102 / 266
第11章 冬合宿・おかわり ~冬休み合宿編・下~
第94話 合宿の終わり
しおりを挟む
おまけ合宿修了前日の夕刻。何とか蒸気自動車の模型が完成した。蒸気機関はもちろんハンドル、ブレーキ、サスペンション等必要な機構はほぼ組み込まれている。
車体は3人乗り3列プラス運転席プラス助手席。助手はライトや蒸気機関の給炭操作担当だ。
その気になれば運転席でも全部操作する事は可能ではあるけれど、どうせ皆で移動するのだからこの方がいい。
運転席はアクセルの場所で蒸気圧調整。ブレーキペダルはブレーキの位置。左手の位置にパーキングブレーキと逆転器、給炭機をつけた。
メーターパネルは実装していないが、実車には距離計と速度計、蒸気圧計と電圧計をつける予定だ。更に背後に牽引フックをつけ、荷車を牽引できるようにもする。
「これが出来れば水路が無い処も行けるな」
「本当の意味で自由に何処へでも行けますね」
「イーツクシマにも楽に行けるぞ」
あの馬車で酔ってミド・リーに強制睡眠をかけられたような事はもう無い訳だ。でも今の身体なら馬車だってもうだいじょうぶかもしれない。試す気はないけれど。
そして馬車といえば思い出す事がある。
「乗り心地はどうだろう」
俺が思ったのとほぼ同じ事をヨーコ先輩も考えたようだ。
「空気入りタイヤとバネとダンパーで大分ましになっていると思うよ。後は走らせながら改良しよう」
そう、今の俺達にはそういった技術がある。だからきっと問題無い。
「楽しみ」
「だね」
そしてそのまま夕食へ。メインは鹿魔獣スネ肉の煮込み。これがめっぽう美味しい。
肉そのものは脂が少なくさっぱり気味。これが口の中でほどよくとろける位に柔らかい。コラーゲンも多めで本当にとろとろという感じだ。
「美味しいな、この煮物」
「今日はナカさんが作ったのよ」
「牛か鹿で作るのですが、鹿魔獣《チデジカ》でも同じように出来ました」
味つけそのものは軽い塩味だけだろう。しかしタマネギや人参、それに肉がトロトロになっていてさっぱりだけれどコクがある深い味わいになっている。
そのままでも、パンを少し浸しても美味しい。
「こうやって人に作って貰うのもいいな。知らない美味しいものが食べられる」
「大体はミタキ君に作って貰っていましたから。今回は私とフールイ先輩で交互に作ってみたんです」
「合宿はこれが楽しい」
「確かに家で食べるより美味しいし楽しいな」
確かにそうだなと感じる。
更に今回はデザートまで出来ていた。クレープ風だけれど大分卵っぽい生地でしかもパリッとしている。そして中にはバターたっぷりで焼いた林檎入り。
これもまたいい感じで美味しい。これはフールイ先輩作だそうだ。
「今日で合宿終わりなのが何か寂しいな」
「また来ればいい」
「そうだよね。ボートでも今度出来る車でも」
「宜しければ次は我が家の領地にご案内しますわ」
そういえばシンハの家の領地、ヨーコ先輩の家の領地と回ったんだな。
「うちの領地は夏は暑いので春がお勧めです。南ですので春から海で泳げますし、フルーツも南国特有の色々なものがありますわ」
いいなそれは。身体も健康になったし、少し泳げるようになりたい。
「でも1月2月は試験が山のようにあるし、結構辛いよな」
3学期は基本的に試験と今までの復習の期間だ。ここで落第すると進級できなくなるし、最悪の場合は退学コース。
しかしだ。
「私も進学試験があります。でも試験なんて間違わなければまず大丈夫ですわ」
「そうそう。ケアレスミスだけは気をつけないとね」
「見直しても1問か2問は間違うんだよな。我ながら注意力が足りない」
世の中にはこういう人達もいる。全部わかっていて当然としか思っていない人達が。勿論多数派では決してないのだけれど。
シンハ君が大きくため息をついた。その気持ちはよくわかる。
世の中恵まれた人々には理解できない事もあるのだ、きっと。
◇◇◇
翌朝。まずは家と温泉の掃除から始まる。
「お湯を抜くの勿体ないよね。この広いお風呂気持ちよかったし」
「何なら研究室に常設するか。ボイラーがあるなら作るのも簡単だろう」
おいヨーコ先輩何という事を言うのだ。
「気持ちよさそう」
「いいね、それ」
ほら賛同者が出てしまった。皆さん快楽方向の誘惑に弱いのだ。製作担当のシモンさんが賛同した時点できっと建築は決定してしまったのだろう。ああ目の毒がまた増えてしまう。
家の掃除の後はボートの荷物整理。ウージナを出た時と比べてかなり荷物が増えている。模型だの毛皮だの革だの肉入り保冷箱だの魔石利用器具だのだ。
これだけ増えても何とか載るのがボートのいいところ。ただその分前の方の座席は圧迫されている模様だ。俺の専用席である機関士席はその辺あまり関係ないけれど。
なお途中カーミヤに寄って昼食を食べ、買い物をしてから帰る予定だ。もっと荷物が増えそうな気がするのは気のせいだろうか。
「それじゃ出発するよ」
「また此処にも来ましょうね」
「そうだな。その時はまた父にかけあってみるよ」
蒸気ボートはゆっくりと別荘の地下スペースから出航した。
車体は3人乗り3列プラス運転席プラス助手席。助手はライトや蒸気機関の給炭操作担当だ。
その気になれば運転席でも全部操作する事は可能ではあるけれど、どうせ皆で移動するのだからこの方がいい。
運転席はアクセルの場所で蒸気圧調整。ブレーキペダルはブレーキの位置。左手の位置にパーキングブレーキと逆転器、給炭機をつけた。
メーターパネルは実装していないが、実車には距離計と速度計、蒸気圧計と電圧計をつける予定だ。更に背後に牽引フックをつけ、荷車を牽引できるようにもする。
「これが出来れば水路が無い処も行けるな」
「本当の意味で自由に何処へでも行けますね」
「イーツクシマにも楽に行けるぞ」
あの馬車で酔ってミド・リーに強制睡眠をかけられたような事はもう無い訳だ。でも今の身体なら馬車だってもうだいじょうぶかもしれない。試す気はないけれど。
そして馬車といえば思い出す事がある。
「乗り心地はどうだろう」
俺が思ったのとほぼ同じ事をヨーコ先輩も考えたようだ。
「空気入りタイヤとバネとダンパーで大分ましになっていると思うよ。後は走らせながら改良しよう」
そう、今の俺達にはそういった技術がある。だからきっと問題無い。
「楽しみ」
「だね」
そしてそのまま夕食へ。メインは鹿魔獣スネ肉の煮込み。これがめっぽう美味しい。
肉そのものは脂が少なくさっぱり気味。これが口の中でほどよくとろける位に柔らかい。コラーゲンも多めで本当にとろとろという感じだ。
「美味しいな、この煮物」
「今日はナカさんが作ったのよ」
「牛か鹿で作るのですが、鹿魔獣《チデジカ》でも同じように出来ました」
味つけそのものは軽い塩味だけだろう。しかしタマネギや人参、それに肉がトロトロになっていてさっぱりだけれどコクがある深い味わいになっている。
そのままでも、パンを少し浸しても美味しい。
「こうやって人に作って貰うのもいいな。知らない美味しいものが食べられる」
「大体はミタキ君に作って貰っていましたから。今回は私とフールイ先輩で交互に作ってみたんです」
「合宿はこれが楽しい」
「確かに家で食べるより美味しいし楽しいな」
確かにそうだなと感じる。
更に今回はデザートまで出来ていた。クレープ風だけれど大分卵っぽい生地でしかもパリッとしている。そして中にはバターたっぷりで焼いた林檎入り。
これもまたいい感じで美味しい。これはフールイ先輩作だそうだ。
「今日で合宿終わりなのが何か寂しいな」
「また来ればいい」
「そうだよね。ボートでも今度出来る車でも」
「宜しければ次は我が家の領地にご案内しますわ」
そういえばシンハの家の領地、ヨーコ先輩の家の領地と回ったんだな。
「うちの領地は夏は暑いので春がお勧めです。南ですので春から海で泳げますし、フルーツも南国特有の色々なものがありますわ」
いいなそれは。身体も健康になったし、少し泳げるようになりたい。
「でも1月2月は試験が山のようにあるし、結構辛いよな」
3学期は基本的に試験と今までの復習の期間だ。ここで落第すると進級できなくなるし、最悪の場合は退学コース。
しかしだ。
「私も進学試験があります。でも試験なんて間違わなければまず大丈夫ですわ」
「そうそう。ケアレスミスだけは気をつけないとね」
「見直しても1問か2問は間違うんだよな。我ながら注意力が足りない」
世の中にはこういう人達もいる。全部わかっていて当然としか思っていない人達が。勿論多数派では決してないのだけれど。
シンハ君が大きくため息をついた。その気持ちはよくわかる。
世の中恵まれた人々には理解できない事もあるのだ、きっと。
