機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第24章 新人さんを確保しよう!

122 これで三人確保した

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 やっと週の終わりの金曜日になった。
 例によって午後の学生会室。俺、香緒里ちゃん、ジェニー、ソフィー、ルイスの5人で暇潰し中。

 なおソフィーはロビーと一緒にいるのを諦めた模様だ。
 理由はこんな感じ。

「一緒にいても何の会話も無いです。ずっと作業してます」

 不意にネット作業中のジェニーが顔を上げ、口を開く。

「学生会希望者2人、30秒後れす」

「お、やっと来たか」

 待ちに待っていた新人だ。
 香緒里ちゃんが、いそいそとお茶の用意を始める。

 だが、30秒たってもノックの気配がない。
 ジェニーの方を見ると、ジェスチャーで「静かに」と人差し指を立てている。
 なので俺達は反応を待つ。

 1分位してから、控えめなノック音が響く。

「はい、ろうぞ」

 ジェニーが扉を開けると、入ってきたのは見覚えある女の子2人組。

「こんにちは」

 ポニーテールの方がにこやかに挨拶しているが、ツインテールの方は無口だ。

「空いている処にすわってくらさい」

「2人共冷たい紅茶でいいですね」

 2人は3年生2人に流れるように誘導されて、席に着いた。
 そして目の前には、香緒里ちゃんとっておきの冷たい紅茶。

「アールグレイですか。いい香りですね」

「わかってくれて嬉しいです。冷たいとどうしても香りが飛ぶので」

 香緒里ちゃんと平然と会話しているポニーテールを、ツインテールの方がつつく。

「実は2人共、ここでお世話になろうかと思いまして」

 ポニーテールの方がそう言って、そして2人で頭を下げた。

「いいのかな。ここは基本的には学生会だけれども。攻魔研とか魔分研とか、魔格クラブの方が攻撃魔法を鍛えるという意味ではよりあっているんじゃないかな」

 ジェニーが『折角来たのに余計な事を』という感じで、俺の方を見ている。
 でもこれを聞いておかないと、本人の意思や志向と合わなかった場合が可哀想だ。

「実は、今言われたところは全部回ってみたんです。ねえ、愛希」

 ツインテールの方が頷いた。

「入学式から今日までで一通り回ってみた。攻撃魔法研究会はどうも仲間内でつるんでいるという感じで尖り方が足りない。魔法分析研究会は尖った強いのもいるが個々に活動する感じで入るメリットが感じられない。魔法格闘クラブは名前こそ戦闘向けっぽいが単なる仲良し会にしか見えなかった」

 ルイスがにやりと笑う。

「厳しいな。でも確かにその傾向はあるな。よく見てる」

「もともと愛希は入学前からここに来るつもりだったんですよ。でもWebだとルイス先輩がデフォルメされすぎて今ひとつわからないので、実力と性格を見てみたいと。なのであのWebページを参考に、生意気ながら道場破りをやってみました」

「あれは申し訳なかった。言葉もない」

 ツインテールの方がそう謝罪。
 何か前に来た時と全然違う感じだ。

「僕は構わない。似たような事を去年奈津希先輩にやったし。でも本当にここでいいのか」

 2人は頷く。

「なら改めて自己紹介する。僕はルイス・ヴィンセント・ロング、攻撃魔法科2年で学生会会計担当だ」

 続けてソフィー、ジェニー、香緒里ちゃん、俺と簡単に自己紹介する。

 そして2人の自己紹介の番だ。
 まずはツインテールの方が口を開く。

「松原愛希、攻撃魔法科1年に入学した。前は術式学園の中等部攻撃魔法科にいた。使える魔法は炎関係一般」

「術式学園って、奈良の山の中にある奴か」

 俺の質問に彼女は頷く。

 術式学園は、特区外では日本最大級の魔法関連の教育機関だ。
 私立で幼稚舎から大学院まで揃っている。

「成程。魔法が実践的な訳だ」

「でもルイス先輩にも詩織先輩にも、かすりもしませんでした」

「尊敬すべき先輩に色々叩きこまれたからな」

 その言葉にそれ以上のルイスの思いを感じるのは、俺の気のせいだろうか。
 そして次のポニーテールの女の子。

「私は山下理奈、愛希と同じ攻撃魔法科1年で同じく術式学園中等部の出身でーす。得意なのは氷関係魔法かな」

「2人共同じ学校の出身なんですね」

 香緒里ちゃんの言葉に2人は頷く。

「ここ出身の先生に焚き付けられまして。うちの高校よりこっちの方が世界各地から集まる分、実戦的なライバルが多いって」

「でも確かにそんな感じだ。負けたから言う訳じゃない」

 ルイスが頷く。

「でもその先生も出来る人だ。2人共魔法の発動が新1年と思えない位早い。多分その先生に地道に鍛えられたんだろう。作戦だの対策だのは後付でどうにでもなる。ただ基本は小手先では身につかない。地道で辛抱強い練習だけが頼りだ」

「上町先生と同じ事を言ってる」

「僕も後でそれに気づいたからさ。シュヴァルツヴァルト時代は気づかなかった。そうだ、2人共今日の夜は空いているか」

 不意に何かを思いついたように、ルイスは2人に尋ねる。

「特に何もありませんけれど……」

「ここに入ることにしたからな。他の誘いは無視してもいいだろう」

 2人が相談。
 成程、研究会やサークルの新歓シーズンか。

「会わせたい人がいるんだが、大丈夫か」

「大丈夫です、けれど」

「ならタオルと着替えを持って6時に校門前集合、夕食はご馳走する」

 俺はルイスが何を考えているか気づいた。
 今日は金曜日、という事は皆が集まる日だ。

「今日は随分積極的だな」

「僕もあれは苦手だ。でも今日は金曜だから皆集まる。なら実際に色々会っておいた方がいい。僕の経験からそう思う」

 この場合の苦手なあれとは、もちろん露天風呂の事だ。

「何かしらないけれど、着替えって何で必要なんだ」

 理奈ちゃんの疑問はもっともだが、今言うとひかれそうなので言えない。

「大丈夫ですわ。身の危険は無いです。やましいことは……ア、リトーですね」

 ソフィー、それだと『無い』ではなく『少しはあるよ』じゃないか。
 まあ否定は出来ないけれど。

「なら夕食担当に連絡入れておくよ。2人プラスで歓迎料理お願いって」

 あえて奈津希さんの名前は出さない。

「なら私も連絡しますね」

 香緒里ちゃんもスマホを弄り出した。
 多分由香里姉に連絡しているんだろう。

 今日も騒がしい夜になりそうだ。
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