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第23章 二度目の学園祭
第194話 お客様の来訪
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俺は模型飛行機セット、ヨーコ先輩は熱気球を積載した荷車を引っ張って校庭へ。まずは熱気球から準備開始だ。ロープにつながるフックを引っ掛けて熱気球本体を膨らませる。
まあ毎日やっている作業なので慣れたもの。12半時間もかからずに準備完了だ。
『まもなく向かうけれど大丈夫?』
ミド・リーから伝達魔法が入った。
『大丈夫だ』
『ならアキナ先輩とユキ先輩の案内で行くから。合計6人』
それだとあと1人しか乗れない。そうなると鑑定魔法ありの俺が乗るのだろうけれど大丈夫かな。
教室の方からアキナ先輩先頭でやってくるのが見えた。やっぱり全員女子だ。ちょい緊張する。
本来の俺は知らない女子相手だと気軽に話したり出来ない方だ。 研究会は慣れで何とかなるけれど。
熱気球に一般のお客さんを乗せるのと同じ。今回はそう意識しよう。それに知らないのは3人だけ。他はいつもの面子だ。
そう、だから緊張することはない。そう思い込むよう努力する。
「熱気球の方は大丈夫でしょうか」
「準備は出来ています」
「それではお乗り頂けますでしょうか」
アキナ先輩のしぐさがお客様向けになっているな。そう思いつつ俺は熱気球の中央、操縦担当の場所につく。
乗ってきた見知らぬ女子は予定通り3人。1人は雰囲気的に高等部くらい、あと2人は中等部くらいかな。
さて、それでは熱気球を浮上させるか。熱気球本体内の気温を上げる。ふっと足元に力がかかった。
◇◇◇
熱気球と模型飛行機の実演は喜んでもらえたようだ。
なお質問には全部アキナ先輩が答えてくれた。俺としては大変助かる。どの辺まで口外していいか今ひとつ判断がつかないから。アキナ先輩ならほぼうちの研究室で開発したもの全てを理解しているし。
ところでアキナ先輩もユキ先輩も口調が目上の人用だった。どうも相手のうち誰かが偉い人のようだ。一応注意した方がいいだろう。そう俺は判断する。
一通り終えて展示室の隣、休憩部屋へ戻ってきた。映写実演中のシンハ君とフルエさん、隣の展示室のフールイ先輩以外は全員揃っている。向こうは引率のターカノさん以下4名だ。
真ん中に座ったやや年長という感じの小柄な女子が立ち上がった。
「今回は突然お邪魔して申し訳ありません。私はこの研究室代表のトモと申します。
本日は忙しい中色々見せて頂き本当にありがとうございます」
「遠いところおいでいただきありがとうございます。色々纏まりのない展示でしたがいかがでしたでしょうか」
やはりアキナ先輩が対外モードで話している。殿下が最初に出てきた時以来の感じだ。今回のトモさんはそれくらいの相手なのだろうか。
「色々興味深いものが多くて感心致しましたわ。私達の研究室はどうしても地味なものが中心ですから。ここでしたらこちらで開発した色々な素材等も有効に活用して頂けると感じます。ユキさんがこちらに来たのも納得できますわ」
えっ?