◇◇◇
翌朝。まずは家と温泉の掃除から始まる。
「お湯を抜くの勿体ないよね。この広いお風呂気持ちよかったし」
「何なら研究室に常設するか。ボイラーがあるなら作るのも簡単だろう」
おいヨーコ先輩何という事を言うのだ。
「気持ちよさそう」
「いいね、それ」
ほら賛同者が出てしまった。皆さん快楽方向の誘惑に弱いのだ。製作担当のシモンさんが賛同した時点できっと建築は決定してしまったのだろう。ああ目の毒がまた増えてしまう。
家の掃除の後はボートの荷物整理。ウージナを出た時と比べてかなり荷物が増えている。模型だの毛皮だの革だの肉入り保冷箱だの魔石利用器具だのだ。
これだけ増えても何とか載るのがボートのいいところ。ただその分前の方の座席は圧迫されている模様だ。俺の専用席である機関士席はその辺あまり関係ないけれど。
なお途中カーミヤに寄って昼食を食べ、買い物をしてから帰る予定だ。もっと荷物が増えそうな気がするのは気のせいだろうか。
「それじゃ出発するよ」
「また此処にも来ましょうね」
「そうだな。その時はまた父にかけあってみるよ」
蒸気ボートはゆっくりと別荘の地下スペースから出航した。
131
あなたにおすすめの小説
没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます
六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。
彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。
優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。
それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。
その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。
しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。
※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。
詳細は近況ボードをご覧ください。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?
はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、
強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。
母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、
その少年に、突然の困難が立ちはだかる。
理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。
一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。
それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。
そんな少年の物語。
異世界転生旅日記〜生活魔法は無限大!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
☆1/19〜1/27まで、予約投稿を1話ずつ行います。
農家の四男に転生したルイ。
そんなルイは、五歳の高熱を出した闘病中に、前世の記憶を思い出し、ステータスを見れることに気付き、自分の能力を自覚した。
農家の四男には未来はないと、家族に隠れて金策を開始する。
十歳の時に行われたスキル鑑定の儀で、スキル【生活魔法 Lv.∞】と【鑑定 Lv.3】を授かったが、親父に「家の役には立たない」と、家を追い出される。
家を追い出されるきっかけとなった【生活魔法】だが、転生あるある?の思わぬ展開を迎えることになる。
ルイの安寧の地を求めた旅が、今始まる!
見切り発車。不定期更新。
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる