42 / 57
42
しおりを挟む
アランと話を終えた後、私たちはさらに帝国の中でも端に位置する場所に移動した。のどかなその場所は、レイフ様の治める領地とは真逆の気候。アランにも詳しく教えてもらったが、こちらは帝国でも南方にあるが故に、温暖らしい。
「別荘地帯、というわけですね」
「はい、貴族に人気の地帯です」
どうやら皇家の別荘もあるようだが、他の貴族たちも別荘をこちらに建てているらしく、比較的地方の中では栄えているとのこと。それなりに人の出入りがあるのであれば、栄えるのは自然なことかもしれない。何せ、来る客が太い。
そしてこの地には特定の領主はおらず、一応管轄は皇家となっているため、任命された管理者が期限付きで任期を終えるまで暫定領主として存在する。任期が来れば帝都に戻り、帝都で仕事を行い、またこの地に新たな管理者が任命されて着任、同じ人を連続で任命しないようにしているらしい。
ちゃんも理由もあって、端的に言うと不正を防ぐという意味合いが強いとのこと。後はその地に住まう地元民たちに対して、平等の税金などを課さねばならないため、領主ごとに金額が変わってはいけない。そして、その違いから地元民たちの「あの人の方がよかった」等の不平感を無くす意味合いもある。
「確かに、過ごしやすそうです」
ふわり、と頬を撫でる風は心地いい温かさ。南方にあると言っても、他国に比べると北寄り。そういうところも、暑すぎない理由らしい。また、過ごしやすい点から他国の貴族が遊びに来ることもあるんだとか。別荘地帯として栄えているからこその、一種の観光地区。
帝国内で特産品を扱う地域も、観光地区化している場所もある。それこそ一定水準の自治が、きちんとそれぞれ行き届いている証拠。治安維持も十分に行えている、というのは帝国にとってもプラス。諸外国から来る人たちにもいい印象になるから。
「ここまで上手に運営ができるとは……」
貴族の領地経営でまさに、失敗ばかりを目の当たりにしてきた私にとって、この帝国は怖いくらいに上手くできすぎている。己の欲望に忠実すぎるのも問題だが、こんなにも統制が取れすぎているのも、ある意味怖い。
「それほど、規律が厳しい、とも言えるのでしょうか」
「その面はあるかと存じます。騎士になるにしても、聖職者になるにしても、それぞれに厳しい規律がありますから。その規律は当然、貴族だろうと皇族だろうと関係はありませんし……」
「規律があってもお構いなし、な方々はいますが……」
苦笑いを溢しつつも、アランは規律の厳しさが治安維持に繋がっている、と思っているようだ。法律として存在するそれらは、罪を犯した場合、貴賤関係は一切不問のうえで裁判が行われる。高位貴族でも皇族でも、重罪犯であれば相応の刑罰が下される。
帝国歴史書の中には、実際に高位貴族・皇族で罰を受けた、と記録があったものもあった。そうして数々の失敗から学びながら、今を作り出している、と締めくくられた書籍。激動の時代をも経験した長い歴史を持つ帝国、その全てを誰かが時代を移り変わりながらも見ていた。
「別荘地帯、というわけですね」
「はい、貴族に人気の地帯です」
どうやら皇家の別荘もあるようだが、他の貴族たちも別荘をこちらに建てているらしく、比較的地方の中では栄えているとのこと。それなりに人の出入りがあるのであれば、栄えるのは自然なことかもしれない。何せ、来る客が太い。
そしてこの地には特定の領主はおらず、一応管轄は皇家となっているため、任命された管理者が期限付きで任期を終えるまで暫定領主として存在する。任期が来れば帝都に戻り、帝都で仕事を行い、またこの地に新たな管理者が任命されて着任、同じ人を連続で任命しないようにしているらしい。
ちゃんも理由もあって、端的に言うと不正を防ぐという意味合いが強いとのこと。後はその地に住まう地元民たちに対して、平等の税金などを課さねばならないため、領主ごとに金額が変わってはいけない。そして、その違いから地元民たちの「あの人の方がよかった」等の不平感を無くす意味合いもある。
「確かに、過ごしやすそうです」
ふわり、と頬を撫でる風は心地いい温かさ。南方にあると言っても、他国に比べると北寄り。そういうところも、暑すぎない理由らしい。また、過ごしやすい点から他国の貴族が遊びに来ることもあるんだとか。別荘地帯として栄えているからこその、一種の観光地区。
帝国内で特産品を扱う地域も、観光地区化している場所もある。それこそ一定水準の自治が、きちんとそれぞれ行き届いている証拠。治安維持も十分に行えている、というのは帝国にとってもプラス。諸外国から来る人たちにもいい印象になるから。
「ここまで上手に運営ができるとは……」
貴族の領地経営でまさに、失敗ばかりを目の当たりにしてきた私にとって、この帝国は怖いくらいに上手くできすぎている。己の欲望に忠実すぎるのも問題だが、こんなにも統制が取れすぎているのも、ある意味怖い。
「それほど、規律が厳しい、とも言えるのでしょうか」
「その面はあるかと存じます。騎士になるにしても、聖職者になるにしても、それぞれに厳しい規律がありますから。その規律は当然、貴族だろうと皇族だろうと関係はありませんし……」
「規律があってもお構いなし、な方々はいますが……」
苦笑いを溢しつつも、アランは規律の厳しさが治安維持に繋がっている、と思っているようだ。法律として存在するそれらは、罪を犯した場合、貴賤関係は一切不問のうえで裁判が行われる。高位貴族でも皇族でも、重罪犯であれば相応の刑罰が下される。
帝国歴史書の中には、実際に高位貴族・皇族で罰を受けた、と記録があったものもあった。そうして数々の失敗から学びながら、今を作り出している、と締めくくられた書籍。激動の時代をも経験した長い歴史を持つ帝国、その全てを誰かが時代を移り変わりながらも見ていた。
28
あなたにおすすめの小説
王太子殿下から婚約破棄されたのは冷たい私のせいですか?
