機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第14章 とっても長い春休み⑴ 漁船と宴会と怪しい朝と

64 そして怪しく不明な朝

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 あの雑草の生い茂った公園。
 しかし、いつもなら出て来る筈の、香緒里ちゃんがいない。

 もう先に行っているのだろうか。
 そして風遊美さんは、この夢の中に入れたのだろうか。

 あたりには誰もいないし、誰の気配もない。
 だから俺は、背の高さほどの雑草の中を1人で進む。
 そしてあのトンネルの中へ。

 トンネルの中には既に先客の気配がした。
 1人ではない。

 更に進むといつもの場所に2人の姿が見える。
 1人は香緒里ちゃんの小学生位の状態。
 もう1人は風遊美さんだろう。
 同じ位の年令の少女になっている。

「……確かに観察力は凄いけれど、その分常人なら気づく所に気づかない事も多いですしね」

「何となくそれはわかります。常人と視点が違うというか」

 何やら話し込んでいるようだ。

「あ、修兄」

 香緒里ちゃんが俺に気づいた。

「何話しているんだ」

「情報交換です」

「修兄のね。春休み私達が帰ってくるまでの話とか、昔の修兄の話とか」

 うーむ、いつもと展開が違う。
 いつもなら俺中心に話が進むのだけれど、今日は女子会みたいになっている。
 と、風遊美さんが俺の方を見て、そして香緒里ちゃんに向き直る。

「修君も合流しましたし、少し舞台を変えませんか。実は……」

 風遊美さんが何やら、香緒里ちゃんに耳打ちする。

「あ、それはいいシチュエーションかもです」

 香緒里ちゃんが、ちょっと悪めの笑顔を浮かべた。

 ふっと辺りが揺れて、景色が変わった。
 今度の場所は八畳くらいの和室。
 布団が並んで敷き詰めてある。

「そう、これですこれです」

 風遊美さんは笑顔を浮かべる。
 いつの間にか2人共、本来と同じ年格好に戻っていて、かつ服装が安っぽい浴衣になっていた。

「日本の漫画やアニメに出てくる修学旅行の夜って、こんな感じですよね。憧れていたのです」

 と、風遊美さん。

 日本の漫画やアニメに出てくるって、わざわざ日本のってつけるという事は、ひょっとして。

「風遊美さんも外国出身だったの?」

 俺が聞いたところ、香緒里ちゃんに呆れた目で見られた。

「髪の色も目の色も肌の色も、どう見ても典型的な日本人には見えないと思いますけれど」

 言われてみれば、確かにそうだ。
 そんな俺を見て風遊美さんが微笑む。

「修君はこういう人ですから。私の色付きコンタクトレンズに気づいた癖に、そういう所まで考えないんです。まあ気にしていないって事なんでしょうけれど」

「それも場合によってだと思うのです。例えば私、正月休みでお気に入りの美容室に行って髪型変えてきたのですが、全然気づいてくれませんでした」

「気づいていたぞ」

 俺は反論する。

「手間の掛かりそうな髪型になったな、と思った記憶がある」

「これですから」

 香緒里ちゃんがため息をついた。

 ◇◇◇

 目を覚ますと、ベッドの上は俺1人だった。
 香緒里ちゃんも風遊美さんもいない。

 俺はベッドから出てふとある事に気づく。
 2人がいなくてよかった。

 こっそりパンツを履き替える。
 脱いだパンツは袋に封印して、引き出しの奥に隠す。
 あとでこっそりと洗濯しよう。

 そしてついでに服を着替えて、何食わぬ顔でリビングへと向かう。
 香緒里ちゃんと風遊美さんは、リビングでテレビの早朝ニュースを見ていた。
 俺は2人に声をかける。

「おはよー」

 一拍遅れて返事が返ってくる。

「お、おはようございます」

「お、おはようです」

 何か2人とも、ちょっと様子がおかしい。
 顔色も赤いような気がするし。
 何かあったのだろうか。

 そう言えば昨日の夢の内容を、俺は憶えていない。
 いつもは何となくでも、憶えているのに。

「そう言えば昨日の夢を憶えていないんだけどさ、どんな夢だったっけ」

「お、修兄は昨日は疲れていたようで、夢にも反応しないで寝ていたんです」
「そうそう、そうです。2人で疲れているんだね、って話しましたから」

 やっぱり何か、様子がおかしい。
 しかし俺は眠いので、取り敢えず気にしないことにした。
 時計を見たらまだ午前5時を少し過ぎた位だったし。

「眠いからもう一度寝なおしてくる」

「わかりました」

 その時2人が互いに目配せしあった意味に、俺は最後まで気づかなかった。
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