「その節はご迷惑をおかけ致しました」
何だろう、この辺の台詞は。
「いえ、これだけ出来る場所なら惹かれても当然だと思います。
さてそれでは具体的な話を致しましょう。話はターカノやジゴゼンからうかがっております。まずはタイヤからお願いできますでしょうか」
「はい、用意いたします」
『シモンさんお願いします。ミタキ君も手伝ってくださいな』
さっきのユキ先輩への台詞を確認する余裕も無い。アキナ先輩に伝達魔法で頼まれて俺もシモンさんと一緒に隣の展示室へ。自転車2種類と自動車用のタイヤを持って隣へと戻る。
「こちらですね。どれも現在は猪魔獣の革と鋼で出来た網と木の皮で作った繊維とで作られています。でもおそらくそちらで作られたゴムを使えばより簡単かつ実用的なものになると思います」
「実際に触って確認させて頂いてよろしいでしょうか」
「大丈夫です」
3人が席を離れそれぞれタイヤを確認する。
「構造を転送しますよ」
「理解しました。中に空気が入っていてこれがクッション代わりになるのですね」
「丈夫な革の内側にゴムに似た溶液を塗って空気を閉じ込めているようです。この溶液はおそらくバラ科の植物の樹液ですね。この層を分厚いゴムにして同様に金属線で強化すればより簡単な構造で量産は可能でしょう」
なるほど。トモさんはおそらく鑑定魔法と心理魔法の持ち主。更に2人のうち片方も鑑定魔法を使えるようだ。
鑑定した結果をそれぞれ送信してそれぞれの知識で分析している模様。
◇◇◇
その後模型飛行機と試作ジェットエンジンを持ってきて耐熱金属素材と軽量金属素材の話もした。
なお今のパルスジェットエンジンでは正直耐熱素材が絶対必要な訳ではない。俺が作るつもりのターボプロップエンジンに必要なのだ。
そのために基本となるガスタービン機関の構造を簡単に説明した。結果耐熱素材の必要性はわかってもらえたようだ。
「かなり高度な理論で作られた機械なのですね。そのために燃焼直後の高熱でも耐えられる素材が必要。それでしたらもう少し耐熱温度が高いものも試作してみた方がいいかもしれません」
「助かります」
「それではこの次はタイヤは試作品を向こうで作って、他素材については現物をそのままこちらに持ってくる事に致しましょう。皆さんもそれでよろしいでしょうか」
「よろしくお願いいたします」
アキナ先輩が口調を崩さない。
「それにしてもここの研究というか開発は高度かつ実践的で面白いですわね。見ていて羨ましくなりますわ。私達のほうも頑張らなければいけないですね」
「いえ、こちらの物は思いつきで作っているものが大半で基礎的な研究開発は出来ていないのが現状です。ですので今回の素材提供の申し出は大変ありがたく思っております」
やっぱりアキナ先輩が非常に怪しい。今は気付かないふりをしておくけれど。
「それでは本日はわざわざ色々案内して頂き、本当にありがとうございました」
全員で挨拶をした後、ターカノさんの魔法でいつものように姿を消す。
まあ毎日やっている作業なので慣れたもの。12半時間もかからずに準備完了だ。
『まもなく向かうけれど大丈夫?』
ミド・リーから伝達魔法が入った。
『大丈夫だ』
『ならアキナ先輩とユキ先輩の案内で行くから。合計6人』
それだとあと1人しか乗れない。そうなると鑑定魔法ありの俺が乗るのだろうけれど大丈夫かな。
教室の方からアキナ先輩先頭でやってくるのが見えた。やっぱり全員女子だ。ちょい緊張する。
本来の俺は知らない女子相手だと気軽に話したり出来ない方だ。 研究会は慣れで何とかなるけれど。
熱気球に一般のお客さんを乗せるのと同じ。今回はそう意識しよう。それに知らないのは3人だけ。他はいつもの面子だ。
そう、だから緊張することはない。そう思い込むよう努力する。
「熱気球の方は大丈夫でしょうか」
「準備は出来ています」
「それではお乗り頂けますでしょうか」
アキナ先輩のしぐさがお客様向けになっているな。そう思いつつ俺は熱気球の中央、操縦担当の場所につく。
乗ってきた見知らぬ女子は予定通り3人。1人は雰囲気的に高等部くらい、あと2人は中等部くらいかな。
さて、それでは熱気球を浮上させるか。熱気球本体内の気温を上げる。ふっと足元に力がかかった。
◇◇◇
熱気球と模型飛行機の実演は喜んでもらえたようだ。
なお質問には全部アキナ先輩が答えてくれた。俺としては大変助かる。どの辺まで口外していいか今ひとつ判断がつかないから。アキナ先輩ならほぼうちの研究室で開発したもの全てを理解しているし。
ところでアキナ先輩もユキ先輩も口調が目上の人用だった。どうも相手のうち誰かが偉い人のようだ。一応注意した方がいいだろう。そう俺は判断する。
一通り終えて展示室の隣、休憩部屋へ戻ってきた。映写実演中のシンハ君とフルエさん、隣の展示室のフールイ先輩以外は全員揃っている。向こうは引率のターカノさん以下4名だ。
真ん中に座ったやや年長という感じの小柄な女子が立ち上がった。
「今回は突然お邪魔して申し訳ありません。私はこの研究室代表のトモと申します。
本日は忙しい中色々見せて頂き本当にありがとうございます」
「遠いところおいでいただきありがとうございます。色々纏まりのない展示でしたがいかがでしたでしょうか」
やはりアキナ先輩が対外モードで話している。殿下が最初に出てきた時以来の感じだ。今回のトモさんはそれくらいの相手なのだろうか。
「色々興味深いものが多くて感心致しましたわ。私達の研究室はどうしても地味なものが中心ですから。ここでしたらこちらで開発した色々な素材等も有効に活用して頂けると感じます。ユキさんがこちらに来たのも納得できますわ」
えっ?
