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先の見えない不安、希望のない未来。お金もない、生活は苦しくなるばかり、そんな状況を改善しようともしない王侯貴族など、自分たちには必要ない。そう民たちが判断するのは時間の問題だ。
「あの場では言いませんでしたが……リリムにはレジスタンスメンバーがいるかと思います。そして本当に存在するのならば、そのメンバーは皇女お披露目の後に必ず接触するはずです。そこからが、本当の戦いかと」
平民と貴族に優劣が付けられるような、違いはない。明確な違いはただ一つ、爵位があるかどうかだけ。お金も含めると範囲は広くなるけれど、平民だからと言って優秀な人がいないわけではない。貴族がみんな優秀な人ばかりである、というのももちろん嘘だ。
平民ゆえに、勉強の機会が与えられなくとも、一を聞いて十のことを理解できる人はいるし、カリスマ性に富んだ人もいる。貴族だからすべてにおいて秀でていると言うのは間違い。もしも、王国内にレジスタンスメンバーがいるとすれば、確実に今の王侯貴族を落とせるだろう。
「そうだな、殿下の耳にも入っているだろうが、入れておく」
「……はい」
馬車で時間をかけて屋敷まで帰り着いた。帰宅すると、すでに夕食の準備ができていて、私たちは思いの外、出かけていたんだなと思う。日も沈みだして、部屋の中にいてもどんどん寒くなる空気。この寒さに耐える日々を、私はつい先日まで送っていた。
「アル……」
与えられた部屋に戻って、着替えていると、アルが部屋の中を飛び回る。アルは自分の意志でここに留まっているから、鳥かごなどは用意していない。その自由な姿に、私は少しだけ感傷に浸った。
自由なんて知らなかった、ただ一日を生きるのに精いっぱいだった。明日、空腹で死ぬかもしれないと思ったことは、何度もある。そのたびに、森の動物たちが食べ物を分けてくれたのも、覚えている。
「……私に、できることを」
まだ私には知識が足りない。こちらに来たばかりなのもあるし、伯爵家でも必要な教育は与えられず、自己流だ。それらをまずは、解消しなければ。
「ユーニス様、お夕食の支度が整いました。こちらへどうぞ」
「ありがとうございます、アン」
アンに呼ばれて食堂へ向かう。彼女とはだいぶ打ち解けて、アンと呼ぶのに違和感はなくなってきた。いろいろ話もするので、優しい彼女のことをよく、私は聞いている。例えば、旦那さんがいて、その人はこのお屋敷の総執事長だとか、ね。
「ユーニス、待っていた」
「お待たせいたしました、レイフ様」
まだ着慣れない、部屋着のワンピース。上質すぎて、全然慣れないものだ。このワンピ―スはもちろん、レイフ様に贈っていただいた洋服で。シンプルなデザインなのに、非常に目を引くものだ。
他愛無い話をしながら、夕食を進める。私もこうして部屋から出て食事ができるようにはなったものの、まだ彼と同じだけの食事はできない。長年、満足に食事ができなかったから、急に食べられるようにはならない。ゆっくりと食べる量を増やしていくことが、健康になる第一歩だと、お医者様にホケホケ笑いながら言われた。
魔法は口渇感を癒すことができたけど、空腹は満たしてくれなかった。動物たちに分けてもらった木の実は、飢えた私を生かしてくれた。私は、自分の知っている苦しみがどれほど辛いものなのかを知っているから、だから他者にそんな思いをしてほしくないのかもしれない。
飢えも喉の渇きも、お金のない貧しさも、全て苦しく辛いものだ。支えがあればお金に関しては何とかなるかもしれないけれど。飢えや口渇感は違う。支援があったとしても、それらを満足に満たすのは難しいことだ。
「ユーニス、俺も側にいる。一人で、抱え込むな」
夕食後、レイフ様はまだ執務があるということで寝ないが、私をわざわざ部屋まで送ってくれた。私の考えていることを読み取ったかのような、そんな彼の言葉。どこまで私のことを一番に優先している彼に、私はそっと抱き着いた。
「ユーニス?」
「もう少しだけ、いいですか?」
「ああ、もちろんだ」
理由も言わない私に、訳を聞くこともなく。静かで穏やかな時間が彼の手によって与えられる。短い間だけど、私にはたくさんの大切な人ができた。その人たちを守るためなら、どんなことも頑張れる気がするんだ。
「あの場では言いませんでしたが……リリムにはレジスタンスメンバーがいるかと思います。そして本当に存在するのならば、そのメンバーは皇女お披露目の後に必ず接触するはずです。そこからが、本当の戦いかと」
平民と貴族に優劣が付けられるような、違いはない。明確な違いはただ一つ、爵位があるかどうかだけ。お金も含めると範囲は広くなるけれど、平民だからと言って優秀な人がいないわけではない。貴族がみんな優秀な人ばかりである、というのももちろん嘘だ。
平民ゆえに、勉強の機会が与えられなくとも、一を聞いて十のことを理解できる人はいるし、カリスマ性に富んだ人もいる。貴族だからすべてにおいて秀でていると言うのは間違い。もしも、王国内にレジスタンスメンバーがいるとすれば、確実に今の王侯貴族を落とせるだろう。
「そうだな、殿下の耳にも入っているだろうが、入れておく」
「……はい」
馬車で時間をかけて屋敷まで帰り着いた。帰宅すると、すでに夕食の準備ができていて、私たちは思いの外、出かけていたんだなと思う。日も沈みだして、部屋の中にいてもどんどん寒くなる空気。この寒さに耐える日々を、私はつい先日まで送っていた。
「アル……」
与えられた部屋に戻って、着替えていると、アルが部屋の中を飛び回る。アルは自分の意志でここに留まっているから、鳥かごなどは用意していない。その自由な姿に、私は少しだけ感傷に浸った。
自由なんて知らなかった、ただ一日を生きるのに精いっぱいだった。明日、空腹で死ぬかもしれないと思ったことは、何度もある。そのたびに、森の動物たちが食べ物を分けてくれたのも、覚えている。
「……私に、できることを」
まだ私には知識が足りない。こちらに来たばかりなのもあるし、伯爵家でも必要な教育は与えられず、自己流だ。それらをまずは、解消しなければ。
「ユーニス様、お夕食の支度が整いました。こちらへどうぞ」
「ありがとうございます、アン」
アンに呼ばれて食堂へ向かう。彼女とはだいぶ打ち解けて、アンと呼ぶのに違和感はなくなってきた。いろいろ話もするので、優しい彼女のことをよく、私は聞いている。例えば、旦那さんがいて、その人はこのお屋敷の総執事長だとか、ね。
「ユーニス、待っていた」
「お待たせいたしました、レイフ様」
まだ着慣れない、部屋着のワンピース。上質すぎて、全然慣れないものだ。このワンピ―スはもちろん、レイフ様に贈っていただいた洋服で。シンプルなデザインなのに、非常に目を引くものだ。
他愛無い話をしながら、夕食を進める。私もこうして部屋から出て食事ができるようにはなったものの、まだ彼と同じだけの食事はできない。長年、満足に食事ができなかったから、急に食べられるようにはならない。ゆっくりと食べる量を増やしていくことが、健康になる第一歩だと、お医者様にホケホケ笑いながら言われた。
魔法は口渇感を癒すことができたけど、空腹は満たしてくれなかった。動物たちに分けてもらった木の実は、飢えた私を生かしてくれた。私は、自分の知っている苦しみがどれほど辛いものなのかを知っているから、だから他者にそんな思いをしてほしくないのかもしれない。
飢えも喉の渇きも、お金のない貧しさも、全て苦しく辛いものだ。支えがあればお金に関しては何とかなるかもしれないけれど。飢えや口渇感は違う。支援があったとしても、それらを満足に満たすのは難しいことだ。
「ユーニス、俺も側にいる。一人で、抱え込むな」
夕食後、レイフ様はまだ執務があるということで寝ないが、私をわざわざ部屋まで送ってくれた。私の考えていることを読み取ったかのような、そんな彼の言葉。どこまで私のことを一番に優先している彼に、私はそっと抱き着いた。
「ユーニス?」
「もう少しだけ、いいですか?」
「ああ、もちろんだ」
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