みそっかすちびっ子転生王女は死にたくない!

沢野 りお

文字の大きさ
189 / 226
幸せになりましょう

ノアイユ公爵邸を訪問しました

しおりを挟む
さて、アルベールの冷たい怒りでテントが氷河期を迎えた夜の翌日、ノアイユ公爵邸の門扉前です。

今回、公爵邸を訪れるのは、リシュリュー辺境伯家代表ベルナール様と、トゥーロン王国家代表の私、シルヴィーと、護衛としてリュシアン、生贄としてアルベールになりました。
リシュリュー辺境伯騎士団四名とセヴランとルネとリオネルは、屋敷の中には入らずにお庭で待機します。
カミーユさんは邪魔なので、騎士団のテントの中に置いてきました。
今頃は、魔獣馬と飛竜の健康診断でもしていると思いますよ?

このメンバーになったのは、まずリシュリュー辺境伯家ではモルガン様とレジス様が拒否したから。
なんでも、ノアイユ公爵家の者とは、話が徹頭徹尾噛み合わないから嫌だそうです。
そりゃね、唯美主義のお貴族様と脳筋一族の騎士精神じゃ、共通点を探すほうが難しいでしょ?
でもさぁ、国の大事な局面だっていう意識があるのに、子供みたいな理由で嫌がるってどういうつもりなのよ!

「こういう腹の探り合いは母上かレイモンが担当なのだ」

きゅーん、とレジス様が大きな体を縮めて厳つい顔を情けなくさせていたら、どうでもいいやと思いました。
二人とも、大して役にも立たなさそうだし。
ベルナール様が、相手の油断を誘うためにわざわざ獣人の姿を晒して行くと覚悟を持っていてくれるし。

こちらのメンバーは通常運転で、私の素性をバラすのは、中立派としてのノアイユ公爵がどっちに転ぶかわからないからね。
亜人奴隷解放に舵を切らないなら、王族の一員の私にどう対応するのか、見極めなきゃ!
私は決して、面談の餌として連れて行くアルベールへの人質ではない・・・はず。

王族として顔が知られているヴィクトル兄様は、まだ国内では死んだことになっているので、今回はスルーしてもらい、騎士団を数名連れてこっそりと王都へ侵入作戦に参加です。
目的地は王都の奴隷解放の中心、冒険者ギルド。
きっとヴィクトル兄様のことを心配していると思うよ、ミゲルの店のみんなやギルマスたちが。
あと、ミュールズ国のミシェル殿下に頼まれた、弟殿下の捜索ね。
リリアーヌ姉様の死の真相を確かめにトゥーロン王国へ潜入して、連絡不通になってしまったミュールズ国の第二王子様。
大人しく冒険者ギルドにいてくれればいいけど。

「お嬢。どうせノアイユ公爵は中立派なんだろう?・・・手っ取り早く潰しちまえばいいじゃん」

「・・・リュシアンのおバカ。すでにリシュリュー辺境伯たちはジラール公爵派をかなりの数潰したのよ?ザンマルタン侯爵派も丸ごと潰すだろうし、なのに中立派まで潰したら貴族がいなくなっちゃうでしょ?」

そうなったら、ヴィクトル兄様を王位に即けたところで、誰もいなくなっちゃうでしょうが。
内政も外交もめちゃくちゃになるわよ。
リュシアンは鼻白んで、腕を頭の後ろで組む。

「王なんていなくてもいいけどなー」

「同感だけど、いきなり王制を廃止しても、民にその意識がなければ意味がないわ」

支配されることに、搾取されることに慣れた民が、自分たちで奮い起して成した革命でさえ失敗するのよ?
今回はリシュリュー辺境伯主導で行われた改革で、しかも亜人奴隷解放を基軸にしているわ。
民たちにとっては、雲の上の出来事と同じ感覚だわよ。

「王制廃止を王家や貴族が主導して行うことができればいいんだけどね」

でも、この世界ではちょっと難しいと思うの。
いつか、文明がもっと発展して教育も行き届いて・・・そんな未来がきたら、もしかしたら・・・。

「・・・ノアイユ公爵にその話はしないでくださいね。この方たちは政治に興味なんてないらしいですから。古くからある公爵家でありながら政治の要職に就いたことがないそうです」

ベルナール様の情報に、私たちは口をポカーンと開けてしまう。
・・・公爵家なら大臣でも宰相でも・・・やりたい放題だったのでは?

