上 下
34 / 78

34

しおりを挟む
「次は、~駅バスターミナルに停車いたします」
仁人さんと別れて、その後はなんとなく眠れなかった。だから荷物を早めに用意して夕方に家を出て、お土産を近くのお土産物を売っているお店で買い、時間までご飯を食べたりして暇を潰した。そして乗車駅で定刻通りに来たバスに乗り込み、指定座席へ座る。同じ場所で乗る人は割と多く、しばらくしてから出発した。まだ車内は照明を落とさないから、仁人さんに乗り込んだという連絡を入れて、飲み物をカバンから出しておく。すでに車内は照明こそついているものの、カーテンが閉められておりそろそろ返信はできなくなるだろうと思う。
「これより~」
寝る支度をしているうちにアナウンスがされ、照明が落とされる。音楽を聴くために耳にイヤホンをし、私も眠りについた。



「まもなく、~駅に到着いたします」
朝、自然と目が覚めて少し座席で身体のコリをほぐした。やはりと言うべきか大型バスの座席でゆっくりと眠ることはできず、時折目を覚ましていた。だからなのか、昨日もよく眠れなかったのに、今日も眠れないとさすがに身体がだるい。
(あと、二時間くらいか……)
ちょうど四国に入ったあとは、車内もざわざわとし始め、全体が起床した。一人、心の中でそう思い、電源を切っていたスマホのボタンを押し、起動させると通知が一気に入り始めた。私の両親はスマホにしているので、両親からメッセージアプリにメッセージが来ていたし、仁人さんからもメッセージが入っていた。しかも仁人さんに関しては夜と朝の両方にメッセージが来ていた。
(あ、時間……知っててくれたんだ……)
どのバス停から何時に出発すると伝えていたからか、今から一時間ほど前に連絡が入っていた。
〝おはよう、奏。もうそろそろ四国に入るころだろ、起きてるか?俺は今から収録と、午後から撮影だ。頑張ってくるよ、行ってきます〟
(今日は収録もあるんだ……。本当に忙しいお人なんだなぁ……。私は、外から見ていることしかできない……)
心の中は何も力になれないことに悩んでしまったが、文章は明るく返した。それ以降、メッセージが帰ってくることはなく、私もそのまま両親に連絡をした後はスマホの画面を消した。音楽を聴きながら、カーテンの開いた窓から景色を眺める。もう少しで実家だと思うと、先ほど沈んだ気持ちは、多少は上がる。

やがて、二時間は過ぎ去り、自分の降車するバスターミナルに着いた。すでに両親が迎えに来ているとのことだったので、降りるだけでいい。
「ありがとうございました」
運転手さんにお礼を言って降り、両親の待つ場所へ行けば、そこには車が停まっていた。久しぶりの両親だった。
「久しぶりやね、奏」
「無事でよかった、奏」
「ただいま、お母さん、お父さんも」
車に荷物を詰め込み、後部座席に乗ったら車は出発した。
しおりを挟む

処理中です...