関係で問題になる事はないだろうから。
「そして補助魔法使いで、氷系統と風系統の攻撃魔法まで使える、なんてとんでもないのは、国内探してもほとんどいないニャ。ましてや西部のこんな田舎に来るような人なんて、1人しかいないのニャ。間違いなくあれなのニャ」
あれとはつまり……
「クリスタさんですか」
「その名は禁句なのニャ」
確かに言われてみれば、その通りかもしれない。
少なくともそんな魔法使い、数が少ないのは確かだろう。
「そしてアレが自分から出てくる場合のほとんどは、自分がいないと危ないと判断した時なのニャ。つまりアレがいないと間違いなくヤバい、とんでも依頼なのは間違いないニャ。ああ、折角冒険者ギルドに帰ったと思ったら、またこんなお仕事なのニャ……」
確かに戦士=ミーニャさん、補助魔法使い=クリスタさんと言われると頷ける面がある。
クリスタさんによると戦士は『性格的にも初心者には親切で親しみやすいです。欠点は若干大食い』。
確かにミーニャさんならその通りだろう。
そして『補助魔法使いの移動については考えなくても問題ありません』と言っていた。
クリスタさんなら高速移動魔法を使えるから移動で問題になる事はない。
『あまり手間はかけたくないので、二泊三日と最小限の日程になります』というのもクリスタさんらしい気がする。
ただそれでも疑問が残る。
「しかしそんな、クリスタさん自身が出るような依頼に、何故ジョンを参加させようと思ったのでしょうか」
「おそらくそのジョン君は、現時点で既にD級クラス以上の実力があるのニャ。もしそう見えなかったのなら、出来ない振りをしているのニャ」
えっ、あのジョンが……
しかし、そう言われてみれば、思い当たる事がない訳でもない。
文字が読めない筈なのに、最初の依頼をどうやって受けたかとか。
現時点で既に、文字の読み書きが出来ているとか。
「確かにそうなのかもしれません」
「あれの目は確かなのニャ。まず間違える事はないのニャ」
ミーニャさん、クリスタさんの判断力や魔法その他の実力はしっかり評価しているようだ。
でもクリスタさん側も、ミーニャさんの事を相当高く評価している感じだったなと思い出す。
『戦力としては並のB級以上と思っていただいて結構です。剣も槍も人並み以上に使いますが、本来は籠手を使用した近接格闘術を得意としています』
なんて事を言っていたし。
「それで、とりあえず3人で行く方の依頼について、教えてもらっていいかニャ」
そうだ、ミーニャさんが参加するのなら、今のうちにある程度伝えられる事は伝えておこう。
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