神様転生~うどんを食べてスローライフをしつつ、領地を豊かにしようとする話、の筈だったのですけれど~

於田縫紀

文字の大きさ
57 / 84
第13話 海向こうからの侵略⑵

56 問題外との対面

しおりを挟む
 ハヤシマの北岸、元々は砂浜だったところに、巨大な崖が出来ている。
 山を何も考えずに1km程度の幅で切り取って、島とビシューの間の海に放り込んだという感じだ。

 下の凹凸等を考えずにただ出しているので、所々で変型したり崩れたりしている。
 せっかくのきれいな砂浜が台無しだ。
 元は港だった場所も、山の下敷きになっている。
 先程住民を避難させたのは正解だったようだ。

「切り離しますか」

「いや、私がやろう」

 深さが3m程度しか無い海が、一気に波打った。
 10m近い高さの波が巻き起こり、島とアキヅシマの境に打ち付ける。
 アキヅシマと今回出た山との境にある、一番低い部分が波にのまれた。
 同時に波の下がぐっとえぐれ、海となる。

 波が消え、海が穏やかになった。
 ただし今回波に削られた場所は、そこそこ海流がある。
 タケヒカタ島からここまで繋がった影響で、他を流れる筈だった海水が押し寄せているのだろう。
 西側から東側へ、川の下流くらいの速さで流れている。
 
「それでは警告をしておこうか」

 キンビーラはそう小声でつぶやいた後、 背筋を伸ばして、東北東を向いて、口を開いた

「ビシューの土地神、モ・トーに告ぐ。我はセート領域の沿海神、キンビーラである。何をもって海を侵そうとするのか、答えて貰おう」

 神が出現する気配はない。返答もない。
 キンビーラはふっとため息をついた。

「返答がないなら、こちらはこちらで手をうたせてもらおう。交易船はビシューから撤退させる。それでも返答がなく侵略の試みを続けるのなら、海岸側から2里8km以内の住民を山側へ避難させた方がいい。先ほど起こした以上の高波でもって、陸を削らせて貰う」

 そうなると土地神は、沿海神に勝ち目はない気がする。
 しかも海運を止めるとなると、今までの会話と説明からみて、影響が大きくなるだろう。
 ここで出てこなければ、マイナスが増えるだけだ。

 さて、どうなるか。
 予想通り対岸に神力が集まり、人型となった。
 こちらを見て姿を消し、そして私とキンビーラの前に出現する。

「私がビシューの土地神、モ・トー。セート海域の神に謝罪と、そして苦情を申し立てに来た」

 おっと、謝罪だけでなく苦情をも入れるのか。どういうつもりだろう。
 まあセート海域の神、つまりキンビーラ宛てだから、私は何も言わないけれども。

 なおモ・トーは金髪イケメンだが、癖がなさすぎる顔という気がする。
 だから私の好みとは微妙にあわない。今の状況とは関係ないけれど。

「苦情か。どのような苦情か、聞いておこう」

「何故この周辺の島を、最も近い領域の土地神である我ではなく、ケカハの土地神のものとした。ここはビシューの地とするのが適切であろう」

 あ、駄目だこの神。少なくとも私は、この時点でそう判断した。
 物事の順序が間違っている。そうなったのが自分の行動のせいだという事を、全く気づいていないか忘れているか。

「ならビシューの土地神に尋ねる。最初にムコーヤマ島、アルキ島、アマキダイ島、そしてタケヒカタ島までを沿海神である私に相談無く埋め立て、自分の領地にしようとしたのは誰なのか。答えよ」

「ハヤシマは元々ビシューの領地だ。それをケカハへ譲り渡したのはどう考えてもおかしい」

「物事の順序を考えよ。先に我が領域である島々を侵略したのはビシューだ。ならばそちらを信じるという選択肢が無いのは自明。ここは謙虚に非を認めて引き下がるべきであろう」

 神は自分に非があり、かつ状況的に不利であったとしても、引き下がらないものなのだろうか。
 それともモ・トーこいつとナハルが馬鹿なだけだろうか。
 そんな事を考えつつ、私は傍観者に徹している。

「我はウチツクニの土地神にしてアキヅシマの盟主、タケヤ様から西の攻めと守りを仰せつかった。なら陸路の他、セート海域を監視するのは我が任務。故にタケヒカタまでの島を治めるのは当然のこと」

 背後関係らしい、怪しいけれど知らない単語が出てきた。
 ここは全知の解説が必要だ。

『ウチツクニとは、元々はワシュー、サンシュー、カシュー、センシュー、セッシューの5つの領域を示す言葉です。そしてタケヤはサンシューの東側にあるゴーシューに20年前に着任した新たな土地神でした。
 そのタケヤが、天候不順で食糧不足に悩むサンシューの土地神ダトをだましてサンシューを乗っ取った後、ゴーシューに隣接する湖アフミの湖神ヤームと手を組み、洪水による攻撃でウチツクニの残り4領域を奪取。ウチツクニ全域を支配し、ゴーシューとともにウチツクニの土地神となりました』

 琵琶湖の水で下流の淀川流域一帯を攻めた、という感じの図面が、全知により脳裏に展開される。

『これらウチツクニは、アキヅシマの既知領域のほぼ中心部にあたります。それを根拠としてタケヤは、アキヅシマの盟主を自称し、周囲を更に侵略していったのです』

 なるほど。
 そしてこのモ・トーは、タケヤの先兵という訳か。

『モ・トーはタケヤの元へ下ることによって領地を保全する事を選びました。現在は元々の領地より更に領地を西へと広げ、西のゲーシューおよび北のハクシューへの侵略を進めているところです』

 なるほど、安直に考えれば悪の手先というところか。
 だが現状を変える存在が必ずしも悪だとは限らない。
 洪水で攻めたタケヤなんてのは論外だろうけれど、モ・トーの場合はどんな感じなのだろう。

『タケヤから与えられた神器で山を崩し谷を埋め、元からの住民を全滅させた後、自らの信徒で占領するという方法をとっています』

 やり方はもう、完全なる悪だ。
 でも自領の住民に対してはどうなのだろうか。

『信徒となることを強制し、容赦なく徴兵しては占領部隊として送り出すので、嫌悪されています。また派兵に必要な食料等を得るため、税率が他領、例えばゲーシューやセキテツ等と比べるとかなり高く、収穫高等の6割近くとなっていることも嫌悪される理由のひとつです』

 ここまで悪役ですというのも、何というか珍しい気がする。
 もう滅ぼした方がいいんじゃないかというレベルだ。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

スローライフ 転生したら竜騎士に?

梨香
ファンタジー
『田舎でスローライフをしたい』バカップルの死神に前世の記憶を消去ミスされて赤ちゃんとして転生したユーリは竜を見て異世界だと知る。農家の娘としての生活に不満は無かったが、両親には秘密がありそうだ。魔法が存在する世界だが、普通の農民は狼と話したりしないし、農家の女将さんは植物に働きかけない。ユーリは両親から魔力を受け継いでいた。竜のイリスと絆を結んだユーリは竜騎士を目指す。竜騎士修行や前世の知識を生かして物を売り出したり、忙しいユーリは恋には奥手。スローライフとはかけ離れた人生をおくります。   

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護
ファンタジー
10歳の咲耶(さや)は家族とのキャンプ旅行で就寝中、豪雨の影響で発生した土石流に巻き込まれてしまう。 意識が浮上して目覚めると、そこは森の中。 彼女は10歳の見知らぬ少女となっており、その子の記憶も喪失していたことで、自分が異世界に転生していることにも気づかず、何故深い森の中にいるのかもわからないまま途方に暮れてしまう。 そんな状況の中、森で知り合った冒険者ベイツと霊鳥ルウリと出会ったことで、彼女は徐々に自分の置かれている状況を把握していく。持ち前の明るくてのほほんとしたマイペースな性格もあって、咲耶は前世の知識を駆使して、徐々に異世界にも慣れていくのだが、そんな彼女に転機が訪れる。それ以降、これまで不明だった咲耶自身の力も解放され、様々な人々や精霊、魔物たちと出会い愛されていく。 これは、ちょっぴり天然な《咲耶》とチート従魔たちとのまったり異世界物語。 ○○○ 旧版を基に再編集しています。 第二章(16話付近)以降、完全オリジナルとなります。 旧版に関しては、8月1日に削除予定なのでご注意ください。 この作品は、ノベルアップ+にも投稿しています。

勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。

克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。

ギルドの片隅で飲んだくれてるおっさん冒険者

哀上
ファンタジー
チートを貰い転生した。 何も成し遂げることなく35年…… ついに前世の年齢を超えた。 ※ 第5回次世代ファンタジーカップにて“超個性的キャラクター賞”を受賞。 ※この小説は他サイトにも投稿しています。

元勇者パーティーの雑用係だけど、実は最強だった〜無能と罵られ追放されたので、真の実力を隠してスローライフします〜

一ノ瀬 彩音
ファンタジー
元勇者パーティーで雑用係をしていたが、追放されてしまった。 しかし彼は本当は最強でしかも、真の実力を隠していた! 今は辺境の小さな村でひっそりと暮らしている。 そうしていると……? ※第3回HJ小説大賞一次通過作品です!

【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。  帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。  しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。  自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。   ※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。 ※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。 〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜 ・クリス(男・エルフ・570歳)   チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが…… ・アキラ(男・人間・29歳)  杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が…… ・ジャック(男・人間・34歳)  怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが…… ・ランラン(女・人間・25歳)  優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は…… ・シエナ(女・人間・28歳)  絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……

処理中です...