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第4章 廃坑調査
第57話 便利? な妖精
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妖精使役か。俺は使わない魔法だ。
前世の知識で知ってはいる。
妖精とは魔素を使用して生み出された疑似生物で、ある程度の自己判断能力があり、命令を与えて使役する事が可能。
この自己判断能力が曲者なのだ。
この能力によって、こっちの命令を忠実に実行しなくなっている。
自分勝手で幼稚な判断をしてしまうなんて事が往々にして起こるのだ。
かつての俺の職場では、業務に妖精を使役する事を禁止していた。
それでも便利でローコストなので、妖精を使う奴は絶えなかった。
俺がいた職場でも妖精の自己判断による現場操作によって、爆発事故が起こりかけた。
別の部署では水力式大型祈祷装置の破裂なんて重大事故が発生したなんて事もある。
だから俺は妖精を使っていなかったし信用もしていない。
だから妖精を使うというのは正直不安だ。
ただし他にもっといい代案なんてのは思いつかない。
仕方ないかと思ったところで。
「大丈夫かニャ?」
俺では無くミーニャさんから異議が入った。
「前にも妖精を偵察に飛ばした結果、魔物がこっちに押し寄せて来た事があったのニャ」
どうやらこの世界の、そしてクリスタさんが使役する妖精も、俺の知識にあるものと同様なもののようだ。
「ええ、ですが見つかっても、こちらへ敵がやってきても問題ありません。むしろ変異しているおそれがある穴の向こう側より、こちらで戦った方が安全でしょう。今の状況と穴の大きさから考えて、あの穴を通ってくる事が想定される敵は、スケルトンの上位種までです。その程度ならミーニャさんがいれば問題ないでしょうから」
確信犯だったか、クリスタさん。
そしてミーニャさんは憮然とした表情だ。
「私でもスケルトンが20体を超えると面倒なのニャ。そもそも猫獣人は持続力が無いのニャ」
「ゴブリン掃討戦の時よりはずっと楽だと思います」
「あれはもう勘弁なのニャ。40体以上倒した後に、ゴブリンジェネラルとタイマンなんて、二度とやりたくないのニャ」
何かとんでもない魔物の名前が出た気がする。
それでもミーニャさんの戦闘能力がとんでもレベルだとわかっているので、つっこまない。
「今回はジョンさんがいるからもっと楽でしょう。ある程度距離を置いて、穴から出てきた敵を片っ端から弓で倒して貰えば、ミーニャさん1人で戦うよりはずっとましな筈です」
そういう作戦だったわけか。それなら俺も納得だ。
ミーニャさんはふうっとため息をついた。
「クリスタと組むと往々にしてこういった無茶ぶりされるのニャ。ジョンは気張らず、出来る範囲でやってくれればいいのニャ。弓での魔物減らしを頼むのニャ」
それならばだ。
「何なら俺が雷撃魔法を連射しましょうか。60m位ならスケルトンでも倒せますけれど」
「エイダンは魔法を温存するべきなのニャ」
クリスタさんではなく、ミーニャさんから反対意見が出た。
「雷撃魔法はアンデッドを含む闇属性に特効があるのニャ。そして穴の先には何がいるかわからないのニャ。だからエイダンには可能な限り強力な雷撃魔法が撃てるよう、魔力をセーブしておいて欲しいのニャ」
今の状況を考えると正しい意見だろう。
「わかりました」
「という事で、おにぎりの追加が欲しいのニャ。甘い方と塩味の方、両方希望なのニャ」
最初におにぎりは10個出した。
そして俺、クリスタさん、ジョンは2個ずつ食べた。
それで充分お腹が膨れる程度には大きくしっかり握ってあった筈だ。
そして皿におにぎりは残っていない。
つまり2個で充分腹が膨れるおにぎりを、ミーニャさんは4個食べている事になる。
ただ、今までの経験でミーニャさんの胃袋の大きさは充分わかっている。
俺達の3倍くらいなら許容範囲だろう。
「わかりました。ただしこれは間食なので、1個ずつまでです」
「ありがとニャ」
◇◇◇
しっかり休憩した後。
50m先に穴が見える場所まで移動して、そこで魔物を待ち構える。
偵察にある程度時間がかかるそうなので、テーブルセットの椅子だけを出して並べておいた。
横並びに座っているが、ジョンは弓を左手に持ち、ミーニャさんは今度は手が届く範囲に斧二丁を置いている。
「10m先、あの岩の出っ張りから先はジョンに任せるのニャ。混戦になった際は、私を気にせず矢を射って欲しいのニャ。後ろから来る程度の矢なら避けられるから、気にする必要はニャいのニャ」
大丈夫なのだろうか、そう思ったらクリスタさんが頷いた。
「ミーニャなら心配いりません。狙って撃っても大丈夫です」
「流石にジョンに狙われると厳しいのニャ。速射が出来るから、5射目くらいには逃げ場がなくなるのニャ」
どうやら問題無さそうだ。
「それでは妖精を飛ばします」
クリスタさんの手元に魔力が発生した。
不可視属性をかけているようで目には見えない。
しかし魔力探知で、1体ではなく3体ほど発生させたのがわかる。
3体の魔力はゆっくりと穴の方へ進んでいき、そして穴の先へと消えた。
「妖精を送り込みました。上手くいけば時間差で戻ってきて、こちらに状況を報告する筈です」
「それでは臨戦態勢で待つのニャ。臨戦態勢と言っても疲れたらまずいのニャ。この距離があれば1秒くらいは準備にかけて大丈夫なのニャ。だから座ったまま、弓を手元に置いて、矢は矢筒の中に入れたままでいいのニャ」
「わかりました」
ミーニャさん、実戦的だし随時出てくる説明も親切だ。
ジョンには勉強になるだろうなと思いつつ、俺は坑道の先にある穴を目と魔力探知で警戒し続ける。
前世の知識で知ってはいる。
妖精とは魔素を使用して生み出された疑似生物で、ある程度の自己判断能力があり、命令を与えて使役する事が可能。
この自己判断能力が曲者なのだ。
この能力によって、こっちの命令を忠実に実行しなくなっている。
自分勝手で幼稚な判断をしてしまうなんて事が往々にして起こるのだ。
かつての俺の職場では、業務に妖精を使役する事を禁止していた。
それでも便利でローコストなので、妖精を使う奴は絶えなかった。
俺がいた職場でも妖精の自己判断による現場操作によって、爆発事故が起こりかけた。
別の部署では水力式大型祈祷装置の破裂なんて重大事故が発生したなんて事もある。
だから俺は妖精を使っていなかったし信用もしていない。
だから妖精を使うというのは正直不安だ。
ただし他にもっといい代案なんてのは思いつかない。
仕方ないかと思ったところで。
「大丈夫かニャ?」
俺では無くミーニャさんから異議が入った。
「前にも妖精を偵察に飛ばした結果、魔物がこっちに押し寄せて来た事があったのニャ」
どうやらこの世界の、そしてクリスタさんが使役する妖精も、俺の知識にあるものと同様なもののようだ。
「ええ、ですが見つかっても、こちらへ敵がやってきても問題ありません。むしろ変異しているおそれがある穴の向こう側より、こちらで戦った方が安全でしょう。今の状況と穴の大きさから考えて、あの穴を通ってくる事が想定される敵は、スケルトンの上位種までです。その程度ならミーニャさんがいれば問題ないでしょうから」
確信犯だったか、クリスタさん。
そしてミーニャさんは憮然とした表情だ。
「私でもスケルトンが20体を超えると面倒なのニャ。そもそも猫獣人は持続力が無いのニャ」
「ゴブリン掃討戦の時よりはずっと楽だと思います」
「あれはもう勘弁なのニャ。40体以上倒した後に、ゴブリンジェネラルとタイマンなんて、二度とやりたくないのニャ」
何かとんでもない魔物の名前が出た気がする。
それでもミーニャさんの戦闘能力がとんでもレベルだとわかっているので、つっこまない。
「今回はジョンさんがいるからもっと楽でしょう。ある程度距離を置いて、穴から出てきた敵を片っ端から弓で倒して貰えば、ミーニャさん1人で戦うよりはずっとましな筈です」
そういう作戦だったわけか。それなら俺も納得だ。
ミーニャさんはふうっとため息をついた。
「クリスタと組むと往々にしてこういった無茶ぶりされるのニャ。ジョンは気張らず、出来る範囲でやってくれればいいのニャ。弓での魔物減らしを頼むのニャ」
それならばだ。
「何なら俺が雷撃魔法を連射しましょうか。60m位ならスケルトンでも倒せますけれど」
「エイダンは魔法を温存するべきなのニャ」
クリスタさんではなく、ミーニャさんから反対意見が出た。
「雷撃魔法はアンデッドを含む闇属性に特効があるのニャ。そして穴の先には何がいるかわからないのニャ。だからエイダンには可能な限り強力な雷撃魔法が撃てるよう、魔力をセーブしておいて欲しいのニャ」
今の状況を考えると正しい意見だろう。
「わかりました」
「という事で、おにぎりの追加が欲しいのニャ。甘い方と塩味の方、両方希望なのニャ」
最初におにぎりは10個出した。
そして俺、クリスタさん、ジョンは2個ずつ食べた。
それで充分お腹が膨れる程度には大きくしっかり握ってあった筈だ。
そして皿におにぎりは残っていない。
つまり2個で充分腹が膨れるおにぎりを、ミーニャさんは4個食べている事になる。
ただ、今までの経験でミーニャさんの胃袋の大きさは充分わかっている。
俺達の3倍くらいなら許容範囲だろう。
「わかりました。ただしこれは間食なので、1個ずつまでです」
「ありがとニャ」
◇◇◇
しっかり休憩した後。
50m先に穴が見える場所まで移動して、そこで魔物を待ち構える。
偵察にある程度時間がかかるそうなので、テーブルセットの椅子だけを出して並べておいた。
横並びに座っているが、ジョンは弓を左手に持ち、ミーニャさんは今度は手が届く範囲に斧二丁を置いている。
「10m先、あの岩の出っ張りから先はジョンに任せるのニャ。混戦になった際は、私を気にせず矢を射って欲しいのニャ。後ろから来る程度の矢なら避けられるから、気にする必要はニャいのニャ」
大丈夫なのだろうか、そう思ったらクリスタさんが頷いた。
「ミーニャなら心配いりません。狙って撃っても大丈夫です」
「流石にジョンに狙われると厳しいのニャ。速射が出来るから、5射目くらいには逃げ場がなくなるのニャ」
どうやら問題無さそうだ。
「それでは妖精を飛ばします」
クリスタさんの手元に魔力が発生した。
不可視属性をかけているようで目には見えない。
しかし魔力探知で、1体ではなく3体ほど発生させたのがわかる。
3体の魔力はゆっくりと穴の方へ進んでいき、そして穴の先へと消えた。
「妖精を送り込みました。上手くいけば時間差で戻ってきて、こちらに状況を報告する筈です」
「それでは臨戦態勢で待つのニャ。臨戦態勢と言っても疲れたらまずいのニャ。この距離があれば1秒くらいは準備にかけて大丈夫なのニャ。だから座ったまま、弓を手元に置いて、矢は矢筒の中に入れたままでいいのニャ」
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