ねーさん
恋愛
公爵令嬢であるアリシアは王太子殿下と婚約してから十年、王太子妃教育に勤しんで来た。
なのに王太子殿下は男爵令嬢とイチャイチャ…諫めるアリシアを悪者扱い。「アリシア様は殿下に冷たい」なんて男爵令嬢に言われ、結果、婚約は破棄。
王太子妃になるため自由な時間もなく頑張って来たのに、私は駒じゃありません!
【完結】優しいあなたに、さようなら。二人目の婚約者は、私を殺そうとしている冷血公爵様でした
ゆきのひ
恋愛
伯爵令嬢であるディアの婚約者は、整った容姿と優しい性格で評判だった。だが、いつからか彼は、婚約者であるディアを差し置き、最近知り合った男爵令嬢を優先するようになっていく。
彼と男爵令嬢の一線を越えた振る舞いに耐え切れなくなったディアは、婚約破棄を申し出る。
そして婚約破棄が成った後、新たな婚約者として紹介されたのは、魔物を残酷に狩ることで知られる冷血公爵。その名に恐れをなして何人もの令嬢が婚約を断ったと聞いたディアだが、ある理由からその婚約を承諾する。
しかし、公爵にもディアにも秘密があった。
その秘密のせいで、ディアは命の危機を感じることになったのだ……。
※本作は「小説家になろう」さん、カクヨムさんにも投稿しています
※表紙画像はAIで作成したものです
2度目の人生は好きにやらせていただきます
みおな
恋愛
公爵令嬢アリスティアは、婚約者であるエリックに学園の卒業パーティーで冤罪で婚約破棄を言い渡され、そのまま処刑された。
そして目覚めた時、アリスティアは学園入学前に戻っていた。
今度こそは幸せになりたいと、アリスティアは婚約回避を目指すことにする。
処刑台の皇妃、回帰して復讐を誓う ~冷酷公爵と偽りの婚約者~ おまえたちは許さない!
秦江湖
ファンタジー
皇妃エリアーナは、夫である皇帝アランと、たった一人の親友イザベラの策略により、無実の罪で処刑される。
民衆に罵られ、アランの冷酷な目とイザベラの嘲笑を「始まりの景色」として目に焼き付けながら絶命した彼女は、しかし、処刑の記憶を持ったまま三年前の過去に回帰する。
「おまえたちは許さない」
二度目の人生。
エリアーナの目的はただ一つ、自分を陥れた二人への完璧な復讐。
彼女はまず、アラン(皇太子)からの婚約内示を拒絶。そして、アラン最大の政敵である「北の冷血公爵」ルシアン・ヴァレリウスに接触する。
1周目で得た「未来の知識」を対価に、エリアーナはルシアンに持ちかける。
「貴方様には帝国の覇権を。わたくしには復讐の舞台を。そのための『契約婚約』を――」
憎悪を糧に生きる皇妃と、氷の瞳を持つ公爵。
二人の偽りの婚約の行く末は……
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【完結】もう結構ですわ!
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
恋愛
どこぞの物語のように、夜会で婚約破棄を告げられる。結構ですわ、お受けしますと返答し、私シャルリーヌ・リン・ル・フォールは微笑み返した。
愚かな王子を擁するヴァロワ王家は、あっという間に追い詰められていく。逆に、ル・フォール公国は独立し、豊かさを享受し始めた。シャルリーヌは、豊かな国と愛する人、両方を手に入れられるのか!
ハッピーエンド確定
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/11/29……完結
2024/09/12……小説家になろう 異世界日間連載 7位 恋愛日間連載 11位
2024/09/12……エブリスタ、恋愛ファンタジー 1位
2024/09/12……カクヨム恋愛日間 4位、週間 65位
2024/09/12……アルファポリス、女性向けHOT 42位
2024/09/11……連載開始
病めるときも健やかなるときも、お前だけは絶対許さないからなマジで
あだち
恋愛
ペルラ伯爵家の跡取り娘・フェリータの婚約者が、王女様に横取りされた。どうやら、伯爵家の天敵たるカヴァリエリ家の当主にして王女の側近・ロレンツィオが、裏で糸を引いたという。
怒り狂うフェリータは、大事な婚約者を取り返したい一心で、祝祭の日に捨て身の行動に出た。
……それが結果的に、にっくきロレンツィオ本人と結婚することに結びつくとも知らず。
***
『……いやホントに許せん。今更言えるか、実は前から好きだったなんて』
【完結】不誠実な旦那様、目が覚めたのでさよならです。
完菜
恋愛
王都の端にある森の中に、ひっそりと誰かから隠れるようにしてログハウスが建っていた。
そこには素朴な雰囲気を持つ女性リリーと、金髪で天使のように愛らしい子供、そして中年の女性の三人が暮らしている。この三人どうやら訳ありだ。
ある日リリーは、ケガをした男性を森で見つける。本当は困るのだが、見捨てることもできずに手当をするために自分の家に連れて行くことに……。
その日を境に、何も変わらない日常に少しの変化が生まれる。その森で暮らしていたリリーには、大好きな人から言われる「愛している」という言葉が全てだった。
しかし、あることがきっかけで一瞬にしてその言葉が恐ろしいものに変わってしまう。人を愛するって何なのか? 愛されるって何なのか? リリーが紆余曲折を経て辿り着く愛の形。(全50話)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる