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「オルブライト、これを配っておいてくれ」
「はい、先生」
学校であるから、私たちも先生のことは普通に先生と呼んでいる。厳密にいえば生徒ではないけれど、私たちも生徒のような存在として、学校では認識をされている。
「ああ、それとここだけの話だが・・・。転校生が来る予定だ、アークライトに案内させようと思っているからその旨を伝えておいてくれ」
「かしこまりました」
深く礼をし、退室する。こういうところでもしっかりとした姿を見せておくことで、主様の評価につながる。従者の評価は主様の評価に直結する。だから私たち従者は気を付けなければならない。
「やっぱりオルブライトに任せて正解だな」
「ああ、アークライト家の従者は質が高い」
先生の声が聞こえる。今日も主様の評価を落とさない動きができたことを感じ、嬉しくなる。私は期限付きの従者。いずれ、主様のもとからいなくなってしまう存在だ。少しでも主様に覚えていてほしくて、でも忘れてほしいという矛盾した願いを胸に廊下を、背筋を伸ばして歩く。
「お疲れ様でございました。主様」
「ありがとう、ノア。早速だが紅茶を頼む」
「かしこまりました」
午前中、すべての授業が終わり、食堂へとランチにやってきた。当たり前だが従者は一緒に食べないので、私は主様に頼まれた紅茶を用意しながら、運ばれてきたランチを主様の机にきれいに並べる。そして後ろで待機する。主様の席にはほかに、この国の第一王子であるランドルフ王子、ランドルフ王子の婚約者で公爵家息女のイザベル・ダンフォード様、侯爵家嫡子カーティス様が一緒に着席されている。もちろん、それぞれに従者や侍女が付いている。私は主様に頼まれた紅茶を人数分、丁寧に用意し、ティーカップへ注いでいく。
「失礼いたします」
一言ずつ声をかけて紅茶をセットする。そしてランドルフ王子の言葉に食事が始まる。静かに談笑しながら上品に食べる彼らを見ながら、周囲にも気を配る。周囲にこちらに害をなそうとする人間がいれば即座に、秘密裏に対処をすることも我がオルブライト家では必須事項。主様や主様のご学友の方々に悟られることのないように、安全を提供する。それは従者にも必要なこと。
「ノア、今日もおいしいわ」
「お褒めいただき、恐悦至極にございます」
イザベル様に紅茶をほめていただき、嬉しくなって淡く微笑む。丁寧に用意する甲斐がある、というものだ。従者や護衛をされることが当たり前だと思っている貴族の令息令嬢がいる中で、私は本当に良い主様に恵まれている。それに主様の周囲にいる方々も良い方々だ。私はそんな人たちに囲まれて本当に幸せだ。
「では、また明日」
「ごきげんよう」
主様の一歩後ろで深くお辞儀をして門の前で別れる皆様を見送って、主様を用意させておいた馬車へ案内する。その車内でも今日の連絡事項をお伝えする。
「はい、先生」
学校であるから、私たちも先生のことは普通に先生と呼んでいる。厳密にいえば生徒ではないけれど、私たちも生徒のような存在として、学校では認識をされている。
「ああ、それとここだけの話だが・・・。転校生が来る予定だ、アークライトに案内させようと思っているからその旨を伝えておいてくれ」
「かしこまりました」
深く礼をし、退室する。こういうところでもしっかりとした姿を見せておくことで、主様の評価につながる。従者の評価は主様の評価に直結する。だから私たち従者は気を付けなければならない。
「やっぱりオルブライトに任せて正解だな」
「ああ、アークライト家の従者は質が高い」
先生の声が聞こえる。今日も主様の評価を落とさない動きができたことを感じ、嬉しくなる。私は期限付きの従者。いずれ、主様のもとからいなくなってしまう存在だ。少しでも主様に覚えていてほしくて、でも忘れてほしいという矛盾した願いを胸に廊下を、背筋を伸ばして歩く。
「お疲れ様でございました。主様」
「ありがとう、ノア。早速だが紅茶を頼む」
「かしこまりました」
午前中、すべての授業が終わり、食堂へとランチにやってきた。当たり前だが従者は一緒に食べないので、私は主様に頼まれた紅茶を用意しながら、運ばれてきたランチを主様の机にきれいに並べる。そして後ろで待機する。主様の席にはほかに、この国の第一王子であるランドルフ王子、ランドルフ王子の婚約者で公爵家息女のイザベル・ダンフォード様、侯爵家嫡子カーティス様が一緒に着席されている。もちろん、それぞれに従者や侍女が付いている。私は主様に頼まれた紅茶を人数分、丁寧に用意し、ティーカップへ注いでいく。
「失礼いたします」
一言ずつ声をかけて紅茶をセットする。そしてランドルフ王子の言葉に食事が始まる。静かに談笑しながら上品に食べる彼らを見ながら、周囲にも気を配る。周囲にこちらに害をなそうとする人間がいれば即座に、秘密裏に対処をすることも我がオルブライト家では必須事項。主様や主様のご学友の方々に悟られることのないように、安全を提供する。それは従者にも必要なこと。
「ノア、今日もおいしいわ」
「お褒めいただき、恐悦至極にございます」
イザベル様に紅茶をほめていただき、嬉しくなって淡く微笑む。丁寧に用意する甲斐がある、というものだ。従者や護衛をされることが当たり前だと思っている貴族の令息令嬢がいる中で、私は本当に良い主様に恵まれている。それに主様の周囲にいる方々も良い方々だ。私はそんな人たちに囲まれて本当に幸せだ。
「では、また明日」
「ごきげんよう」
主様の一歩後ろで深くお辞儀をして門の前で別れる皆様を見送って、主様を用意させておいた馬車へ案内する。その車内でも今日の連絡事項をお伝えする。
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