魔導具なら買い取ります!古道具屋『がらんどう』

なかな

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ユーリ視点

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 ミツリが初めて、「シード」であることを明らかにしても良いと言った。

 ただそれは、リチャードという育ての親を疑う事に耐えられず、最悪の事態を踏まえての交換条件のようなものだった。

 ミツリらしいと言えばミツリらしいが、両親や私達が守ろうとしているミツリの人生を、あっさりと投げ出されて、ただ不快だった。

 私達の思いは、努力は、あのリチャードという男を信じたいという気持ちを天秤にかけた時、あっさりと負けてしまうものだったのかと。

 会ったこともないリチャードという人物に対して抱くこの思いは、嫉妬、なのか?

 ミツリの人生に大きく関わって、信頼を勝ち得た人物。

 ミツリと出会ってから、まだ1年も経っていないというのに、私は何を張り合っているのか?

 そしてミツリは知らないのだ。

 ミツリがシードとして国に保護されると言う事は、ミツリの肉体や魂を、番人である私のこの手で、長きに渡り閉じ込めなければいけないと言うことを。

 私に、それをやれと言うのか?

 ミツリと共に数ヶ月過ごしたせいで、すっかり情が湧いてしまった。

 私は、こんなに誰かを気をかけるような人間だっただろうか?

 自分で自分が分からなくなる。

 何故、ミツリの為にこんなにも一所懸命になり、その結果、こんなにも憤っているのか。

 今までも、魔物討伐のパートナーや、共に過ごした戦友らしい人々は居たが、仕事以外では関わる気にもならなかった。

 仕事が終われば関係は終了。
 知り合いが増えただけだ。

 私は何をしようとしている?
 国を、父である国王を裏切り、欺いて、どうしようというのか?

 分からない。

 ミツリと共にいると、私という形がもろく崩れ落ち、失われていくような気になる。

 失うことは、決して怖くはない。

 ただ、そうならば、元の自分にはもう戻りたくはないと、そう願うだけだ。
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