TS転生悪役令嬢ですが、フラグを壊しすぎて別のフラグが立ってしまいました

於田縫紀

文字の大きさ
78 / 92
第7章 逆恨みの戦塵

第78話 非常事態招集

しおりを挟む
 3週間が経過した。
 サクラエ教官はまだ戻ってこない。
 しかし手順込み魔法作成講習会は、残念ながら好評。終了の気配がまったく無い。

 しかし私というか中のおっさんは元々単なる公務員。大学時代に情報科学をかじっただけなのだ。
 だから正直、そろそろネタが無くなる。
 

 主な関数も制御文も説明したし、汎用ライブラリなんてのも作って配布した。
 それでも足りない場合に備えて、そういったものの設計の仕方も教えた。
 ついでにライブラリ共有の規則なんてものも作った。

 それだけではない。手順込み魔法を使った魔法呪文作成用エデイタ付き統合環境なんて大物まで作ってしまった。
 まあ私が欲しかったというのもあるけれども。

 この統合環境は我ながらよく出来たと思う。
 勿論パソコンなんてものは無いから基本は紙。なおこの世界は紙は植物紙で量産されていて使いやすい。

 紙とインクを用意すると、状況に応じて半自動で宣言文を記載するだけでなく、口述で単体呪文も記載できる。
 更にライブラリが必要な場合は、ある程度検索して自動で書き加えてくれたりもする。
 おまけで作成後のデバッグ機能やトレース機能までつけた。我ながら力作だ。

 だからもういいだろう。お役御免にしてくれ!
 サクラエ教官がいないので代わりにカナルハス教官に毎日そう訴えている。

 しかしカナルハス教官、全く言う事を聞いてくれない。

『学長の方針で、サクラエ教官が戻るまでは続けるようにとの事です』

 この一点張りだ。
 どうやらカナルハス教官、学内の立場がそこまで強くないらしい。つまり彼の一存では、そういった調整が出来ない模様。
 だったら早くサクラエ教官帰ってきてくれ。
 そう願いつつ、せめて学校外のダンジョン活動とその後のお風呂、更に夜のムフフな活動で何とか自分を取り戻す。

 そんな中、事件は起こった。
 午後の授業時間、私は主のいないサクラエ研究室に籠り、手順込み魔法統合環境のバグフィックスをしていた。
 講習生、そういっても本職は魔法研究所研究主任から、バグ報告を受けたのだ。

『魔力が足りない場合、途中で制御文の読み飛ばしが発生して予想外の呪文が起動してしまう』

 起動及び統合環境維持に、魔力が足りない場合の処理を考える。
 いっそこれも、汎用ライブラリのひとつとして別口に作成するか。そう考えていたその時だった。

 カンカンカーン、カンカンカーン、カンカンカーン、カンカンカーン……

 三点鐘がひたすら鳴り響いている。
 この合図を私は知っている。いや私だけでは無くここオーツェルグ、いやイワルミア王国のほとんどの者が知っている筈だ。

 これは警報だ。非常事態が発生している事を知らせる為の。
 これを聞いた場合、衛士や兵隊は最寄りの所属へ、冒険者はギルドへ、その他戦える者は最寄りの役所へ参集する義務がある。

 私も一応冒険者だ。しかもいつの間にかB級に昇級していたりする。
 本人は昇級申請なんてしていないのだが、後付けの功績で勝手に昇級されてしまったのだ。
 勿論貴族だし学生だからと言って逃げる事は可能だろう。
 しかしそれは私の矜持が許さない。

 ギルドに行かなければ、せめて商業街にあるギルド支部にでも。
 幸い装備類は常に持ち歩いている自在袋に入れたままだ。

 研究室を出てすぐ、廊下でカナルハス教官に出会った。ちょうどいい。

「非常事態なので冒険者ギルドへ行ってきます。これでもB級冒険者なので招集に応じる義務がありますから。明日の講習は非常事態対応の為中止と皆様に連絡をお願いいたします」