「ノアイユ公爵が公爵位を持ち続けたのは、ひとえにエルフ族の奴隷を確保するため・・・と貴族間では有名な話とか」

やーめーてー!またアルベールから吹雪がーっ!

「そ、そろそろ行きますか」

私は、あはははと乾いた笑いを浮かべ、右手と右足を一緒に出して歩き出した。








うん、約束の時間にノアイユ公爵邸の門扉は開けられました。
綿の白いシャツと黒いズボンを穿いたエルフ族の男の人の手で。

ノアイユ公爵邸は、さすが唯美主義の人が住むお屋敷!と讃嘆したくなるほど綺麗でしたよ?
木々や咲いている花々がきっちりと計算されたお庭や噴水とか、お屋敷は真っ白な壁に窓枠やあちこちに金が施されていてキラキラしていて、左右対称の造りで。

うん・・・とっても素晴らしいですよ・・・ただ・・・なんか、暗いんです。
本来は清掃が行き届いている庭は折れた枝や落ちた葉や花びらが散乱していて、噴水の水は止まっていて溜まった水が淀んでいるし、馬車の通る道にまで雑草が生えている。
お屋敷には、重くて暗い雰囲気がドヨヨヨンと帯びている気配がして・・・とっても不穏な感じ。
私だけでなく野性の勘のリュシアンも、長い冒険者経験で鋭い勘のアルベールも、うっと顔を歪ませている。
ベルナール様だけが、そんな私たちにきょとんとしているけど・・・このお屋敷には「生気」が感じられないのですよ。

お屋敷の扉の前で躊躇していると、ガチャリと中から開けられた。
そこには二人の女性、綿の黒いワンピースを着たエルフ族の女性だ。
アルベールの眼が眇められる。
女性たちは「どうぞ」と声で促すこともなく、クルリと背中を向けると付いてこいとばかりにスタスタと歩き進んでいく。
私たちはお互いの顔を見合わせたあと、二人の女性の後を付いていくことにする。

私は、気が付いていた。
このお屋敷には、人族の使用人の姿が全く見ないことと、会うエルフ族の人たちが奴隷の契約から解放されいることを。

「・・・どうなってんのかしら?」

私は薄暗い廊下をキョロキョロと見回しながら、大人しくエルフ族の女性の背中を追っていった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

義弟の婚約者が私の婚約者の番でした

五珠 izumi
ファンタジー
「ー…姉さん…ごめん…」 金の髪に碧瞳の美しい私の義弟が、一筋の涙を流しながら言った。 自分も辛いだろうに、この優しい義弟は、こんな時にも私を気遣ってくれているのだ。 視界の先には 私の婚約者と義弟の婚約者が見つめ合っている姿があった。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

死に戻ったら、私だけ幼児化していた件について

えくれあ
恋愛
セラフィーナは6歳の時に王太子となるアルバートとの婚約が決まって以降、ずっと王家のために身を粉にして努力を続けてきたつもりだった。 しかしながら、いつしか悪女と呼ばれるようになり、18歳の時にアルバートから婚約解消を告げられてしまう。 その後、死を迎えたはずのセラフィーナは、目を覚ますと2年前に戻っていた。だが、周囲の人間はセラフィーナが死ぬ2年前の姿と相違ないのに、セラフィーナだけは同じ年齢だったはずのアルバートより10歳も幼い6歳の姿だった。 死を迎える前と同じこともあれば、年齢が異なるが故に違うこともある。 戸惑いを覚えながらも、死んでしまったためにできなかったことを今度こそ、とセラフィーナは心に誓うのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。