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第1章 空を自由に飛びたいな
3 作るぞ課題の概念設計
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「さて、香緒里ちゃんの魔法を使って空を飛ぶとする。ちょうどこの前の箸袋を飛ばした魔法が使えるかな」
「でもあれを私にかけたら、空から戻れなくなっちゃいます」
つまり香緒里ちゃんの魔法は、空中へ人間を飛ばせる威力はあるということだ。
それでは次の段階だ。
「香緒里ちゃんと同じ重さの物体にあの魔法をかけて、抱きついて地面を蹴れば浮くかな」
「多分浮くと思います。手を離したら下に落ちますけれど」
だいぶ構想が見えてきた。
ただ香緒里ちゃんは入学したばかりで、作る物をどう発想してまとめていくかという作業には慣れていない。
俺が誘導する形で、話を進めた方がいいだろう。
「例えば背負える巨大な水タンクを用意する。水を目一杯入れて背負って魔法をかければ空へと上昇する。水を上空で出して軽くすれば、その分浮力が減るから調節次第でゆっくり降りられる。それに間違いはないかな」
「あ、それなら飛べますし降りられますね」
香緒里ちゃんがうんうんと頷く。
「でもそれだけじゃ洗練されていない。水を抜きすぎれば事故になるし」
そう、これで確かに空は飛べるが、安全ではない。
製品としてはまだ落第レベルだ。
「そうですね。落ち始めたら助からないです」
出来れば空中で浮力を上下どっちにも変えられるのがベストだ。
でも空中にあるのは空気だけ。
その中で少しでも重い物というと……
幾つか考えつくものがある。
「香緒里ちゃん、空気中の水蒸気を集めて凝集させるフィルターとかって作れる?」
香緒里ちゃんは少し考える。
「どこでも水が飲める水筒を作ろう、そう思って試した事があります。大分前ですけれど。でも飲めるほどの水を作るのには凄い時間がかかったんです。ただ冷やすだけとか温めるだけなら簡単ですけれど」
空気中の水分を集めて重さを変えるのは、効率が悪いようだ。
しかし冷やすのは簡単なら、思いつく方法がある。
ただしこの方法が使えるか、まずは確認しておこう。
「冷やす温度や温める温度の制限ってある?」
「冷やす方も温める方も、水でしか試したことがないです。氷にもなるし蒸発もするのですが、それ以上は試したことはないです」
よしよし、それならば試してみる価値がある。
今俺が思いついたあることを。
ここはカフェテリアだ。
ちょうどいいコップが目の前にある。
水が入っているのがちょっと邪魔だけれど。
だから俺は目の前の水が入ったコップを飲み干し、そして尋ねる。
「例えば。このコップの中に入ったものはマイナス200℃になる。そんな魔法をかけられる?」
香緒里ちゃんはコップに手を当てて、軽く目を瞑った。
「やってます。うーん、これで出来たと思うのですけれど」
そのコップを見る。中に液体が溜まっていくのが見えた。
「ストップ、コップをもとに戻して。実験成功」
コップの中の液体は沸騰を始める。
ただし熱さは感じない。感じるのはむしろ冷気だ。
「今のは何なんでしょうか。水が溜まったみたいですけれど」
「水じゃない。水はそこで凍りついているだけ」
コップの周辺にこびりついているのが水、というか氷だ。
中の液体は水ではない。
「沸騰している液体は液体窒素と液体酸素。液体酸素は危険だから注意が必要だけれどさ。これを使えば空中でも重さを変えられるだろ」
俺はバックの中から小さいスケッチブックを出す。
作りたいもののアイディアが突如浮かんだ時の為、いつも持ち歩いている代物だ。
スケッチブックの新しい紙を出して、棒人間が岩が載った背負子を背負っている絵を描く。
「まず自分の体重より少しだけ軽い背負える物を作る。これにあの箸袋に使った魔法をかけてジャンプすればだいぶ高く飛べるだろう。それが第一段階」
「うん、それはわかります」
次に背負う部分の上にタンクを書き足し、タンクへ入るパイプとタンクから出るパイプを書き足す。
「次にここにタンクをつけて、それぞれ入るパイプと出るパイプをつなぐ。入るパイプとタンクには今コップに使ったマイナス200℃の魔法をかける。こうすれば液体になった空気を中に溜められる。中に空気を入れれば重くなるし出せば軽くなる。そうすれば空中でも重さを変えられるから上下できる」
「うーん、確かにそうです。これなら上下できます。完成ですね」
いや、これだけでは面白くない。
「まだ早い」
俺はパイプを更に描き加える。
「このタンクから出るパイプを、こうやって前や後ろや上や下へ出す。こっちのパイプは先端の温度が30℃位になるようにする。そうしてこのパイプから出る液体窒素を気体にして、調節して吹き出す。これである程度は空中で自由に飛べるんじゃないかな」
香緒里ちゃんは図の上を指でなぞったりしてちょっと考え、頷いた。
「確かにこれなら自由に空を飛べます。課題、完成ですね」
本当はそうだ。
この課題は概念設計まででいい。
だから今の図を綺麗に清書して説明を加えれば完成だ。
しかし、俺のもの作り欲が火を吹きはじめた。
ほとんど病的な作りたい欲が、臨界点まで来ている。
そしてここからが、俺の魔法の本領だ。
イメージしたものの実物を製作する事が。
「課題の提出期限、去年と同じなら2週間だよね」
香緒里ちゃんは頷く。
「そうですけれど、それってまさか」