「その節はご迷惑をおかけ致しました」
何だろう、この辺の台詞は。
「いえ、これだけ出来る場所なら惹かれても当然だと思います。
さてそれでは具体的な話を致しましょう。話はターカノやジゴゼンからうかがっております。まずはタイヤからお願いできますでしょうか」
「はい、用意いたします」
『シモンさんお願いします。ミタキ君も手伝ってくださいな』
さっきのユキ先輩への台詞を確認する余裕も無い。アキナ先輩に伝達魔法で頼まれて俺もシモンさんと一緒に隣の展示室へ。自転車2種類と自動車用のタイヤを持って隣へと戻る。
「こちらですね。どれも現在は猪魔獣の革と鋼で出来た網と木の皮で作った繊維とで作られています。でもおそらくそちらで作られたゴムを使えばより簡単かつ実用的なものになると思います」
「実際に触って確認させて頂いてよろしいでしょうか」
「大丈夫です」
3人が席を離れそれぞれタイヤを確認する。
「構造を転送しますよ」
「理解しました。中に空気が入っていてこれがクッション代わりになるのですね」
「丈夫な革の内側にゴムに似た溶液を塗って空気を閉じ込めているようです。この溶液はおそらくバラ科の植物の樹液ですね。この層を分厚いゴムにして同様に金属線で強化すればより簡単な構造で量産は可能でしょう」
なるほど。トモさんはおそらく鑑定魔法と心理魔法の持ち主。更に2人のうち片方も鑑定魔法を使えるようだ。
鑑定した結果をそれぞれ送信してそれぞれの知識で分析している模様。
◇◇◇
その後模型飛行機と試作ジェットエンジンを持ってきて耐熱金属素材と軽量金属素材の話もした。
なお今のパルスジェットエンジンでは正直耐熱素材が絶対必要な訳ではない。俺が作るつもりのターボプロップエンジンに必要なのだ。
そのために基本となるガスタービン機関の構造を簡単に説明した。結果耐熱素材の必要性はわかってもらえたようだ。
「かなり高度な理論で作られた機械なのですね。そのために燃焼直後の高熱でも耐えられる素材が必要。それでしたらもう少し耐熱温度が高いものも試作してみた方がいいかもしれません」
「助かります」
「それではこの次はタイヤは試作品を向こうで作って、他素材については現物をそのままこちらに持ってくる事に致しましょう。皆さんもそれでよろしいでしょうか」
「よろしくお願いいたします」
アキナ先輩が口調を崩さない。
「それにしてもここの研究というか開発は高度かつ実践的で面白いですわね。見ていて羨ましくなりますわ。私達のほうも頑張らなければいけないですね」
「いえ、こちらの物は思いつきで作っているものが大半で基礎的な研究開発は出来ていないのが現状です。ですので今回の素材提供の申し出は大変ありがたく思っております」
やっぱりアキナ先輩が非常に怪しい。今は気付かないふりをしておくけれど。
「それでは本日はわざわざ色々案内して頂き、本当にありがとうございました」
全員で挨拶をした後、ターカノさんの魔法でいつものように姿を消す。
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