元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々

於田縫紀

文字の大きさ
52 / 67
第4章 廃坑調査

第50話 最初の分岐にて

「それでは中に入りましょう。倒した魔物の魔石や、素材になりそうな死骸は私が回収します。照明魔法も私が起動します。ですので皆さんは警戒と魔物討伐、ルート開拓に専念して下さい」

「わかったニャ」

「わかりました」

「わかりました」

 俺としてもそうしてくれると助かる。
 特に今のようにある程度の範囲の敵を一気に倒した場合は。

 あちこちに感電して倒れた魔物の死骸がある。
 魔石は魔力反応があるから、見逃す事はない。

 しかしこれだけ死骸があると、手動で回収すると時間が掛かる。
 転送魔法を使うとその分魔力を消耗する。
 この先でも魔法で攻撃をする必要があるなら、魔力は出来るだけ残しておいた方がいい。

 それに回収作業をしなければ、その分魔力探査と透視魔法による索敵に集中できる。

「それニャあ、基本的に本坑を真っ直ぐ進むのニャ。何かありそうならエイダン、よろしくなのニャ」

「わかりました」

 ミーニャさんにあわせて、ゆっくり歩き出す。
 電撃が通った60m程度の間は魔物も魔獣もいない。
 しかし、その先は。

「60m位先から小さめの魔物反応がそこここにあります。ポイズンスライムとポイズントードですけれど、またある程度近づいたら電撃でいいでしょうか」

「そうしてくれると楽なのニャ。ポイスラもポイトドも毒を飛ばしてくるので面倒なのニャ。クリスタがいるから解毒は問題ニャいけど、毒に触れると装備とお肌が荒れるのニャ」

 ミーニャさん的にはまだ全然余裕っぽい感じだ。
 お肌が荒れるのを気にする程度という事だから。

 電撃魔法を放って、50m位進んでを更に⒉回。
 入口から150m程度進んだところで、様子が違う場所に出た。
 ちょっとした広場のようになっていて、道が3つに分かれている。

 右がこの鉱山初期の採掘坑で、廃坑になった頃は倉庫代わりになっていた場所。
 中央が廃坑当時に掘っていた採掘場所へ続く坑道。
 左がドワーフの居住区や生活関連施設を経て、カサクラの村に出る洞窟。
 ただしカサクラの村への出口は急な下り階段で、かつ今は閉鎖されている筈。

 進むべきなのは中央の坑道だ。
 ただし魔物や魔獣に挟撃されないよう、左右の坑道の先に魔物や魔獣がいないか確認する必要がある。

「エイダン、どうかニャ、左右は」

 右は何も反応が無い。
 問題は左だ。小さい反応が多数ある。これは……

「左の居住区にゾンビバットがいるようです。数は30匹以上。ただ居住区は個室が多くて、雷撃魔法で一掃は無理な感じです」

 洞窟内に居住区を設けるのはドワーフの習性だ。
 少なくとも前世ではそうだった。
 そして居住区は店だの家だのといった小洞窟があちこちに掘られているので、ひとつひとつを回ると手間がかかる。

「わかったのニャ。なら私とジョンの出番なのニャ。バット系の魔物は敵の気配が一定以上近づくと飛んで、攻撃か逃げるかしてくるのニャ。それを利用して叩くニャ」

 つまり近づいて攻撃という訳か。
 でも逃げられたら面倒だよな。
 そう思ったら更にミーニャさんが説明を追加する。

「逃げるバットにはジョンに弓で攻撃して欲しいのニャ。必ずしも当てなくていいのニャ。こちらが攻撃する意図があるとバットにわからせればいいのニャ。そうすれば逃げようとしたバットも逃げずに攻撃してくるのニャ」

「わかりました。それで弓で攻撃したバットが近づいてきた場合は、槍に持ち替えればいいですか」

 確かに弓で攻撃されたバットは、第一にジョンを狙ってくるだろう。
 そして飛んでいる敵に矢を当てるのは難しそうだ。
 そう思ったのだが、ミーニャさんは首を横に振った。

「ジョンは弓に専念して欲しいのニャ。そのかわり近づいたバットは必ず私が倒すのニャ。たかだか100匹以下なら問題無いのニャ」

 100匹が一斉に飛んで襲ってくるって、結構な修羅場ではないのだろうか。
 まあ今回は多くても40匹程度だけれど。

「わかりました」

 大丈夫なのだろうか、ジョンは。
 クリスタさんが何も言わない時点で、問題はないだろうと思うけれど。

「それじゃジョン、槍を貸して欲しいのニャ。もう1本の槍もエイダンに持ってきて貰っているのニャが、そっちの長い槍の方がバットを相手にしやすいのニャ」

 おっと、それじゃジョンが弓以外武器無しになってしまう。
 そこは近接戦用に何かあった方が安心だろう。

 でもミーニャさん用の武器は、基本的にジョンには重すぎる。
 となると、ちょうどいいのは……
 
 俺は取り敢えず一番自衛用に良さそうな刃物を、魔法収納アイテムボックスから出す。

「近接戦闘用が無しじゃ何だから、これを貸すよ」
 
 渡したのはソウギョを捌くために作った出刃包丁だ。
 一応鞘もついているし、ベルトに留められるようにもなっている。
 それに刃物としての性能は、その辺のナイフより上の筈だ。

「悪いな、それじゃ借りていく」

「ああ。 そっちは任せた」

 ミーニャさんは俺とジョンのやりとりを見て、そして頷いた。

「それじゃ2人で、ちょいちょいとバットを討伐してくるのニャ。そう時間はかからニャいと思うから、のんびりここで待っていてほしいのにゃ」

 そう言って、そして去って行く2人を見て、俺は思った。
 いいのだろうか、後衛を置いて前衛だけで出て行くなんてと。

 しかし後方の魔物は全滅させている。
 前方は真っ直ぐに近い坑道なので、俺の電撃魔法が使えるだろう。

 そもそもクリスタさんがいる時点でどうにでもなるような気がする。
 だから置いて行かれた後衛が危険という事は多分、無い。

 そしてジョン達の方も、多分問題ないのだろう。
 ミーニャさん、バット100匹以下なら全然余裕という感じだ。
 ジョンがいなくてもどうにでもなる位に。

 それでもジョンを連れて行くのは、こういった場でどれくらい戦力になるか確かめるためだろう。
 ジョンもそのことは、わかっているだろうけれど。
感想 0

あなたにおすすめの小説

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

伯爵家の三男に転生しました。風属性と回復属性で成り上がります

竹桜
ファンタジー
 武田健人は、消防士として、風力発電所の事故に駆けつけ、救助活動をしている途中に、上から瓦礫が降ってきて、それに踏み潰されてしまった。次に、目が覚めると真っ白な空間にいた。そして、神と名乗る男が出てきて、ほとんど説明がないまま異世界転生をしてしまう。  転生してから、ステータスを見てみると、風属性と回復属性だけ適性が10もあった。この世界では、5が最大と言われていた。俺の異世界転生は、どうなってしまうんだ。  

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

転生先ではゆっくりと生きたい

ひつじ
ファンタジー
勉強を頑張っても、仕事を頑張っても誰からも愛されなかったし必要とされなかった藤田明彦。 事故で死んだ明彦が出会ったのは…… 転生先では愛されたいし必要とされたい。明彦改めソラはこの広い空を見ながらゆっくりと生きることを決めた 小説家になろうでも連載中です。 なろうの方が話数が多いです。 https://ncode.syosetu.com/n8964gh/

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

異世界に転生した社畜は調合師としてのんびりと生きていく。~ただの生産職だと思っていたら、結構ヤバい職でした~

夢宮
ファンタジー
台風が接近していて避難勧告が出されているにも関わらず出勤させられていた社畜──渡部与一《わたべよいち》。 雨で視界が悪いなか、信号無視をした車との接触事故で命を落としてしまう。 女神に即断即決で異世界転生を決められ、パパっと送り出されてしまうのだが、幸いなことに女神の気遣いによって職業とスキルを手に入れる──生産職の『調合師』という職業とそのスキルを。 異世界に転生してからふたりの少女に助けられ、港町へと向かい、物語は動き始める。 調合師としての立場を知り、それを利用しようとする者に悩まされながらも生きていく。 そんな与一ののんびりしたくてものんびりできない異世界生活が今、始まる。 ※2話から登場人物の描写に入りますので、のんびりと読んでいただけたらなと思います。 ※サブタイトル追加しました。

公爵家次男はちょっと変わりモノ? ~ここは乙女ゲームの世界だから、デブなら婚約破棄されると思っていました~

松原 透
ファンタジー
異世界に転生した俺は、婚約破棄をされるため誰も成し得なかったデブに進化する。 なぜそんな事になったのか……目が覚めると、ローバン公爵家次男のアレスという少年の姿に変わっていた。 生まれ変わったことで、異世界を満喫していた俺は冒険者に憧れる。訓練中に、魔獣に襲われていたミーアを助けることになったが……。 しかし俺は、失敗をしてしまう。責任を取らされる形で、ミーアを婚約者として迎え入れることになった。その婚約者に奇妙な違和感を感じていた。 二人である場所へと行ったことで、この異世界が乙女ゲームだったことを理解した。 婚約破棄されるためのデブとなり、陰ながらミーアを守るため奮闘する日々が始まる……はずだった。 カクヨム様 小説家になろう様でも掲載してます。