56 / 57
56
しおりを挟む
あれからキース様にさんざん遊ばれた私は、お風呂に入っていた。もちろん、噛み痕やらキスマークやらが大量についた身体なんぞ人様に見せられるものではないので、一人で入っている。
「あいたたた……」
鈍い痛みを訴える腰や股関節に、苦笑いが浮かぶ。過激な言葉を言われはしたものの、一応は理性があったらしい。ナカに出されはしなかった。
「ノア、大丈夫か」
「は、はいっ!」
ゆっくりと、のんびり湯船に浸かっていると、外からキース様のお声がかかる。こうして遅いと度々、身に来るのだ。
「着替え、置いとくからな」
「あ、ありがとうございます」
そして彼自ら、私の着替えを用意してくれる。なんでも、たとえ侍女と言えど、私の世話をするのは妬いてしまうとのこと。私としても、誰かにお世話をしてもらうのは慣れていないので、キース様の心遣いがありがたい。
「そろそろ、出ないと、ね……」
キース様と穏やかな日々を過ごせるようになって、ずいぶんと傷は癒えた。心の傷はなかなか難しいけれど、身体の傷はほとんど残っていない。
それも、すべてキース様とお父様、お母様のおかげだ。傷痕が残らないようにと専用の薬を取り寄せたり、定期的な医師の診察を受けさせてくれたりしたから。
「でも、いいの、かな……」
けれど、それでも大きな傷はいくつか残ってしまう。ほとんどないといっても、残るものがある。それは私の心に大きな棘となって刺さっていた。
バスタオルに身を包み、大きな姿見の前で背中を見る。鞭で打たれた痕がくっきりと残っている場所があり、そこはドレスを着ても見えてしまう位置だった。
「相応しい、のかな……」
急に不安感が押し寄せてくる。大丈夫だと分かっているのに、こんな身体、本当はダメなのではないか、と思ってしまう。
「ノア、俺はありのままのノアを愛しているよ」
「キ、キース様?!」
洗面台に手をついて、傷だらけの自分から目を逸らす。そのためにキース様がやってきていたことに気が付けなかった。落ち込む私をギュッと後ろから抱きしめて囁く彼に、自然と涙がこぼれた。
「だっ、て……」
こんな身体、汚い、と言いいたくても言葉が出ない。
「それは、お前がたくさん頑張った証だろう。それを否定する必要はないよ」
優しく、傷があってもなくてもいい、と伝えてくれる。そう、この傷は私が耐えてきた証だ。だからこそ、私は自分で自分を否定するその言葉が言えなかった。たとえ、本当にこの傷だらけの身体が汚いとわかっていても、思っていたとしても、それは私が諦めずに主様のお側に立つために頑張ってきたもの。
厳しいオルブライト家のすべてを教育されて、主様に相応しい従者として努力を重ねてきた証。簡単に自分でそれらを否定できるものではなかった。
「ノア、大丈夫だ」
こくり、と俯いたまま頷く。前よりもずっと伸びた髪が頬に触れる。私はもう孤独な従者じゃない。オルブライト家では愛されなかったけど、私を愛してくれる人がいる。もう、愛がほしいと泣かなくていい。
全てを認めてくれるキース様がいるから。
「あいたたた……」
鈍い痛みを訴える腰や股関節に、苦笑いが浮かぶ。過激な言葉を言われはしたものの、一応は理性があったらしい。ナカに出されはしなかった。
「ノア、大丈夫か」
「は、はいっ!」
ゆっくりと、のんびり湯船に浸かっていると、外からキース様のお声がかかる。こうして遅いと度々、身に来るのだ。
「着替え、置いとくからな」
「あ、ありがとうございます」
そして彼自ら、私の着替えを用意してくれる。なんでも、たとえ侍女と言えど、私の世話をするのは妬いてしまうとのこと。私としても、誰かにお世話をしてもらうのは慣れていないので、キース様の心遣いがありがたい。
「そろそろ、出ないと、ね……」
キース様と穏やかな日々を過ごせるようになって、ずいぶんと傷は癒えた。心の傷はなかなか難しいけれど、身体の傷はほとんど残っていない。
それも、すべてキース様とお父様、お母様のおかげだ。傷痕が残らないようにと専用の薬を取り寄せたり、定期的な医師の診察を受けさせてくれたりしたから。
「でも、いいの、かな……」
けれど、それでも大きな傷はいくつか残ってしまう。ほとんどないといっても、残るものがある。それは私の心に大きな棘となって刺さっていた。
バスタオルに身を包み、大きな姿見の前で背中を見る。鞭で打たれた痕がくっきりと残っている場所があり、そこはドレスを着ても見えてしまう位置だった。
「相応しい、のかな……」
