機械オタクと魔女五人~魔法特区・婿島にて

於田縫紀

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第33章 詩織ちゃんの新魔法と裏切りの黒魔女

172 新人1名追加願

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 ほぼ10分後、インターホンが来訪者を告げた。
 出ると画面上に、世田谷の姿。

「良かった、長津田が出てくれて。ここから先はどうするの」

「今入口を開ける。入ったらエレベーターで10階に来てくれ。エレベーターを出たら見える位置で待っている」

 俺はそう言って、表ドアを開くスイッチを押す。

「ありがとう」

 世田谷が入ったのを確認して、インターホンを切る。

 紅茶の葉っぱ入りポットに熱湯を注いで、それから玄関ドアを開け外に出る。
 ちょうどエレベータの階数表示が動いているところだった。

 手前のエレベータが10の表示で止まり、ドアが開く。
 もう研究室で見慣れた全身黒色衣装が出てきた。
 すぐにこっちを見つける。

「何か凄いマンションね。超高級な感じがする」

 まあ確かにこの島有数の高級マンションだけども。

「色々事情があってさ」

 そんな感じで入ってきて、そして。

「なにこれ、この温泉っぽい暖簾」

 世田谷、いきなりそこで引っかかった。

「深く追求しないでくれ。色々あってさ」

「そして何よこの間取り。個人宅にこんな大広間あるの始めてみたわ」

 まあそうだろうな、と俺も思う。

「普段は学生会関係者のたまり場だしさ。多人数で集まれるようにしたんだ」

「それにどうみてもカラオケセットと卓球セットがあるのは、気のせいかしら」

「それも学生会関係者の宴会用。深く追求しないでくれ。ここまで温泉旅館化が進んだのは最近なんだ」

 そう言いつつ、俺は紅茶入りポットとカップ、解凍済みシュークリーム入りのお盆をキッチンから持っていく。

「座卓しかないのは勘弁してくれ。それで何の用だ? 相談って書いてあったけれど」

「香緒里さんか、あと出来ればルイス君か詩織ちゃんがいないかしら」

 何だろう。

「香緒里ちゃんと詩織ちゃんはいるけど、今は風呂中だな。もう少ししたら出てくると思うけれど」

「ふーん」

 そう言って、世田谷はあたりをきょろきょろする。

「そう言えば今日は人がいないわね」

「今日は海で釣りをしているんだ。あと2時間もすれば帰ってくると思う」

「あの飛行漁船で」

 学生会が飛行漁船を持っていることは周知の事実だ。

「そう。大物狙いって言っていた」

「何か面白いものが釣れるといいわね」

 そんな事を話している間に客間の扉が開き、香緒里ちゃんと詩織ちゃんが出てきた。
 そして詩織ちゃんがこっちを見て、うっ! という顔をする。

「出た、黒魔女!何用なのですか!」

 黒魔女? ああ世田谷さんのことか。
 そう言えば世田谷さんも、詩織ちゃんの事を知っているようだった。

「世田谷さんは今の俺の研究室の同僚だ。最強の魔道具作りを目指す仲間ってとこだな」

「うーん、味方なら仕方ないです」

 詩織ちゃんは何か微妙に残念そうに言う。

「詩織も世田谷さんの知り合いなのか」

「現時点において学内最強最悪の敵なのです。異様に発動が早くてまとわりつく嫌らしい暗黒魔法を使うのです。ルイスの天敵なのです」

 成程な、そういう知り合いな訳だ。
 香緒里ちゃんも着替えてきて、4人で座卓を囲んでお茶会になる。

「実は学生会にお願いがあって来たんだけれども、まだ学生会って新人募集している?」

 世田谷が、用件らしいものを切り出した。

「5年生は募集していないと思うけどな」

「私じゃないわよ」

 わかっている。
 ついつい茶々を入れたくなっただけだ。

「入りたいというのは1年生よ。私の妹」

「あと1人位は全然問題無いです」

「予約とかそっちは」

「旅館等も団体扱ですし、5月末までなら全然」

「うーむ、黒魔女の妹ですか。強そうなのです」

 ここの2人は歓迎方向のようだ。
 まあ基本的にうちの学生会、希望者少ないので断った事は無いのだけど。

「何ならあと1時間位で学生会の残りが戻ってくるので、何ならこちらにお呼びしたらどうですか」

「うん、そうする。有難う、急にこんな話したのに」

「それにしても、何故今頃学生会に?」

 一応俺は聞いてみる。
 世田谷の事はある程度知っているけれど、妹とは会った事は無いので。

「今はうちの研究会にいるんだけど、どうもあっていないようでね。うちの研究会って割と横のつながり薄いし日本人ばかりじゃない。なんでどうも上手く馴染めないように見えてね。本人にも聞いてみたけれどやっぱりそんな感じらしいし。学生会なら留学生もいるし、攻撃魔法を鍛えるのにも問題ないしね」

 うちを攻撃魔法を鍛える研究会と間違っていないだろうか。
 まあそういう連中もいるんだけどさ。
 ん、待てよ。

「世田谷って帰国子女だっけ?」

 今の話だと妹は日本人じゃない感じだ。
 世田谷は肩をすくめる。

「義理の妹よ。親父の再婚相手の連れ子。まあ私と同じ攻撃型の魔法使いだけどね」

 そう言ってバックからスマホを出して、何か打ち始める。

「じゃあ妹呼ぶね。そこの団地だし、身支度含めて20分もかからないと思うわ」

 そう言えば世田谷の住所は、寮じゃなくて団地になっていたな、と俺は思う。
 それも確か賃貸ではなく、分譲の区画。

「団地という事は、家族も一緒にこの島にいる訳か?」

「父と母は奈良の橿原よ。術式学園隣接の魔法研究団地にいるわ。ここは一応父が勤務で使うかもしれないと言って買ったけれど、住んでいるのは私と妹だけ。まあ去年までは私だけだったけどね」

「何なら世田谷さんも一緒に、お昼御飯はいかがですか」

 香緒里ちゃんが、世田谷さんをお昼に誘った。

「えっ、でも悪いんじゃ……」

「2人分位増えても問題ないしな、ここじゃ。あの炊飯器を見れば想像つかないか」

 奈津季さんがいなくなって急遽買った、最新の炊飯器を俺は指差す。

「何、あのでっかいの……」

 世田谷さんの言葉がそこで途切れた。

「一応IH方式の最新型だけどな。業務用で3升炊ける。あれでも使わないと間に合わない事態が結構あってな。多分、今日の夜もそうなるかと」

「念の為昼の時点で最大で炊いておいて、残りを冷凍しておく予定です。そうしないと多分、今日の夜は間に合わないと思います」

「……そう言えたまに学生会で魚祭りやってるわね。あれが日常という訳か……」

 3年の6月ころに巨大ひものを食べる会をやって以来、天候が良かったり暇だったりすると、時折突発的に似たような会を学生会で開催している。
 要は釣りすぎた魚の後始末の会なのだが、そこそこ学内でも好評だ。
 定期的にとはいかないが、年2~3回位の感じで開催しているので、当然世田谷さんも知っていたらしい。
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