機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第21章 優雅で感傷的な日本行事~冬の章・前編~

101 日本は平和な国なのです

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 間違いと誤解と偏見と偏った文化に汚染されまくった、ジェニーと奈津希さんによる日本式クリスマス解説の後。
 ちょうどいい時間になったので、学生会室を片付けて今日の活動は終了。
 全員でマンションへと帰り夕食にする。

 土曜日に釣れたメバチマグロがまだ大量に残っているので、刺身と漬けとフライで食べまくり、そして露天風呂へ。

 最近は俺も、ぬる湯でなく樽湯にこもる方が多くなった。
 理由は簡単で、ぬる湯3人はどうも落ち着かないからだ。
 風遊美さんもソフィーも、俺が男だという事を、少しでいいから考慮して欲しい。

「修先輩、ちょっと聞いていいか」

 珍しくルイス君が、隣の樽湯から話しかけてきた。
 いつもは樽湯の中で気配すら殺しているのだけれども。

「いいよ。何だい」

「あのクリスマスの解説って本当か」

 仮にもキリスト教圏の常識を持っている彼には、今ひとつ信じがたい話だったらしい。
 だから一応、日本で生まれ育って日本的知識と常識を持った者として、言っておこう。

「ジェニー独自の考察面は、取り敢えず無視してくれ」

「そうだよな、やっぱり」

 いやルイス、そこで安心するのは早過ぎる。 
 そう思いつつ、俺は補足。

「ただ伝承とか出来事とか行動については、ほぼ事実だ」

 一瞬の沈黙。

「とすると最高神が引き籠ったのをストリップダンスで誘き出した神話も、露天風呂の混浴がデフォルトという事も、クリスマスイブがメイクラブの日だという事も、ケンタッキーのチキンで祝うのも、クリスマス撲滅のデモが毎年開かれるというのも」

 そう、ルイス君が列挙したそれは、元はといえばジェニーと奈津希さんが解説したそれぞれは……

「そう、ほぼ事実だ。少なくとも嘘じゃない」

 残念ながら事実を否定するほど、俺は偏狭な人間ではない。

「クレイジーだ。何と色欲まみれの文化なんだ」

 色欲まみれか。
 そう言われると、なかなか恥ずかしいことのように感じてしまう。
 実際は『クリスマスイブの性の6時間』以外は、特に色欲と直結している訳ではないのだけれど。

 ただ、ラットを使った有名な実験結果がある。
 それを思い出して、俺は付け加える。

「温帯にあって食用作物が豊富だし、島国だからめったに外国からの脅威もなかったしな。基本平和で食物が足りていると、どうしてもそっち方面が発達するようだ。これはラットによる実験で証明されている」

「Oh!……」

 横の樽から、本場仕込みの嘆きが聞こえた。

「僕は日本のHENTAI文化を甘く見ていた」

「ジェニーの解説は別としても、少なくとも千年以上の歴史がある事は文学でも証明されているからな」

 なにせ源氏物語というやりたい放題の作品が、文学史に燦然と輝いている。
 あれはロリコンの元祖を含んだ、思考の半分以上が色にまみれた小説だ。
 勿論俺の偏見たっぷりな意見だけれど。

「甘いな、変態文化は日本だけじゃないぜ」

 危険で余分で、無駄な知識を蓄えた勢力が割り込みをかけてきた。

「何なら何処の国のがいい。ローマ皇帝の男色の話とか十字軍のホモな話とか。近親相姦物なんてそれこそ世界中にあるぜ。ロリコン物はやっぱり日本に一日の長があるけどな。あと触手物についても日本の江戸時代に既に漫画化されている」

「何と異常な。もっと敬虔な……って、日本の神ってそう言えば」

 ルイス、どうやら例のストリップダンスの件を思い出したらしい。

「そう言う事さ。理由は簡単。修が言っていたとおり、この国が平和で自由だったからだ。宗教的な圧力もあまり無く、外敵もめったに攻めてこない。ただHENTAI全盛だけど性犯罪は世界でもかなり少ない方だぞ。外でもアオカンできる気候条件を考えればこれはかなり誇ってもいい。外で突発的に致せる気温のところは寒いところより性犯罪多くなるものだしな」

 本当だろうか、その理論は。
 奈津希さんの場合は、限りなく事実に基づいた、でも事実と異なる理論を平気で作り出すからな。
 信用はしない方がいい、こういう時には。

「全て日本ここが平和だという事の証さ。お陰で平和ボケが多い上、交渉事が得意じゃなかったりするけどな。それはルイスも感じているだろ。ある意味日本国内しか知らない僕や修よりも」

「お話中失礼しますですよ」

 突如詩織ちゃんが現れた。
 ルイス君の樽湯に手を付けて温度を確認している。
 ルイス君は硬直している。

「何をやっているんだ」

 ルイス君の代わりに聞いてやる。

「前に修先輩のお湯はぬるすぎて、香緒里先輩の湯だとのぼせる事を学習したのです。私にはぬる湯よりほんの少しぬるい程度が適温だと推理したのです。そしてルイスが調節したこの樽湯は、ちょうどいい温度と思われるのです」

 詩織ちゃんはルイスや俺の視線を全く気にせず、よいしょっと縁を跨いでルイスとおなじ樽湯へ。

「うむ、ちょっとぬるめだけどきっと適温なのです。ルイスに感謝なのです」

 そのルイス君は……硬直したまま。表情も固まっている。
 まあ、その、なんだ。頑張れ青少年。
 
 ルイス君の試練はクリスマスの非常識ではない。
 現にここの学生会にある非常識なのだ、きっと。
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