急に不安感が押し寄せてくる。大丈夫だと分かっているのに、こんな身体、本当はダメなのではないか、と思ってしまう。
「ノア、俺はありのままのノアを愛しているよ」
「キ、キース様?!」
洗面台に手をついて、傷だらけの自分から目を逸らす。そのためにキース様がやってきていたことに気が付けなかった。落ち込む私をギュッと後ろから抱きしめて囁く彼に、自然と涙がこぼれた。
「だっ、て……」
こんな身体、汚い、と言いいたくても言葉が出ない。
「それは、お前がたくさん頑張った証だろう。それを否定する必要はないよ」
優しく、傷があってもなくてもいい、と伝えてくれる。そう、この傷は私が耐えてきた証だ。だからこそ、私は自分で自分を否定するその言葉が言えなかった。たとえ、本当にこの傷だらけの身体が汚いとわかっていても、思っていたとしても、それは私が諦めずに主様のお側に立つために頑張ってきたもの。
厳しいオルブライト家のすべてを教育されて、主様に相応しい従者として努力を重ねてきた証。簡単に自分でそれらを否定できるものではなかった。
「ノア、大丈夫だ」
こくり、と俯いたまま頷く。前よりもずっと伸びた髪が頬に触れる。私はもう孤独な従者じゃない。オルブライト家では愛されなかったけど、私を愛してくれる人がいる。もう、愛がほしいと泣かなくていい。
全てを認めてくれるキース様がいるから。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
婚約解消されたら隣にいた男に攫われて、強請るまで抱かれたんですけど?〜暴君の暴君が暴君過ぎた話〜
紬あおい
恋愛
婚約解消された瞬間「俺が貰う」と連れ去られ、もっとしてと強請るまで抱き潰されたお話。
連れ去った強引な男は、実は一途で高貴な人だった。
ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました
大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――
わたしのヤンデレ吸引力が強すぎる件
こいなだ陽日
恋愛
病んだ男を引き寄せる凶相を持って生まれてしまったメーシャ。ある日、暴漢に襲われた彼女はアルと名乗る祭司の青年に助けられる。この事件と彼の言葉をきっかけにメーシャは祭司を目指した。そうして二年後、試験に合格した彼女は実家を離れ研修生活をはじめる。しかし、そこでも彼女はやはり病んだ麗しい青年たちに淫らに愛され、二人の恋人を持つことに……。しかも、そんな中でかつての恩人アルとも予想だにせぬ再会を果たして――!?
男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました
春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。
名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。
誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。
ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、
あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。
「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」
「……もう限界だ」
私は知らなかった。
宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて――
ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。
義兄に甘えまくっていたらいつの間にか執着されまくっていた話
よしゆき
恋愛
乙女ゲームのヒロインに意地悪をする攻略対象者のユリウスの義妹、マリナに転生した。大好きな推しであるユリウスと自分が結ばれることはない。ならば義妹として目一杯甘えまくって楽しもうと考えたのだが、気づけばユリウスにめちゃくちゃ執着されていた話。
「義兄に嫌われようとした行動が裏目に出て逆に執着されることになった話」のifストーリーですが繋がりはなにもありません。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる