みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

文字の大きさ
115 / 226
王都に行きましょう

記憶が戻ってました

しおりを挟む
ソファに座りチビチビ紅茶を飲みながら、対面に座ったカミーユさんの様子をそっと伺う。
僅かな緊張感の中、コホンとアルベールが軽く咳払いをしたあと、改めて私たちをカミーユさんに紹介していく。
名前を呼ばれてペコリと軽くお辞儀をすると、ちょっとのんびりとした口調で「よろしくね」とにこやかに返された。

・・・白虎族の人たちって、みんなリオネルのようなバトルジャンキーばかりだと思ってたわ。
意外とカミーユさんは常識人・・・かも?

「最後に・・・猫獣人の・・・リ、リオです」

アルベールが珍しく言い淀みながらリオネルを紹介するけど、あの子は素知らぬ顔で焼き菓子に奮闘中です。

「猫獣人?」

じぃーっとリオネルを見つめるカミーユさん。
実は、森からここサン・ブルージュの町、そしてカミーユさんの屋敷に辿り着くまでの間、彼はじぃーっとリオネルを見つめていた。

私たちは内心、冷や汗ダラダラだったんだけど、リオネルには私お手製の変化の魔道具を装着させているし、白虎族の国を出てアンティーブ国で魔獣学者をしているカミーユさんは、リオネルのことなんて知らないかもしれないと、必死に自分に言い聞かせていた。
それでも、万が一を考えると私はパニック寸前の状態なのよっ!

そもそもカミーユさんについて知り合いかどうかリオネルに確かめたくても、彼は奴隷商人の馬車でルネと会う前の記憶はほぼ無しの記憶喪失。
過去なんて捕らわれないで自由気ままに生きているリオネルだけど、そう考えるとこの子も謎の多い子なんだよねぇ。

そして、無言で互いに、カミーユさんはリオネルを、私たちはカミーユさんを見つめること・・・暫し。

ガタン!
急にカミーユさんはソファから立ち上がると、サッとリオネルの両脇に手を差し入れグイッと高く持ち上げる。

「リオネル?君、やっぱりリオネルだよね?」

リオネルは咄嗟のことに驚いてピンと尻尾を立たせてぶわっと膨らませる。
口からは食べにくいパイと格闘していた名残なのか、ポロポロと零れて行くお菓子。
カミーユさんはそんなリオネルの硬直状態をまるっと無視して、高速の頬ずりをしながら「会いたかったー!」と過激なスキンシップ中。
私はあまりのことに呆然としたあと・・・手で顔を覆う。
ば、バレたーぁ!!








「やめろ」

食べることを諦めて持っていたお菓子を離すと、カミーユさんの頬を力いっぱい手で押しのけたリオネルは、カミーユさんの腕の力が弱まった隙にゲシッと彼の胸を蹴ってスタッと床に飛び降りた。
ルネが慌ててリオネルを守るように抱きしめる。
何気にリュシアンとアルベールは剣の柄に手を伸ばしていた。
ヘタレのセヴランと私だけがぼんやりとそんなやりとりを見つめている。

「イタタ。ひどいなぁ、リオネル。久しぶりのお兄ちゃんなのにぃ」

なに?
なんだと?

「お兄ちゃん?リオネルの?」

「そうだよ。リオネルは今は可愛い白猫ちゃんの姿だけど、僕と同じ白虎でしょう?はあああっ、でも白猫ちゃんもかわいいね!」

もともと柔らかい表情をするイケメンさんだったが、今はとても残念な表情でデレデレとしてリオネルの周りをグルグルと廻っている。
なんじゃこりゃ?

「・・・におい、しってる。でも、しらない」

リオネルはルネにギュッとされたまま、興味無さそうに呟く。
匂いは知っているのに知らないって何?どんな知り合い?

「ああ。僕とリオネルが会ったのはリオネルが生まれてすぐで、その1回きりだったからね」

「・・・兄弟なのに?」

いや、私の今生の兄弟もそんな感じだけども!顔も知らない兄弟もいましたけども!

カミーユさんは私たちとリオネルの間で何度か視線を巡らせた後、うーんと腕を組んで、ようやく興奮を収めたのかソファに座り直した。

「もしかして、君たちは白虎族の国からリオネルを連れ出したのではないのかな?」

「・・・えっとぉ・・・」

え?正直にリオネルが奴隷商人に捕まっていたこととか、話してもいいのかな?
それとリオネルに記憶が無いことも・・・て、あの子カミーユさんの匂いは知っているって?

私がリオネルに顔を向けると、リオネルはルネの隣に座っていて新しいお菓子に手を伸ばしていた。

「リオネル・・・あんた、もしかして、思い出してる?」

リオネルは、あーんと大きな口を開けたままこちらを見ると、ちょっと逡巡した後コクリと頷いた。

「ええーっ!いつ?いつよ!なんで、言わないのよーっ!」

思わず立ち上がって両手で頭を押さえて左右に振りながら叫んでもしょうがないと思うのよ。
ええ、取り乱しましたが、なにか?





リオネルに根気よく、お菓子で釣りながら聞き取りをした結果、この子は初めて獣化したときに全て思い出したんだって、前のことを。
なんで言わなかったのか、詰め寄った私に鼻をふん!と鳴らして「どうでもいいことだった」と言い切りましたよ。
もう、この子ってば!

そして私たちはカミーユさんから白虎族のことを詳しく教えてもらうのだった。
白虎族のこと、白虎族の王族のこと、リオネルの父親である現国王のを。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

わたくしがお父様に疎まれている?いいえ、目に入れても痛くない程溺愛されております。

織り子
ファンタジー
王国貴族院の卒業記念パーティーの場で、大公家の令嬢ルクレツィア・アーヴェントは王太子エドワードから突然の婚約破棄を告げられる。 父であるアーヴェント大公に疎まれている―― 噂を知った王太子は、彼女を公衆の面前で侮辱する。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。