「どうせなら空飛ぼう、これ作って」
余分な仕事になるのはわかっている。
それでも作りたいという欲が抑えられない。
だから俺は、そう言ってしまった。
「でもあれを私にかけたら、空から戻れなくなっちゃいます」
つまり香緒里ちゃんの魔法は、空中へ人間を飛ばせる威力はあるということだ。
それでは次の段階だ。
「香緒里ちゃんと同じ重さの物体にあの魔法をかけて、抱きついて地面を蹴れば浮くかな」
「多分浮くと思います。手を離したら下に落ちますけれど」
だいぶ構想が見えてきた。
ただ香緒里ちゃんは入学したばかりで、作る物をどう発想してまとめていくかという作業には慣れていない。
俺が誘導する形で、話を進めた方がいいだろう。
「例えば背負える巨大な水タンクを用意する。水を目一杯入れて背負って魔法をかければ空へと上昇する。水を上空で出して軽くすれば、その分浮力が減るから調節次第でゆっくり降りられる。それに間違いはないかな」
「あ、それなら飛べますし降りられますね」
香緒里ちゃんがうんうんと頷く。
「でもそれだけじゃ洗練されていない。水を抜きすぎれば事故になるし」
そう、これで確かに空は飛べるが、安全ではない。
製品としてはまだ落第レベルだ。
「そうですね。落ち始めたら助からないです」
出来れば空中で浮力を上下どっちにも変えられるのがベストだ。
でも空中にあるのは空気だけ。
その中で少しでも重い物というと……
幾つか考えつくものがある。
「香緒里ちゃん、空気中の水蒸気を集めて凝集させるフィルターとかって作れる?」
香緒里ちゃんは少し考える。
「どこでも水が飲める水筒を作ろう、そう思って試した事があります。大分前ですけれど。でも飲めるほどの水を作るのには凄い時間がかかったんです。ただ冷やすだけとか温めるだけなら簡単ですけれど」
空気中の水分を集めて重さを変えるのは、効率が悪いようだ。
しかし冷やすのは簡単なら、思いつく方法がある。
ただしこの方法が使えるか、まずは確認しておこう。
「冷やす温度や温める温度の制限ってある?」
「冷やす方も温める方も、水でしか試したことがないです。氷にもなるし蒸発もするのですが、それ以上は試したことはないです」
よしよし、それならば試してみる価値がある。
今俺が思いついたあることを。
ここはカフェテリアだ。
ちょうどいいコップが目の前にある。
水が入っているのがちょっと邪魔だけれど。
だから俺は目の前の水が入ったコップを飲み干し、そして尋ねる。
「例えば。このコップの中に入ったものはマイナス200℃になる。そんな魔法をかけられる?」
香緒里ちゃんはコップに手を当てて、軽く目を瞑った。
「やってます。うーん、これで出来たと思うのですけれど」
そのコップを見る。中に液体が溜まっていくのが見えた。
「ストップ、コップをもとに戻して。実験成功」
コップの中の液体は沸騰を始める。
ただし熱さは感じない。感じるのはむしろ冷気だ。
「今のは何なんでしょうか。水が溜まったみたいですけれど」
「水じゃない。水はそこで凍りついているだけ」
コップの周辺にこびりついているのが水、というか氷だ。
中の液体は水ではない。
「沸騰している液体は液体窒素と液体酸素。液体酸素は危険だから注意が必要だけれどさ。これを使えば空中でも重さを変えられるだろ」
俺はバックの中から小さいスケッチブックを出す。
作りたいもののアイディアが突如浮かんだ時の為、いつも持ち歩いている代物だ。
スケッチブックの新しい紙を出して、棒人間が岩が載った背負子を背負っている絵を描く。
「まず自分の体重より少しだけ軽い背負える物を作る。これにあの箸袋に使った魔法をかけてジャンプすればだいぶ高く飛べるだろう。それが第一段階」
「うん、それはわかります」
次に背負う部分の上にタンクを書き足し、タンクへ入るパイプとタンクから出るパイプを書き足す。
「次にここにタンクをつけて、それぞれ入るパイプと出るパイプをつなぐ。入るパイプとタンクには今コップに使ったマイナス200℃の魔法をかける。こうすれば液体になった空気を中に溜められる。中に空気を入れれば重くなるし出せば軽くなる。そうすれば空中でも重さを変えられるから上下できる」
「うーん、確かにそうです。これなら上下できます。完成ですね」
いや、これだけでは面白くない。
「まだ早い」
俺はパイプを更に描き加える。
「このタンクから出るパイプを、こうやって前や後ろや上や下へ出す。こっちのパイプは先端の温度が30℃位になるようにする。そうしてこのパイプから出る液体窒素を気体にして、調節して吹き出す。これである程度は空中で自由に飛べるんじゃないかな」
香緒里ちゃんは図の上を指でなぞったりしてちょっと考え、頷いた。
「確かにこれなら自由に空を飛べます。課題、完成ですね」
本当はそうだ。
この課題は概念設計まででいい。
だから今の図を綺麗に清書して説明を加えれば完成だ。
しかし、俺のもの作り欲が火を吹きはじめた。
ほとんど病的な作りたい欲が、臨界点まで来ている。
そしてここからが、俺の魔法の本領だ。
イメージしたものの実物を製作する事が。
「課題の提出期限、去年と同じなら2週間だよね」
香緒里ちゃんは頷く。
「そうですけれど、それってまさか」
「どうせなら空飛ぼう、これ作って」
余分な仕事になるのはわかっている。
それでも作りたいという欲が抑えられない。
だから俺は、そう言ってしまった。
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