虐げられた伯爵令嬢は獅子公爵様に愛される

高福あさひ

文字の大きさ
2 / 57

02

しおりを挟む
「遅い、相変わらずグズでノロマね」

冷ややかな継母の目に、私はどう映っているのか知らない。でも、いつもその目が気に食わないと叩かれるから、ずいぶんとふてぶてしく映っていると思われる。

「申し訳ございません」

口だけの謝罪をして、継母の機嫌がいい方へ過ぎていくのを待つ。この人に用事を言いつけられなければ、すぐに小屋へ戻る手筈だ。厨房で食事を軽く、くすねてからにはなるけど。

「小汚いネズミだわ。早く部屋を出ていきなさい」

「失礼いたしました」

今日はご機嫌な方だったらしい、特に何かを言われることもなく出て行けと言われたので、さっさと退室する。この家は、前妻の子どもである私には優しくない。使用人にも劣る扱いだ、そんな扱いを家人がしているのなら、使用人だって同じように扱う。

ひそひそと私の姿を見て、使用人たちが陰口を叩くのも慣れた。どこにも居場所がないのも、慣れた。本当は慣れてはいけないとは、わかっている。でも、慣れるしかなかった。

「急がなきゃ」

誰もいないのを見計らって、厨房から食べやすそうな食材をちょっとずつ取る。料理もできるから、できているものでなくても大丈夫なのだ。

隠し持った袋に食材を詰め込み、ついでにあてがわれている自室からも使えそうなものを持っていく。小屋は元々、森番のために建てられたものだから、一人で暮らす分に問題ない程度にはいろいろ揃っている。それに、私の避難先でもあったから、それなりに備蓄もしているということもある。

「あ……! 目が覚めたんですね」

小屋に辿り着き、ドアを開けるとちょうど、身体を起こしている人がいた。その人は周囲をとても警戒していて、私が入ってきたのに気づくと、ものすごく睨まれた。

どこかもわからない場所で寝かされている、となると警戒するのも無理はないので、あえて無害ですよとアピールしながら声をかける。

「ここ、は……」

「ここはリリム王国辺境伯、エインズワース伯爵領です。この小屋は森番のための小屋です」

「そう、か……」

私が女で非力だと思われたのか、幾分か警戒を緩めた黒髪の男性。身なりがとてもいいので、おそらく貴族だろうと考え、端的に事実だけを述べる。貴族であれば、エインズワース伯爵領と言えば、アルムテア帝国との国境に位置する伯爵領だとわかるからだ。

「怪我をして倒れていたところを、私が発見しました。ここは森の中にある小屋ですが、周辺は魔物除けの魔法があるので、襲われる心配はありません。とりあえず、身体を休めてください」

おそらく、私よりも高位貴族であろう。しかし、だからと言って私もここで彼らを放り出すわけにはいかない。黒髪の男性をもう一度寝かせて、毛布を掛ける。

「なま、え、は?」

「あ、申し遅れました。私はユーニス、エインズワース伯爵が長女、ユーニス・エインズワースと申します。どうぞ、ユーニスとお呼びください」

また眠りに落ちていきそうな男性に名前を問われて、一瞬迷ったが正確な名前を伝える。偽名とか家名を言わないとかも考えたが、それもそれで失礼か、と思ったので。

「目が覚めたら、ご飯食べられるかな」

まだ、もう一人の男性、ボルドーの髪の毛の人は目が覚めていない。この方は黒髪の人よりも深手だったから、仕方がないかなとは思う。もしかしたら主従か何かかもしれない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?

ねーさん
恋愛
 公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。  なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。    王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!

【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした

ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。 彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。 そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。 しかし、公爵にもディアにも秘密があった。 その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。 ※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています ※表紙画像はAIで作成したものです

2度目の人生は好きにやらせていただきます

みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。 そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。 今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。

処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!

秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。 民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。 「おまえたちは許さない」 二度目の人生。 エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。 彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。 1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。 「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」 憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。 二人の偽りの婚約の行く末は……

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

【完結】もう結構ですわ!

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
 どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。  愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!  ハッピーエンド確定 【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/11/29……完結 2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位 2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位 2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位 2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位 2024/09/11……連載開始

病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで

あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。 怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。 ……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。 *** 『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』  

【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。

完菜
恋愛
 王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。 そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。  ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。  その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。  しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)

処理中です...