159 / 226
運命の鐘を鳴らしましょう
レルカン商会に来ました
しおりを挟む
賑やかに人が往来するアンティーブ国の平民街いちの大通り!
両側にはお店も屋台もひしめき合って、客寄せの威勢のいい声と、奥様方のきゃらきゃら楽しそうな話し声が私の耳を擽る。
王城で密談をした翌日、私たちが訪れたのは例のレルカン商会だ。
メンバーは当然のセヴランと私とアルベール、付き添い兼仕事の依頼人クリストフさん。
あれからもいろいろと話し合ったけど、最終決断はレルカン商会が齎す情報次第となりました。
ベルナール様とヴィクトル兄様たちは一時王城預かりとなり、王宮の離れに留め置かれています。
ルネとリオネルは、商人との腹黒い交渉が苦手なリュシアンと一緒に、カヌレとブリュレを散歩に連れて行きました。
私たちが、万が一にはカヌレとブリュレを爆走させて、アンティーブ国脱出を企てていたけれど、それも無くなり穏便に王城を出ることができたのに、あの子たちは荒事がないことが不満でその日一日ずっーと落ち着きがなかった。
だから、今日はストッパーもいないことだし、たんと遊んでおいで。
こりゃまた、魔法鞄の中はレベルそこそこの魔獣でパンパンになるなぁ・・・。
カミーユさん?彼は会談の邪魔をしたので、私が陛下にお願いをしてお仕事を回してもらいました。
ビーストに関する報告書の作成です。
陛下たちに報告するために書いたものより詳細な論文クラスの報告書の作成が命じられました!
ビーストを弄って調べるのは興味が尽きずウキウキの作業だけど、書類作業が嫌いなカミーユさんはしばらく王都ギルドで研究員の方たちと缶詰状態になるでしょう。
けけけけ。
陛下はリオネルを暫し見つめ、頭を優しく撫でながら「兄のようになるなよ」と。
別の意味で凄く似ている兄弟だけどね・・・、戦闘狂兄弟め。
クリストフさんに案内されて来ましたレルカン商会は・・・ちょっと想像と違ってた。
なんだろう?もう少し富裕層に近い区画で、大きな建物で、真っ白いお店の外観に装飾が凝っていて・・・お仕着せを着た店員が品の良い笑顔で迎えてくれる・・・そんな想像。
セヴランも「え?ここですか?」とクリストフさんに確認しているもんね。
場所は平民街のど真ん中!建物は3階建てで大きいけど、木造建築そのままな素朴な佇まい。
年季の入った看板に「レルカン商会」と書かれている。
両開きの扉は開けっ放しになっていて、目に見える所には日用品ばかりが陳列されていて、高級品は見当たらない。
そして・・・普通のシャツとズボンを着た上にやや汚れたエプロンをした人の良さそうなお兄さんがニカッと笑って、「いらっしゃい!」と迎え入れてくれる。
うん、庶民的なお店だね?
セヴランが働いていた商会、つまりレルカン商会会頭のお兄さんのお店は支店は勿論、本店も立派な建物で私が想像していたお店そのものなのに。
扱っている商品もそれなりなので、庶民が気軽に店に入ることなんてできないらしいし。
でも・・・レルカン商会の本店には、子供も楽しそうに駄菓子を買っていますね?
ちょっと戸惑う私たちに気遣うことなく、クリストフさんはズンズンと店の奥に行き、ひとり初老の男性に声をかける。
「おい、会頭と約束しているから、勝手に上に行くぞ」
「ええ。聞いておりますとも。どうぞ、う・・・えに・・・。えっ?」
老眼鏡を鼻からズラしてクリストフさんの顔を確認して、階段の上へと誘ってくれたその人は、セヴランを視界に入れピタッと止まった。
じっーと見るその人と、反対にじっーと見つめ返すセヴラン。
知り合いですか?
私たちが首を傾げたと同時に、その人はガシッとセヴランの腕を掴んで顔をググーッと近づけた。
「お前!ジョスラン!ジョスランか!いや・・・そんなバカな・・・。あいつはもう・・・」
鼻がぶつかる程の距離に顔を近づけられて、セヴランはギリギリ顎を引いて逃げようとする。
「ち、違います!ジョスランは父です!私は息子です!」
「む・・・息子?いや、息子も確かトゥーロン王国に・・・」
「おいおい!その話は後でな!会頭との話が先だから!」
クリストフさんはベリッとふたりを力尽くで離して、セヴランの肩を抱いてひょいひょいと階段を昇っていく。
その人はセヴランの後ろ姿を呆然と見送った。
私はアルベールに背中を押されて階段をゆっくり昇り出すけど・・・あのおじさん、なんでセヴランがトゥーロン王国に居たことを知ってんのよ?
もしかして、レルカン商会の情報網はトゥーロン王国にまで伸びているんだろうか?
だとしたら、このレルカン商会の情報屋としての力量は予想以上かもしれないわ!
クリストフさんは、勝手知ったる他人の家とばかりに廊下を誰にも案内されないままに進み、ガチャッと扉を開けて部屋に入り、ソファに座って寛ぎだした。
私たちは遠慮しながらも、部屋に入り同じくソファに座る。
会頭の使う応接室なんだろうけど、広さはあるが調度品も少なく、実用的な部屋だった。
私は、こっちの方が落ち着くけどね。
すぐに慌てたメイドさんたちが部屋に入ってきて、お茶の支度をしてくれました。
クリストフさんみたいなお客さんって、使用人にとっては迷惑なお客さんだよねぇ・・・。
私は足をブラブラさせて、お茶請けのクッキーをポリポリ齧る。
セヴランが少し挙動不審だけど、アレは放っておこう。
そして聞こえるドタドタと廊下を走る足音。
クリストフさんが扉に顔を向けるのと、バッターンと音を立てて扉が乱暴に開かれるのが同時だった。
「ジョスランの息子が来ているってのは、本当かーっ!!」
ビリビリと響く大声もさることながら、前世の狸の置物そっくりなその人の姿に、私はビックリして持っていたクッキーをポロリと落とすのだった。
タヌキ?
両側にはお店も屋台もひしめき合って、客寄せの威勢のいい声と、奥様方のきゃらきゃら楽しそうな話し声が私の耳を擽る。
王城で密談をした翌日、私たちが訪れたのは例のレルカン商会だ。
メンバーは当然のセヴランと私とアルベール、付き添い兼仕事の依頼人クリストフさん。
あれからもいろいろと話し合ったけど、最終決断はレルカン商会が齎す情報次第となりました。
ベルナール様とヴィクトル兄様たちは一時王城預かりとなり、王宮の離れに留め置かれています。
ルネとリオネルは、商人との腹黒い交渉が苦手なリュシアンと一緒に、カヌレとブリュレを散歩に連れて行きました。
私たちが、万が一にはカヌレとブリュレを爆走させて、アンティーブ国脱出を企てていたけれど、それも無くなり穏便に王城を出ることができたのに、あの子たちは荒事がないことが不満でその日一日ずっーと落ち着きがなかった。
だから、今日はストッパーもいないことだし、たんと遊んでおいで。
こりゃまた、魔法鞄の中はレベルそこそこの魔獣でパンパンになるなぁ・・・。
カミーユさん?彼は会談の邪魔をしたので、私が陛下にお願いをしてお仕事を回してもらいました。
ビーストに関する報告書の作成です。
陛下たちに報告するために書いたものより詳細な論文クラスの報告書の作成が命じられました!
ビーストを弄って調べるのは興味が尽きずウキウキの作業だけど、書類作業が嫌いなカミーユさんはしばらく王都ギルドで研究員の方たちと缶詰状態になるでしょう。
けけけけ。
陛下はリオネルを暫し見つめ、頭を優しく撫でながら「兄のようになるなよ」と。
別の意味で凄く似ている兄弟だけどね・・・、戦闘狂兄弟め。
クリストフさんに案内されて来ましたレルカン商会は・・・ちょっと想像と違ってた。
なんだろう?もう少し富裕層に近い区画で、大きな建物で、真っ白いお店の外観に装飾が凝っていて・・・お仕着せを着た店員が品の良い笑顔で迎えてくれる・・・そんな想像。
セヴランも「え?ここですか?」とクリストフさんに確認しているもんね。
場所は平民街のど真ん中!建物は3階建てで大きいけど、木造建築そのままな素朴な佇まい。
年季の入った看板に「レルカン商会」と書かれている。
両開きの扉は開けっ放しになっていて、目に見える所には日用品ばかりが陳列されていて、高級品は見当たらない。
そして・・・普通のシャツとズボンを着た上にやや汚れたエプロンをした人の良さそうなお兄さんがニカッと笑って、「いらっしゃい!」と迎え入れてくれる。
うん、庶民的なお店だね?
