神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

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第4話 実は○○の野望らしいけれど

19 醤油と蒲鉾と……

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 翌朝、麹を採取しようとしていた事を思い出して、朝一番に山近くまで移動。
 明らかに黄変している部分があるので、全知で確認してみる。

『この状態なら、麹菌を分離して収納が可能です。またパンに使用可能な酵母も生えていますので、分離して収納出来ます』

 おっと、パンも作れるのか。
 うどんがあれば、別にパンはいらないけれど。

『かつてはケカハの地でも、パンを作っていました。ただし酵母を使用して発酵させるのは、特別な場合用の高級なパンで、普段は無発酵の薄焼きパンか、豆のスープが主食となっていました』

 そう言えばケカハ本来の食生活について、私はほとんど知らない。
 でも、まずは醤油だ。
 醤油を作った後、その気になって暇が出来たら確認してみよう。

 収納内で豆を蒸して、炒った小麦をまぜあわせる。本来は小麦と豆は1対1なのだけれど、豆のタンパク質が少なめらしいから、今回は豆7小麦3位。

 混ぜ合わせて、採取した麹菌を加えて繁殖させ、酵素を作り出した後、塩水を加えて熟成。
 これを絞って漉して、沈殿したり上に浮いたりしたものを取りのぞけば、生醤油の完成だ。

 ここまで昔ながらの方法で作ると、1年以上かかるらしい。
 温度を調節しても、3ヶ月くらいかかるとか。

 しかし神チートこと全在を使うと、材料を収納して加工方法を意識すれば、即座に完成品が出来てしまう。
 しかも細かい部分は、全知により最適な状態に調整された状態で。

 これでやっと、生醤油うどんを食べられる。
 このために、今まで釜あげうどんは食べなかったのだ。

 昨日麺帯状態まで作っておいたうどん生地を切って茹でて、どんぶりに入れる。
 生醤油をさっとかけて、ついでに昨日作った蒲鉾、揚げたて熱いまま保存した長天を載せて。

 本来は生醤油うどんには、生醤油をそのままかけない。出汁で溶いて薄くした、出汁醤油で食べるのがセオリーだ。

 しかし今回は、出来たての生醤油の味を確認したい。
 だからあえて、出汁で溶いたりせず、生醤油ストレートでいただく。

 おお、この醤油の香りこそ、正しい生醤油うどん。
 なんて思いつつ、まずは、醤油がついたうどんを一本。

 美味しい。しかし微妙に味に違和感がある。何か甘い気がするのだ。
 念の為、もう1本。うん、微妙に醤油に甘さがある。何故だ、これは。

『麹菌の酵素により、デンプンがブドウ糖や麦芽糖に分解されます。この糖はその後、乳酸菌や酵母菌により更に分解され、乳酸やアルコールになります。ですが今回は、この乳酸菌や酵母菌による作用がやや弱く、糖がやや多めに残った状態になっています』

 こんなの香川の醤油では無い、愛媛の醤油だ! もしくは海を渡って九州の醤油だ!
 そう言いたいけれど、ちょっとだけ予感がしたので、今度は食べ方を変えてみる。

 醤油に以前作ったいりこ出汁入りの汁を、醤油の約2倍ほど加えて、冷やして、これを釜揚げうどんにかける。
 あ、これは禁断の味だ。美味しい。無茶苦茶美味しい。

 元香川うどん県民として、この醤油は間違っている。
 それはわかるのだけれど、出汁醤油にして釜揚げうどんと食べると、これは……
 悔しいけれど、美味しい。

 しかもこれ、絶対におでんのつゆとしても美味しい奴だ。
 試しに『この出汁入り醤油で煮た長天』をイメージして作り出し、食べてみる。
 うむ、優勝! 文句なし!

 ああ、釜揚げうどんと長天、箸がすすむ……

 ◇◇◇

 満腹で眠くなったけれど、何とか身体を動かし、ドキ川の整備現場へ。
 何と、昨日作った河口までの水路に、細々とではあるけれど、水が流れていた。

 つまりこのドキ川、しっかり整備をすれば、河口まで水を流せるポテンシャルがある訳だ。
 宜しい。ならば雨の時期までに、完璧に整備させて貰おう。

 という事で工事開始。と言っても私がすることは、以前描いた図面を頭の中に思い浮かべ、現実の地形とあわせてイメージするだけ。

 あっさりと今日の分、工事完了。そして出来あがった、川となる部分の凹みに、じわじわと水が溜まっていく。

『現在出てきている水は、海程ではありませんが塩分を含んでいます。元々の伏流水の他、海から染みてきた水も上がってきているようです』

 折角の真水が勿体ない。しかし潮止めの下流だから、ある意味正しい結果ではある。
 むしろ汽水域が出来る事で、新たな生態系が出来る可能性がある。
 小魚なんかも繁殖してくれるかもしれない。
 そっちの方を、むしろ期待しよう。

 海までちゃんと繋がるのは、予定では明後日だから、それ以降の話になるけれど。

 さて、現在の時刻は……

『10時53分です』

 まだ昼食には早いし、お腹も空いていない。
 今日はキンビーラとアルツァーヤに、昼食の時に蒲鉾を確認して貰う予定だ。
 でもどうせなら、もう少しだけお腹を空かせてから行きたい。
 生醤油うどんも、いい出来だったことだし。

 ならいい畳や布団が出来たことだし、2時間程、仮眠してから行くとしよう。
 全知に目覚まし機能はあるだろうか。

『12時55分に、目が覚めるようにします』

 それでは布団で、ちょっと一眠り……
  
 ◇◇◇

 蒲鉾ひととおりは、キンビーラにもアルツァーヤにも大変好評だった。
 キンビーラは蒸して作る板蒲鉾と焼き竹輪、アルツァーヤはジャコ天をはじめとした揚げ蒲鉾てんぷら一通りを、領地の人間に作らせてみるそうだ。

 なおお礼として、いつもの海産物各種の他、アルツァーヤから『現在人間が栽培したり、居住地付近に植えている植物の種ひととおり』なんてのまで。

 これで樹木や野菜等の種類で、困る事はなくなる。
 ただし実際に植える際には、育てることになる人間に相談した方がいいだろう。
 アルツァーヤも言っていた。

「移住場所がある程度出来たら、帰還希望者のうち何人かを、土地の確認と要望聴取の為に呼んだ方がいいでしょう。私がアナートから預かっている者達に、その事を話しておきましょう」

 だから私がする事は、秋の雨季が来るまでの土木工事。
 ドキ川の他、もう1本近くの川、そして溜め池を整備して、洪水が無く、渇水の心配がない場所を作り出す事だ。

 雨の季節まで、あと3ヶ月程度。 
 神力を使えば、そう難しくはないだろう。

※ 醤油
 香川県の東讃地域や小豆島では、基本的には関東地方と同様、すっきりまろやかな塩味の醤油がメイン。しかし愛媛との県境近い観音寺市辺りまでくると、若干甘めの醤油が出始める。
 そして愛媛に入ると、西に行くほど醤油が甘くなる。更に高知へ南下したり西の海を渡って九州へ行ったりすると、もう……
 なお日本における甘い醤油は、製造方法そのものは通常の醤油と同じで、最後に甘味料を加えるという方法で作っている。つまりコトーミさんが作った醤油は、出来損な……(以下自主規制) 
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