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「おはよう、ノア」
「おはようございます、キース様」
「しばらく学校は休みだ」
「えっ……」
朝起きて、そろそろ着替えないといけないと思い動き出すと、キース様に学校はお休みだと言われた。なぜ休みなのかがわからなくて、思わず振り向いてしまう。
「貴族のご令嬢が二人も誘拐されたんだ、調査と警備を見直すとのことで一週間、学校は休業だそうだ」
「……私のせいで……」
「それは違う。そもそも誘拐を企てた連中が悪いんだ」
防ごうと思えば、防げたはずだった。防げなかったのは私の落ち度だ。
「ノア、防ごうと思っても、どこかで穴はある。完璧に事件自体を起こさせないのは難しい、それに家の警備が入りづらい学校ともなるとなおさらだ。気にすることはないんだよ」
「それでも……もし、不都合な噂などを立てられたら……私は……」
イザベル様やランドルフ様、キース様に合わせる顔がない。責任だってとれない、死んでお詫びをするしか方法を思いつかない。
「ノア、その程度の噂で疵が付く家ではないよ、イザベル嬢も俺も。ましてやランドルフは王家だ。ここまで高位の家柄となると、社交界では噂がたてられない。逆にノアの武功が語られるくらいになる。安心していい」
私はキース様と違って社交界に顔を出していたわけではない。社交界で揉まれてきたキース様がそうおっしゃるのであれば、きっと大丈夫なのだろう。心配であることに、変わりはないけれど。
「社交界というところはね、醜聞の方が好まれるんだよ」
「そう、なのですね……」
たしかに、前もべインズ家の醜聞が広まっていた。今回もそうなるのだろうということは、想像に難くない。
「ノア、まずはゆっくりしよう。後で憲兵の聞き取りもあるから」
「はい……」
無理やりに考え事をやめて、キース様の言葉に耳を傾ける。自分が思っている以上に、私は疲れているようで、主様の、キース様の声を聞いていたら、また涙が溢れてくる。
「ノア……」
「きーす、さま……」
怖いと思ったし、弱くなってしまった自分に腹が立つ。従者の頃なら絶対そんなことは思わなかっただろうに。
「ノア、従者としてのノアも、今のノアも、俺は愛しているから、どうかお前自身を否定するな」
前の自分のほうがよかった、そう思う私をキース様は両方大事だと言ってくれる。少しは、前の私が報われる気がした。
「聞き取りに来るまでは、のんびりしよう。しんどいなら、横になっていたってかまわない」
「いえ、動きたい気分なので、起きます」
甘えて、横になろうかとも思ったが、すっきりとした気持ちで聞き取りを終えたいと思い、身体を動かすことにする。
「散歩でも行くか?」
「あ、その……訓練所をお借りできますか」
「騎士に交じって訓練をするのか?」
「はい、身体を動かしたくて。騎士の方の邪魔にならないように隅でかまわないので……」
小さなころ、嫌なことがあった日は、オルブライト家でもよく動いていた。剣術や武術を組み合わせた独自のオルブライト家が教えていたもの。身体を動かすと少しだけ、すっきりとした。
まともに動ける日はほとんどなかったけど、何もしないよりはまだよかった。
「わかった、ケガはしないように気をつけろ」
「ありがとうございます!」
まあ、いいだろう、とキース様が許可をくれたので、さっそく準備をすることにした。
「おはようございます、キース様」
「しばらく学校は休みだ」
「えっ……」
朝起きて、そろそろ着替えないといけないと思い動き出すと、キース様に学校はお休みだと言われた。なぜ休みなのかがわからなくて、思わず振り向いてしまう。
「貴族のご令嬢が二人も誘拐されたんだ、調査と警備を見直すとのことで一週間、学校は休業だそうだ」
「……私のせいで……」
「それは違う。そもそも誘拐を企てた連中が悪いんだ」
防ごうと思えば、防げたはずだった。防げなかったのは私の落ち度だ。
「ノア、防ごうと思っても、どこかで穴はある。完璧に事件自体を起こさせないのは難しい、それに家の警備が入りづらい学校ともなるとなおさらだ。気にすることはないんだよ」
「それでも……もし、不都合な噂などを立てられたら……私は……」
イザベル様やランドルフ様、キース様に合わせる顔がない。責任だってとれない、死んでお詫びをするしか方法を思いつかない。
「ノア、その程度の噂で疵が付く家ではないよ、イザベル嬢も俺も。ましてやランドルフは王家だ。ここまで高位の家柄となると、社交界では噂がたてられない。逆にノアの武功が語られるくらいになる。安心していい」
私はキース様と違って社交界に顔を出していたわけではない。社交界で揉まれてきたキース様がそうおっしゃるのであれば、きっと大丈夫なのだろう。心配であることに、変わりはないけれど。
「社交界というところはね、醜聞の方が好まれるんだよ」
「そう、なのですね……」
たしかに、前もべインズ家の醜聞が広まっていた。今回もそうなるのだろうということは、想像に難くない。
「ノア、まずはゆっくりしよう。後で憲兵の聞き取りもあるから」
「はい……」
無理やりに考え事をやめて、キース様の言葉に耳を傾ける。自分が思っている以上に、私は疲れているようで、主様の、キース様の声を聞いていたら、また涙が溢れてくる。
「ノア……」
「きーす、さま……」
怖いと思ったし、弱くなってしまった自分に腹が立つ。従者の頃なら絶対そんなことは思わなかっただろうに。
「ノア、従者としてのノアも、今のノアも、俺は愛しているから、どうかお前自身を否定するな」
前の自分のほうがよかった、そう思う私をキース様は両方大事だと言ってくれる。少しは、前の私が報われる気がした。
「聞き取りに来るまでは、のんびりしよう。しんどいなら、横になっていたってかまわない」
「いえ、動きたい気分なので、起きます」
甘えて、横になろうかとも思ったが、すっきりとした気持ちで聞き取りを終えたいと思い、身体を動かすことにする。
「散歩でも行くか?」
「あ、その……訓練所をお借りできますか」
「騎士に交じって訓練をするのか?」
「はい、身体を動かしたくて。騎士の方の邪魔にならないように隅でかまわないので……」
小さなころ、嫌なことがあった日は、オルブライト家でもよく動いていた。剣術や武術を組み合わせた独自のオルブライト家が教えていたもの。身体を動かすと少しだけ、すっきりとした。
まともに動ける日はほとんどなかったけど、何もしないよりはまだよかった。
「わかった、ケガはしないように気をつけろ」
「ありがとうございます!」
まあ、いいだろう、とキース様が許可をくれたので、さっそく準備をすることにした。
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