セヴランが働いていた商会、つまりレルカン商会会頭のお兄さんのお店は支店は勿論、本店も立派な建物で私が想像していたお店そのものなのに。
扱っている商品もそれなりなので、庶民が気軽に店に入ることなんてできないらしいし。
でも・・・レルカン商会の本店には、子供も楽しそうに駄菓子を買っていますね?
ちょっと戸惑う私たちに気遣うことなく、クリストフさんはズンズンと店の奥に行き、ひとり初老の男性に声をかける。
「おい、会頭と約束しているから、勝手に上に行くぞ」
「ええ。聞いておりますとも。どうぞ、う・・・えに・・・。えっ?」
老眼鏡を鼻からズラしてクリストフさんの顔を確認して、階段の上へと誘ってくれたその人は、セヴランを視界に入れピタッと止まった。
じっーと見るその人と、反対にじっーと見つめ返すセヴラン。
知り合いですか?
私たちが首を傾げたと同時に、その人はガシッとセヴランの腕を掴んで顔をググーッと近づけた。
「お前!ジョスラン!ジョスランか!いや・・・そんなバカな・・・。あいつはもう・・・」
鼻がぶつかる程の距離に顔を近づけられて、セヴランはギリギリ顎を引いて逃げようとする。
「ち、違います!ジョスランは父です!私は息子です!」
「む・・・息子?いや、息子も確かトゥーロン王国に・・・」
「おいおい!その話は後でな!会頭との話が先だから!」
クリストフさんはベリッとふたりを力尽くで離して、セヴランの肩を抱いてひょいひょいと階段を昇っていく。
その人はセヴランの後ろ姿を呆然と見送った。
私はアルベールに背中を押されて階段をゆっくり昇り出すけど・・・あのおじさん、なんでセヴランがトゥーロン王国に居たことを知ってんのよ?
もしかして、レルカン商会の情報網はトゥーロン王国にまで伸びているんだろうか?
だとしたら、このレルカン商会の情報屋としての力量は予想以上かもしれないわ!
クリストフさんは、勝手知ったる他人の家とばかりに廊下を誰にも案内されないままに進み、ガチャッと扉を開けて部屋に入り、ソファに座って寛ぎだした。
私たちは遠慮しながらも、部屋に入り同じくソファに座る。
会頭の使う応接室なんだろうけど、広さはあるが調度品も少なく、実用的な部屋だった。
私は、こっちの方が落ち着くけどね。
すぐに慌てたメイドさんたちが部屋に入ってきて、お茶の支度をしてくれました。
クリストフさんみたいなお客さんって、使用人にとっては迷惑なお客さんだよねぇ・・・。
私は足をブラブラさせて、お茶請けのクッキーをポリポリ齧る。
セヴランが少し挙動不審だけど、アレは放っておこう。
そして聞こえるドタドタと廊下を走る足音。
クリストフさんが扉に顔を向けるのと、バッターンと音を立てて扉が乱暴に開かれるのが同時だった。
「ジョスランの息子が来ているってのは、本当かーっ!!」
ビリビリと響く大声もさることながら、前世の狸の置物そっくりなその人の姿に、私はビックリして持っていたクッキーをポロリと落とすのだった。
タヌキ?
284
あなたにおすすめの小説
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
私の家族はハイスペックです! 落ちこぼれ転生末姫ですが溺愛されつつ世界救っちゃいます!
りーさん
ファンタジー
ある日、突然生まれ変わっていた。理由はわからないけど、私は末っ子のお姫さまになったらしい。
でも、このお姫さま、なんか放置気味!?と思っていたら、お兄さんやお姉さん、お父さんやお母さんのスペックが高すぎるのが原因みたい。
こうなったら、こうなったでがんばる!放置されてるんなら、なにしてもいいよね!
のんびりマイペースをモットーに、私は好きに生きようと思ったんだけど、実は私は、重要な使命で転生していて、それを遂行するために神器までもらってしまいました!でも、私は私で楽しく暮らしたいと思います!
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。