「ま、待ちたまえアンフィ―サ君……」

 待ってやらない。ちょうどいい機会だ。今週の講習は中止にさせて貰う。
 でもそれよりなにより非常事態の方が心配だ。一体何があったのだろうか。
 正直想像がつかない。政治情勢もこの国に関しては、正教会以外とは良好だった筈だし。

 ◇◇◇

 商業街にあるギルド支部に入る。既に何人かの冒険者が集まっていて一安心。
 こっちではなく、向こうのギルド本部に行けと言われたらどうしようかと思った。
 向こうはあまり治安が良くないのだ。

 勿論その辺の冒険者には負けない自信はある。
 どこぞの教官みたいな規格外は、そうそこらにいるとは思えない。
 しかし正当防衛とは言え、非常事態に冒険者の数を減らすような事はしたくない。

「冒険者の方は、こちらで冒険者証の提示をお願い致します」

 そう案内しているので窓口に並び、冒険者証を提示。
 受付嬢は提示された冒険者証をお馴染み誓いの水晶玉に通した後、名前と種別、職級を書いて冒険者証を戻してくれる。

 ちょうどいいチャンスなのでサクラエ教官直伝の偽名使用法を試してみる。
 見ると私の名前は『アンフィーサ・ミハルゼラ』、冒険者B級で魔法使いと記載されていた。
 よしよし、偽名使用法、成功だ。

 さて、集まったのはいいけれど、何が起きたのだろう。非常事態宣言の理由がまだわからない。
 他国の軍隊か魔獣の出現か古代兵器の暴走か。古代兵器なんてものがあればの話だけれど。

 ここオーツェルグで非常事態宣言が出された事なんて、私の知る限りでは一度も無い。
 だからこそ本気で何が起きたかわからない。気になる。
 誰かに聞きたいところだけれど、こんな処に知り合いはいない。

 というか私、微妙に回りから浮いているような気が……
 そう思って気づいた。王立学園の制服のままでだった事に。
 この学校に入っているのは、基本的に貴族や豪商人のお嬢様お坊ちゃま。そんなのが此処に来れば確かに浮くよな。

 しかし服を脱いで着替える訳にもいかない。どうしようと考え、サクラエ教官からローブを借りたままにしていた事を思い出す。
 とりあえずこれを羽織っておこう。そうすれば制服はそれほど目立たないだろうから。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

妖精族を統べる者

暇野無学
ファンタジー
目覚めた時は死の寸前であり、二人の意識が混ざり合う。母親の死後村を捨てて森に入るが、そこで出会ったのが小さな友人達。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

鑑定持ちの荷物番。英雄たちの「弱点」をこっそり塞いでいたら、彼女たちが俺から離れなくなった

仙道
ファンタジー
異世界の冒険者パーティで荷物番を務める俺は、名前もないようなMOBとして生きている。だが、俺には他者には扱えない「鑑定」スキルがあった。俺は自分の平穏な雇用を守るため、雇い主である女性冒険者たちの装備の致命的な欠陥や、本人すら気づかない体調の異変を「鑑定」で見抜き、誰にもバレずに密かに対処し続けていた。英雄になるつもりも、感謝されるつもりもない。あくまで業務の一環だ。しかし、致命的な危機を未然に回避され続けた彼女たちは、俺の完璧な管理なしでは生きていけないほどに依存し始めていた。剣聖、魔術師、聖女、ギルド職員。気付けば俺は、最強の美女たちに囲まれて逃げ場を失っていた。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

魔道具は歌う~パーティ追放後に最高ランクになった俺を幼馴染は信じない。後で気づいてももう遅い、今まで支えてくれた人達がいるから~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界転生者シナグルのスキルは傾聴。 音が良く聞こえるだけの取り柄のないものだった、 幼馴染と加入したパーティを追放され、魔道具に出会うまでは。 魔道具の秘密を解き明かしたシナグルは、魔道具職人と冒険者でSSSランクに登り詰めるのだった。 そして再び出会う幼馴染。 彼女は俺がSSSランクだとは信じなかった。 もういい。 密かにやってた支援も打ち切る。 俺以外にも魔道具職人はいるさ。 落ちぶれて行く追放したパーティ。 俺は客とほのぼのとした良い関係を築きながら、成長していくのだった。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...