みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

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運命の鐘を鳴らしましょう

レルカン商会に来ました

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賑やかに人が往来するアンティーブ国の平民街いちの大通り!
両側にはお店も屋台もひしめき合って、客寄せの威勢のいい声と、奥様方のきゃらきゃら楽しそうな話し声が私の耳を擽る。

王城で密談をした翌日、私たちが訪れたのは例のレルカン商会だ。
メンバーは当然のセヴランと私とアルベール、付き添い兼仕事の依頼人クリストフさん。

あれからもいろいろと話し合ったけど、最終決断はレルカン商会が齎す情報次第となりました。
ベルナール様とヴィクトル兄様たちは一時王城預かりとなり、王宮の離れに留め置かれています。
ルネとリオネルは、商人との腹黒い交渉が苦手なリュシアンと一緒に、カヌレとブリュレを散歩に連れて行きました。
私たちが、万が一にはカヌレとブリュレを爆走させて、アンティーブ国脱出を企てていたけれど、それも無くなり穏便に王城を出ることができたのに、あの子たちは荒事がないことが不満でその日一日ずっーと落ち着きがなかった。
だから、今日はストッパーもいないことだし、たんと遊んでおいで。
こりゃまた、魔法鞄の中はレベルそこそこの魔獣でパンパンになるなぁ・・・。

カミーユさん?彼は会談の邪魔をしたので、私が陛下にお願いをしてお仕事を回してもらいました。
ビーストに関する報告書の作成です。
陛下たちに報告するために書いたものより詳細な論文クラスの報告書の作成が命じられました!
ビーストを弄って調べるのは興味が尽きずウキウキの作業だけど、書類作業が嫌いなカミーユさんはしばらく王都ギルドで研究員の方たちと缶詰状態になるでしょう。
けけけけ。
陛下はリオネルを暫し見つめ、頭を優しく撫でながら「兄のようになるなよ」と。
別の意味で凄く似ている兄弟だけどね・・・、戦闘狂バトルジャンキー兄弟め。

クリストフさんに案内されて来ましたレルカン商会は・・・ちょっと想像と違ってた。
なんだろう?もう少し富裕層に近い区画で、大きな建物で、真っ白いお店の外観に装飾が凝っていて・・・お仕着せを着た店員が品の良い笑顔で迎えてくれる・・・そんな想像。
セヴランも「え?ここですか?」とクリストフさんに確認しているもんね。

場所は平民街のど真ん中!建物は3階建てで大きいけど、木造建築そのままな素朴な佇まい。
年季の入った看板に「レルカン商会」と書かれている。
両開きの扉は開けっ放しになっていて、目に見える所には日用品ばかりが陳列されていて、高級品は見当たらない。

そして・・・普通のシャツとズボンを着た上にやや汚れたエプロンをした人の良さそうなお兄さんがニカッと笑って、「いらっしゃい!」と迎え入れてくれる。
うん、庶民的なお店だね?

セヴランが働いていた商会、つまりレルカン商会会頭のお兄さんのお店は支店は勿論、本店も立派な建物で私が想像していたお店そのものなのに。
扱っている商品もそれなりなので、庶民が気軽に店に入ることなんてできないらしいし。

でも・・・レルカン商会の本店には、子供も楽しそうに駄菓子を買っていますね?
ちょっと戸惑う私たちに気遣うことなく、クリストフさんはズンズンと店の奥に行き、ひとり初老の男性に声をかける。

「おい、会頭と約束しているから、勝手に上に行くぞ」

「ええ。聞いておりますとも。どうぞ、う・・・えに・・・。えっ?」

老眼鏡を鼻からズラしてクリストフさんの顔を確認して、階段の上へと誘ってくれたその人は、セヴランを視界に入れピタッと止まった。
じっーと見るその人と、反対にじっーと見つめ返すセヴラン。
知り合いですか?
私たちが首を傾げたと同時に、その人はガシッとセヴランの腕を掴んで顔をググーッと近づけた。

「お前!ジョスラン!ジョスランか!いや・・・そんなバカな・・・。あいつはもう・・・」

鼻がぶつかる程の距離に顔を近づけられて、セヴランはギリギリ顎を引いて逃げようとする。

「ち、違います!ジョスランは父です!私は息子です!」

「む・・・息子?いや、息子も確かトゥーロン王国に・・・」

「おいおい!その話は後でな!会頭との話が先だから!」

クリストフさんはベリッとふたりを力尽くで離して、セヴランの肩を抱いてひょいひょいと階段を昇っていく。
その人はセヴランの後ろ姿を呆然と見送った。

私はアルベールに背中を押されて階段をゆっくり昇り出すけど・・・あのおじさん、なんでセヴランがトゥーロン王国に居たことを知ってんのよ?
もしかして、レルカン商会の情報網はトゥーロン王国にまで伸びているんだろうか?
だとしたら、このレルカン商会の情報屋としての力量は予想以上かもしれないわ!









クリストフさんは、勝手知ったる他人の家とばかりに廊下を誰にも案内されないままに進み、ガチャッと扉を開けて部屋に入り、ソファに座って寛ぎだした。
私たちは遠慮しながらも、部屋に入り同じくソファに座る。

会頭の使う応接室なんだろうけど、広さはあるが調度品も少なく、実用的な部屋だった。
私は、こっちの方が落ち着くけどね。

すぐに慌てたメイドさんたちが部屋に入ってきて、お茶の支度をしてくれました。
クリストフさんみたいなお客さんって、使用人にとっては迷惑なお客さんだよねぇ・・・。

私は足をブラブラさせて、お茶請けのクッキーをポリポリ齧る。
セヴランが少し挙動不審だけど、は放っておこう。

そして聞こえるドタドタと廊下を走る足音。
クリストフさんが扉に顔を向けるのと、バッターンと音を立てて扉が乱暴に開かれるのが同時だった。

「ジョスランの息子が来ているってのは、本当かーっ!!」

ビリビリと響く大声もさることながら、前世の狸の置物そっくりなその人の姿に、私はビックリして持っていたクッキーをポロリと落とすのだった。
タヌキ?
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